衆議院の解散とマイナンバー法案の廃案に思うこと

野田総理が衆議院を解散したことで、マイナンバー法案も廃案になりました。

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解散については、良いタイミングだったと思います。民主党政権については、私の周りでも批判が多いですが、それなりに成果もありました。電子政府に限っても、番号制度の道筋をつけたこと、政府CIOを設置したことなどは評価できるでしょう。議員定数の削減は、公務員制度改革や霞ヶ関改革に繋がる重要なものです。

他方、野田総理については、久しぶりにまともな総理が出てきたと、私の周りでも評判は上々です。解散総選挙になったことで、票を求めて民主党から離党する議員が増えれば、野田さんを中心とした骨太な民主党が生まれるかもしれません。

今の日本には、政権交代が何度か繰り返される中で、各政党や議員、そして有権者である国民が学び鍛えられる過程が必要と思います。ですから、民主党政権が生まれたことも、解散して自民党など他の政党に政権が交代することも良いことと考えています。

自民党も前よりは良くなっているかもしれませんし、良くなっていない場合は国民からの粛清を受けて、また鍛えられるはずです。

各政党、議員、国民が学び鍛えられる中で、日本の経済や財政の危機がより「見える化」して多くの人々が自分事と実感するようになれば、日本における構造改革も進むことでしょう。

●マイナンバー法案について

NHK記事にあるように、3年後としていた制度の実施は1年以上遅れる見通しになりました。予定されていたマイナンバー制度のスケジュールは次の通りです。

2011-13年:情報保護評価ガイドライン作成
2012年:マイナンバー法案・整備法案提出、成立
2012-16年:システム構築
2013年:特別法案提出、成立
2013年:第三者機関設置(番号情報保護委員会:内閣府の3条機関)
2014年:番号通知(市町村から住民へ)
2015年1月:マイナンバー利用開始(社会保障、税、防災)
2015年:番号カードの交付(取得は任意)
2016年1月:情報連携基盤(国の機関)、マイポータルの運用開始
2016年7月:情報連携基盤への地方公共団体の参加
2017年:マイナンバー法の見直し(利用範囲の拡大等)

スケジュールにはかなり無理があったので、とりあえずホッとしている関係者も多いでしょう。

もしもマイナンバーが廃案になったらで書いたように、時間の余裕ができたことで改善の余地が広がりました。できることを地道にやっていくしかありません。

法案の内容については、番号制度に賛成する人たちの中でも意見が分かれており、どのような内容に落ち着くかわかりません。個人的には、次の3つを守って欲しいです。

1 税と社会保障分野(保険や給付に関するもの)に限定した共通番号(マイナンバー)を導入する。
2 共通番号を記載した申請・届出・申告・報告等を進める。
3 共通番号で名寄せできる仕組みを作り活用していく。

逆に導入時に必要ないのは、

・情報連携基盤(情報提供ネットワークシステム)
・マイポータル
・ICカード
・民間利用を含む様々な分野での活用

上記は制度を複雑にしコスト高にするばかりなので、排除した方が良いでしょう。

まず、国や自治体間の情報のやり取りは、これまでも紙や電子データで行ってきたことであり、これまでと同じ方法で行えば良いので、情報連携基盤は不要です。将来、必要になるかもしれませんが、番号制度と同時期に構築する必要はありません。むしろ、同じ時期の構築は避けるべきです。

マイポータルは、行政機関等の間で行われる情報連携の履歴を国民自身が確認できるようにする仕組みですが、情報連携基盤が必要ないのでマイポータルも不要です。情報公開法による対応で十分です。

ICカード(個人番号カード)は、「マイナンバーがニセモノでないこと」と「本人確認(身元確認)」を同時に行えるものですが、「番号が記載された紙やプラスチックのカード」と「既存の本人確認手段(運転免許証、住基カードなど)」を使えば済むので、やはり不要です。なお、マイナンバーの有効性については、別途、電話やインターネットで問合せ確認できる仕組みが必要です。将来的には、健康保険証のICカード化や共通化は必要と思いますが、共通番号の導入とは分けるべきです。

民間利用を含む様々な分野での活用を急ぐ必要は無く、共通番号が普及して十分な効果を上げてから検討するのが得策です。

このように、情報連携基盤、マイポータル、ICカード、民間利用を含む様々な分野での活用が不要になると、マイナンバー制度は格段にシンプルになり、ガバナンスもしやすくなります。

次期政権では、よりシンプルな番号制度が設計されることを願います。