「病院」がトヨタを超える日 医療は日本を救う輸出産業になる!

「病院」がトヨタを超える日 医療は日本を救う輸出産業になる! (講談社プラスアルファ新書)
北原 茂実
講談社

病院経営だけでなく、医療制度自体の改革を提言する内容で、電子政府のヒントになることが盛りだくさんです。

例えば、すでに公的保険から漏れている人が多いのだから、「国民皆保険」の維持は不要とするなど厚生労働省が聞いたら怒りそうな内容も多いですが、「無理な平等」よりも「現実的な不平等(セーフティーネット付き)」は今の日本に必要なことでしょう。

興味深いのは、しがらみの多い日本とは別に、カンボジアで著者の理想とする医療制度を実現させようとしているところです。実は、これと似たような動きが、電子政府でもあります。著者がカンボジアを選んだ理由(条件)として、次の5つを挙げています。

1 安定した政権と治安の良さ
2 一定水準のインフラ整備
3 購買力
4 教育水準
5 経済発展と医療水準の乖離

5の「医療水準」を「行政サービス」と置き換えれば、電子政府で効果を上げやすい国の条件となります。

著者は、医療分野におけるICカードや番号制度の活用を提言していますが、電子政府で成功している国では、医療の情報化も急速に進んでいます。つまり、車の両輪みたいなもので、電子政府が進まない日本で医療の情報化が進まないのは、自然なことと言えます。

もう一つ、面白いことが書いてありました。

それは、カンボジアへの進出(投資ですね)を企業に持ちかけた際に、反応が良かったのが創業オーナーの企業だったこと。逆に、サラリーマン社長ほど、危機意識が希薄で具体的な成功をうまくイメージできないと。

日本の電子政府ベンダーは、果たしてどちらでしょうか。私の知る限りでは、番号制度への関わり方を見ても、サラリーマン意識が強いように思います。

これは、官僚も同じで、危機意識よりも現状維持や省益確保が先にきている(現実としてイメージしやすい)ように感じます。

今後、日本の電子政府ベンダーが新興国で電子政府の成功事例を作り、日本国内に逆輸入して日本の改革を支援できれば良いのですが、現実はまだまだ厳しいですね。