なぜ、電子政府で「一件当たりいくらか」を評価するべきなのか
ITpro(電子行政 )のコラム『住民向けオンラインシステムの費用対効果』で、自治体における「オンラインサービスの1件当たり費用」が明らかにされています。電子政府を評価する場合、国民に対する説明責任の視点からも、行政におけるコスト意識を育てるためにも、「1件当たり費用」は非常に重要な評価指標となります。
電子政府の評価は難しいものですが、基本はシンプルです。
1 いくら使って(費用)
2 何をして(アクション)
3 何を得たか(効果)
をチェックすれば良いのです。
もう少し、細かく言うと
費用は、
・今までに全部でいくら使ったか
・毎年、いくらずつ使ったか
アクションは、
・どういう動機で(改革・改善の意志があるか?)
・具体的に何をしたか
効果は、
・どれだけの国民が使ってくれて
・どれだけ便利に感じてくれて
・どのような価値を生み出したか
をチェックします。
例えば、自主的に考え、様々な工夫を一生懸命やっている。これはプラスに評価します。
主体的に考えず、受身の姿勢で、行動も伴わない。これは、もちろんマイナスの評価です。
利用率はあるけど、コストが高すぎる。これは、プラスとマイナスの評価です。
電子申告で、「税の徴収コストが下がった」「申告漏れが減った」なら、これはプラスの評価です。
このような評価の中で、
「費用」対「効果」を、誰にでもわかる形で示してくれるのが、『1件当たりの費用』です。
誰にでもわかる形とするためには、計算方法もシンプルとする必要があります。
一番わかりやすいのが、今までかかった全部の費用を、サービスを開始してからの全利用件数で割り算する方法です。
今までかかった全部の費用÷サービスを開始してからの全利用件数=1件当たりの費用(総平均)
もう一つ、年度ごとの費用を、年度ごとの利用件数で割り算する方法も有効です。
一年間の費用÷1年間の件数=1件当たりの費用(年度平均)
もちろん、こうした『1件当たりの費用』は、評価する上で一つの指標に過ぎません。
しかしながら、これほど「わかりやすくて」「公平で」「インパクトがある」指標は、他に無いとも言えるでしょう。
何かと複雑化しやすい電子政府だからこそ、シンプルな『1件当たりの費用』の価値は高いのです。
最後にオマケとして、国の電子申請システムにおける費用ベスト(ワースト?)3を挙げておきましょう。これを見て、国民はどう思うでしょうか。
参考資料>>各府省等におけるコンピュータシステムに関する会計検査の結果(PDF)
本資料の「図表3-1 電子申請等関係システムの導入状況及び支払金額(P35)」を見ると、15年度と16年度の支払金額の合計がわかります。
※平成16年以降の費用については、情報システムに係る政府調達事例データベースで契約形態、業者名、金額等がわかります。
●専用システムのベスト3
1 総務省電波利用電子申請・届出システム 172億9300万円
2 国税電子申告・納税システム(e-Tax) 166億1600万円
3 電子出願関連事務処理システム 13億2400万円
※多くの電子申請システムが「億円」単位で済んでいることを考えると、桁二つ違いの「百億円」単位となっている1位と2位は、やはり異様ですね。
※ちなみに、利用率が70%を越えるオーストラリアの電子申告システムの場合、システム開発に要した初期開発費が800万ドル、年間維持費が200万ドル、2002年までに約1,500万ドルの費用を計上しています。費用対効果は、なんと日本の千倍以上です。
●汎用システムのベスト3
1 国土交通省オンライン申請システム 17億700万円
2 法務省 総合的な受付・通知システム 11億7600万円
(オンライン登記申請システムを含む)
3 厚生労働省電子申請・届出システム 11億300万円
※支払金額が少ない汎用システムは、公正取引委員会(9500万円)、外務省(1億8200万円)など
ただし、これはあくまでも「15年度と16年度の合計金額」であることに注意しなければいけません。
例えば、13~14年度に多くの開発費等がかかっていれば、上記の順位も変わってくるかもしれません。
関連>>電子政府で天下りを減らすには
法務省汎用システム利用率が爆発する?
電子公証サービスでは4月以降、法務省汎用オンラインシステム経由での嘱託手続となります。
現行では、フロッピーディスク(FD)を指定公証人の面前に提出することとしていますが、4月以降これを廃止しオンライン嘱託一本化されます。現行のFD提出が月に2000件前後です。4月以降は汎用システム経由となり、年間30000件以上の利用が見込まれます。公証サービスでの「定款認証」件数は、年間11万件程度ですが、その三分の一がオンライン申請システム利用となるわけです。このような利用率となる手続物は法務省所管にいままでありません。利用率50パーセント達成は、すぐそこです。ただし、この電子公証サービスのオンライン化での環境整備を嘱託人側が設けるには多くの障害がありすぎます。つまり一般人は利用しない、しようとも思わない。では、誰が利用しこの利用件数を高めているか?・・・・・
また、報告します。
電子公証サービスのオンライン化
家森さん、こんばんは。
コメントありがとうございます。
電子公証(電子定款)のオンライン化については、私も注目していて、先日も法務省に電話で問い合わせたところです。
近日中に、電子公証に関するブログを数回に分けてアップしようと思っていますので、引き続き情報提供のほどよろしくお願い致します。
Unknown
牟田さん こんばんは。
先ほどまで横浜にいました。
継続的に私からも情報提供しますので、
よろしく。
法務省の経費
電子定款は司法書士ががんばっています。構成人数の割りに。やはり商業・法人「登記」は司法書士専門の仕事ですね。
>2法務省 総合的な受付・通知システム 11億7600万円
(オンライン登記申請システムを含む)
となっていますが、これはどこかに載っていますか?
私としては、登記情報システムとともに、これまでに法務省が投じたオンライン申請システムへのハード・ソフトの開発費用の総額を知りたいのです。とくに登記識別情報システムについても。おそらくこの5年間で5000億円以上はかかっていると見ていますが、正確な数字が知りたいです。
あと不動産オンライン「登記」申請についての申請件数と費用を特に知りたいです。