図解入門ビジネス 最新マーケティング戦略の基本がよーくわかる本、電子政府が本格的に活用される社会とは

図解入門ビジネス 最新マーケティング戦略の基本がよーくわかる本 (How‐nual Business Guide Book)
宮崎 哲也 (著)
秀和システム

電子政府には、今後ますますマーケティングが必要になってくると思います。

例えば、こうしたわかりやすい本をテキストにして、電子政府に関わる公務員やCIO補佐官等がワークショップ型の研修を行い、電子政府のマーケティング戦略を策定するのが良いかと。

IT戦略本部のように有識者が揃っても、優れた戦略を策定できるわけではないのですから。。

使える税金も人も限られてくる日本では、国民のニーズばかりを聞いて(=バラマキ)いるわけにもいかず、持続可能性を考慮した社会志向のマーケティングへ移行せざるを得ないでしょう。

企業の社会的責任(CSR)3.0で語る著者の主張(P.352)を引用すると、

『筆者は、世界は「企業側による一方的な価値物の提供」から「価値創造の民主化」へと徐々に転換していくと考えています。前者は、簡単に言えば「企業は企業、顧客は顧客」と言うように各自がバラバラな存在で、ただ必要な時に関わりを持つという考え方です。後者は、企業、顧客、投資家といったステークホルダーが全体的に協力し、調和して大きな価値を生み出す、という考え方です。』

電子政府にあてはめると、「政府、国民、企業、NPO等が実現したい社会を目指して、全体的に協力しながら社会経済的な価値を生み出していくために電子政府を活用していく」という感じでしょうか。

政府は国としての方向性を国民の理解を得ながら示していくことが求められますし、国民も政府にまかせっきりではなく、積極的に関与していくことが求められます。お互いの信頼関係が基礎となるので、日常的に政府と国民がコミュニケーションを取っていることが大切であり、必要に応じて疎結合と密結合を使い分ける必要もあるでしょう。

個人的には、インターネットは「拡声器」や「拡大鏡」のようなものと考えています。「アラブの春」も、それまで蓄積されてきた民主化の動きがあればこそと。潜在的な事象、ある角度からは見えにくい事象を顕在化し見える化するのに、インターネットは非常に有効です。

インターネットを前提とする電子政府も同様で、日本の実社会の中で行政改革や構造改革のニーズが高まれば、機能する電子政府が生まれ、本格的に活用されるようになるでしょう。これまで、多くの電子政府施策が失敗してきたとされるのは、日本の実社会の中で行政改革や構造改革の機運が熟していなかったからだと考えています。

東日本大震災で国民全体が共有した危機感や一体感は、電子政府が本格的に活用される社会へと移行するチャンスでしたが、残念ながらそうはなりませんでした。

多くの改革に成功してきた北欧諸国等の歴史を見ると、次の機会は、日本政府の財政危機を多くの国民が実感した時になる可能性が高いでしょう。公務員の駆け込み退職で盛り上がれる余裕があるうちは、機能する電子政府が生まれ育つのも難しいのです。