「住所」と「Address」の違い、個人データを含む「疑似住所ID」に注意しよう
先日のジェアディスの勉強会で確認できたのは、日本語の「住所」という言葉の意味や一般的な認識です。例えば「人が住んでいない所に住所が必要なのか?」といった考え方です。日本で「住所」と言うと、住民票にある「住所」を思い浮かべるので、この考え方は一般的なものと言えるでしょう。Wikipediaでも「住所」を次のように説明しています。
”住所(じゅうしょ、英:address)とは、「住んでいるところ。生活の本拠である場所。すみか。すまい。」のことである。法人、事業所、営業所等がある場所については住所とは言わず所在地(しょざいち)と言う。”
しかし、英語の「Address」をWikipediaで見ると、日本語の「住所」とは全く異なる意味が出てきます。
”住所(address)とは、建物、アパート、その他の構造物、または土地の所在地を示すために、ほぼ固定形式で提示される情報の集合体です。”
エストニアの住所データシステムで管理しているのは、もちろん後者の「Address」のデータです。住所データ自体は個人データでは無いので、オープンデータになっています。住所データは、住所を紐づける対象となる建築物や土地(住所オブジェクト)とセットになって、初めて利用価値が出てきます(行政事務等の処理で使うことができる)。
住所に紐づける対象が個人(自然人)や法人の場合は、オブジェクトではなく「サブジェクト」として扱います。「誰がどこに住んでいる」という情報は個人データになるので、その取扱いに注意が必要です。住所のサブジェクトが法人の場合は、個人データとして扱う必要が無いので「法人の所在地」として公開されるのが一般的です。
住所データを自動処理するためには、住所を一意に特定するための識別子(住所ID)が必要になります。この住所IDは、個人データではないのでオープンデータとして扱うことができます。他方、「誰がどこに住んでいる」というサブジェクトとして自然人を含む情報に対して識別子を付けると、この識別子は個人データになるので慎重に扱う必要があります。
日本郵便が5月26日に開始した、ユーザーID「ゆうID」に登録している住所を7桁の英数字に変換できるサービスは、オープンデータとしての住所IDではなく、「誰がどこに住んでいる」というサブジェクトとして自然人を含む情報に対して識別子を付与するものです。このような誤解を招きやすい「疑似住所ID」については、個人情報保護委員会が早期に個人情報としての取り扱い等を明示するべきでしょう(本来であれば、事前に影響評価等を行うべき案件だと思います)。
なお、日本で「住所ID(不動産ID)」と言われるものは、厳密には住所IDではなくて「住所オブジェクトID」と呼ぶべきものです。