電子申請も淘汰の時代へ:パスポート電子申請から?

財務省による予算執行調査(平成18年7月)で、パスポート電子申請が調査の対象となり、「本システムの廃止を含めた見直しを早急に検討すべき」という厳しい判断が下されました。

パスポート電子申請「旅券発給関連経費(電子申請システム運営経費)」についての調査結果は、次の通りです。

●調査の視点

・旅券発給関連経費の中の機械化経費、特に電子申請システム関連経費について、利用・稼動状況の実態、運用コスト等を検証し、経費削減余地や今後の方向性を検討。

●調査結果及びその分析

・電子申請による発給件数は極めて低調(累計133件)。他方、運営経費は年間平均約8億円。1件当たりの年度予算経費は約1,600万円で通常発給(約3~4千円)と比べ5000倍以上。

・利用率が低調な理由として、
①住基カードの取得者数が未だに僅少、セットアップコストが高い等の一般的要因に加え、
②申請者にとって10年(5年)に1回しか利用機会がなくメリットが実感しにくい
等の旅券申請に固有の要因が存在。

・各都道府県は本システムの18年度新規導入は見送っているが、既に導入済みの各県では、運営経費が全額国負担となっていることもあり、利用率向上の具体的方策を見出せないまま、何れも稼動継続を予定。

●今後の改善点・検討の方向性

・本システムの利用率向上に向けて種々の普及努力が続けられているが、左記の要因から目立った効果は上げられていない。

・これに加え、本年3月20日から県の旅券事務を各市町村へ再委託・権限委譲を可能とする議員立法が施行。旅券申請に必要な戸籍謄本等の取得に身近な市町村役場へ行けば、別途、県の旅券事務所窓口へ行かずとも旅券申請が可能となった(ワンストップ化の実現)。

・現状のままでは、一部システム導入県だけの、かつ極めて僅少な利用者のために膨大な国費を投入するという、著しい資源配分の不公平が継続。

・一般行政サービスの電子申請システム化を政府は推進しているが、旅券発給の場合、我が国の厳しい財政事情に鑑みれば、本システムの継続は合理性を有するとは言い難い状況。本システムの廃止を含めた見直しを早急に検討すべき。

現在、国や自治体において多くの電子申請が稼動していますが、その利用状況は寂しいものとなっています。今後は、今回のような見直し検討を要求されるものも増えることでしょう。しかしながら、「高知県の電子申請が休止、前向きな休止はサービス改善に繋がる」でも触れたように、廃止等を検討することは悪いことではありません。

本当に使ってもらえる便利な電子政府・電子申請サービスを実現するために、「急がば回れ」で進めて行きましょう