日本の電子政府が良くならない本当の理由(20):公務員はリストラできない?

公務員から仕事を取り上げる」という方法は、行政改革や公務員制度改革においては、効果的な手法となる。

省庁再編のように「組織」に手を付けても、「名前が変わるだけで、中身は変わらない」といった結果になる可能性が高い。手間のかかる割には、効果が少ないのだ。

そこで、「仕事(業務)」を変えることにより、公務員の意識を変え、実際の成果を生み出すという手法が採用され、行政改革の分野で実績を上げてきた。

ところが、一部の自治体等を除くと、まだまだ行政改革や公務員制度改革への取組みが不十分である。行政の「本気度」が、国民に伝わってこないのだ

その結果、「仕事を変える(業務改革)」の過激版とも言える「公務員から仕事を取り上げる」が始まったのである。

中途半端な競争原理の導入に比べると、「仕事が無くなる」インパクトは大きい。さすがの公務員も、「危機感」や「緊張感」を持たざるを得なくなる。

●公務員はリストラできない?

公務員は、民間の「契約」による雇用関係と異なり、「身分」として保障されている。公務の公平性・公正性を担保するためにも、こうした身分保障は悪いことではない。

しかし、「身分保障」は公務員のためにあるのではなく、国民のためにある。そこを勘違いしてしまうと、公務員が「身分保障」の上に胡坐(あぐら)をかき、「身分保障」にしがみついてしまう。

「公務員は終身雇用でクビにできない」と言われるが、法律上(建前)は、国家公務員も地方公務員もクビにできるし、リストラ(人員整理、整理解雇)も可能だ。

まず、公務員をクビにする(懲戒免職)理由は3つ。

  1. 法令に違反する場合
  2. 職務上の義務違反、または職務怠慢があった場合
  3. 公務員としてふさわしくない非行があった場合

公務員をリストラする(分限免職)理由は4つある。

  1. 勤務実績不良
  2. 心身故障
  3. その職に必要な適格性を欠く場合
  4. 廃職又は過員の場合

ところが、社会保険庁の例に見るように、「犯罪行為があってもクビにならない」といった現状がある。「依願退職」させれば、退職金も支払われる。

リストラも、ほとんど不可能だ。

仕事が無くなり人が余っても、「免職」とはならない。あるとすれば、配置転換雇用調整ぐらいだ。本人が「はい」と言わない限り、退職とはならないのである。

仮に裁判となったら、行政が負ける可能性が高い。法律に書いてある通りに公務員を辞めさせようとしても、司法の場では否定される。

社会保険庁で懲戒処分を受けた職員が、新しい組織の職員として採用されないことになった。しかし、「公務員の身分」が保障された職員なので、無理に退職させることはできない。退職を拒否する職員は、最終的には、厚生労働省の職員として配置転換されることになるだろう。真面目に働いていた職員がバカを見る。なんとも、不透明でおかしな話である。

民間企業でも、正社員の解雇制限が問題となっているが、公務員の解雇制限はその比ではない。

このような、法律と実態が乖離する不透明でわかりにくい雇用形態を続けていれば、ますます国民は「公務員は割高である」と考えることになる

 

●公務員でも増える非正規雇用者

「割高な公務員」を減給することも解雇することもできない。行政が本気でやろうと思えばできるのだが、まず期待できない。

しかし、財政難もあり、人件費を増やすことは難しい。。。

うーん、困ったなあ。。となって実施されているのが

  1. 割高な公務員」を増やさない=新規採用の抑制
  2. 割安な公務員」を増やす=臨時・非常勤職員の採用

である。

団塊の世代が退職することもあり、「割高な公務員」の中でも最高潮に割高な人たちが多額の退職金と共に去っていく。その上で、新規採用を少なくすれば、全体の公務員数は減ることになる。

「割安な公務員」としての臨時・非常勤職員の採用も増えている。

最近のデータを見ると、地方公務員の場合で臨時・非常勤職員の割合は15%ぐらいとなっている。職場によっては、ほとんどの職員が臨時・非常勤というケースもあるだろう。

民間における非正規雇用者の割合(約30%)と比べると、まだまだ少ないが、今後も増えていくことは確実である。

こうした「新規採用の抑制」や「臨時・非常勤職員の採用」といった手法は、現在の「割高な公務員」には手を付けない。そのため、短期的には成果を上げやすいが、長期的には様々な問題を引き起こすことになる。

その一つが「格差問題」である。

過度に保護された「割高な公務員」は、平均年齢が高く給与水準も高いが、仕事の効率は良くない。できれば、今までの仕事のやり方を変えたくない。

他方、「割安な公務員」は、平均年齢が低く給与水準も低いのに、「割高な公務員」と同じかそれ以上の仕事をさせられる。もともと不安定な雇用形態に加えて、まだまだ少数派なので立場も弱い。

こうした「割高な公務員」と「割安な公務員」の格差は、両者の対立を生み出すことになる。国民から見ても、その不公平さはおかしいとわかる。

本気で問題を解決したいのであれば、「割高な公務員」に手を付ける必要がある