番号法の逐条解説、マイナンバー制度を理解するためのステップ

番号法の逐条解説
宇賀 克也 (著)
有斐閣

行政法を専門とする東京大学の宇賀克也教授による、マイナンバー法(番号法)の逐条解説です。

制度の本格的な施行が近づくにつれて、マイナンバー法に関する本も増えてきましたが、逐条解説の書籍は少なく、岡村久道弁護士による「よくわかる共通番号法入門 ―社会保障・税番号のしくみ」を個人的には重宝していました。

2013年末にマイナンバー法の一部改正もあり、国民・住民・企業・自治体職員等による疑問・質問もだいぶ出そろってきた中で、行政書士時代に色々とお世話になった宇賀先生による逐条解説書が出たことは、マイナンバー法を体系的に理解する上で大変助かります。

マイナンバー制度には、電子政府、個人情報保護、社会保障・税の一体改革、という3つの視点があり、この3点に関連する法令をある程度理解しておくと、わかりにくいマイナンバー法も、少しはわかりやすくなると思います。

具体的には、行政手続オンライン化関係三法個人情報保護法社会保障制度改革関連法となります。加えて、行政手続法や情報公開法についての知識もあった方が良いですね。

マイナンバー法(番号法)の逐条解説については、内閣官房からも「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(マイナンバー法)」の逐条解説(PDF)が出ています。政府公式の解説であり、簡潔に説明してくれていますが、具体的な解説としては物足りない内容になっています。

例えば、「特定個人情報」の定義における、個人番号(個人番号に対応し、当該個人番号に代わって用いられる番号、記号その他の符号であって、住民票コード以外のものを含む。)が、具体的にどのような番号・記号・符号のことなのか、などは説明されていません。

宇賀先生の逐条解説では、情報連携基盤における「符号(リンクコード)」や「IDコード」、「脱法的に個人番号を変換したもので可逆的に個人番号コードを識別できるもの」を含むと、かなり詳細に説明されています。

他方、「住民票コード」や自治体が使用している「宛名番号」は、上記の番号・記号・符号に該当せず、従って「宛名番号を付して管理されている個人情報」は「特定個人情報」ではないとしています。

そのようなわけで、マイナンバー制度を理解する順番としては、

1 番号制度の概要資料(PDF)広報パンフレット(PDF)を読む
2 よくある質問(FAQ)を読む
3 対象者を想定した各種資料を読む(企業・事業者向け、自治体職員向けなど)
4 政府のマイナンバー法逐条解説(PDF)を読む 
5 対象者を想定した各種書籍を読む(入門書、企業対応、自治体職員対応、制度反対派など)
6 今回紹介しているような専門家による逐条解説書を読む

という感じが良いのではないでしょうか。

政府や自治体による広報活動が、今後は充実してくると思いますので、ここ1-2年で様々な説明資料を入手できる機会が増えそうです。

本ブログでも、一般の国民・住民に向けた説明を、特に増やしていきたいと思っています。

書籍に関して言えば、個人的には、宇賀先生による個人情報保護法と情報公開法の解説書が、おすすめです。

個人情報保護法や情報公開法における個人識別やプライバシーの考え方を知っておくと、マイナンバー法だけでなく、パーソナルデータの利活用に向けた検討会の議論なども、理解しやすくなると思います。

個人情報保護法の逐条解説 第4版– 個人情報保護法・行政機関個人情報保護法・独立行政法人等個人情報保護法
宇賀 克也 (著)
有斐閣
新・情報公開法の逐条解説 第6版– 行政機関情報公開法・独立行政法人等情報公開法
宇賀 克也 (著)
有斐閣

最近、企業のマイナンバー対応について、富士通総研の榎並さんが書籍を出されたようです。まだ私は読んでいないのですが、企業の総務・福利厚生・法務・税務等の担当者などは、読まれると良いのではないでしょうか。

マイナンバー制度と企業の実務対応
榎並 利博 (著)
日本法令