生産年齢人口当たりG7トップ? – 日本経済の健闘と行政デジタル化の「構造的な壁」
生産年齢人口1人当たりのGDP成長率なら、日本は(一部の期間では)G7トップという話があります。
The wealth of working nations (主に2000年代以降の特定期間を対象とした分析)
https://www.sas.upenn.edu/~jesusfv/Wealth_Working_Nations.pdf
Countries like Japan, which have shown lackluster GDP growth per capita, have performed surprisingly well in terms of GDP growth per working-age adult (or per hour worked).
これは成長率(伸び)の話で、絶対水準ではないので注意が必要です。標準的な労働生産性で日本はG7で最下位。先進国平均を下回り、韓国などの後発先進国や一部の新興国にも追い抜かれつつあります。
日本生産性本部、「労働生産性の国際比較2025」を公表 | 日本生産性本部のプレスリリース
https://kyodonewsprwire.jp/release/202512191380
労働生産性の低迷はデジタル化の遅れや長時間労働の非効率が要因とされますが、デジタル化の遅れは日本の行政分野(政府・自治体)で特に顕著です。 日本は決して怠慢なわけではありませんが、仕組み(システム)の非効率がその努力を相殺していると言えます。
問題は、デジタル庁の取り組みや自治体DXで、かえって職員の負担が増えたり、業務が複雑化して非効率になっていることです。これが導入期の一時的な負担増・非効率であれば良いのですが、これまでの電子政府がそうであったように、負担増・非効率が解消されず「新しい日常」として定着するリスクが高いです。
日本の行政分野(政府・自治体)におけるデジタル化の遅れは、法制度・権限設計・責任分界の問題で、自治体情報システムの(権限設計や責任分界の変革を伴わない表面的な)標準化や、ガバメントクラウドによるモダン化等の技術的な手法で解決できるものではありません。これまで指摘してきた「相互運用性の確保」や「やるべきことの順序」の問題です。
エストニアでは、行政分野(政府・自治体)がデジタル化を先導しており、その成果が民間の労働生産性や業務の効率性向上にも波及しています。日本のような大規模国でも、エストニアのデータ駆動型のデジタル国家を目指すのであれば、公的基盤の官民共有という設計思想(規模に関係が無い)は参考になるでしょう。