電子政府評価委員会報告書2008、さらなる情報公開と利用者参加を

親会であるIT新改革戦略評価専門調査会の2008年度報告書と共に、電子政府評価委員会の「平成20年度 電子政府評価委員会報告書(PDF)」が公開されています。

今回で3年目となる電子政府評価委員会ですが、事務局である内閣官房IT担当室や各省庁の尽力・協力もあり、なんとかPDCA(計画>実行>評価>改善)を確立しつつあります。

今後は、「利用者参加」としても有益な「電子政府ユーザビリティガイドライン」の完成など、より具体的・実践的・効果的なチェック体制が整うことになるでしょう。

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●報告書の構成と内容

報告書は、報告書本体(25ページ)と参考資料(全部で77ページ)に分かれています。

参考資料の内訳は、次の通り。

参考資料1 構成員名簿
参考資料2 委員会の活動状況
参考資料3 平成19年度における行政手続オンライン化等の状況
参考資料4 平成19年度における行政機関に係るオンライン申請等手続システムの利用状況等調査の結果
参考資料5 停止対象システムの概要及び停止理由
参考資料6 オンライン申請システムの利用等に関するアンケート調査結果

評価の概要を知りたい場合は、報告書本体の冒頭にある「報告書の要旨」を読むと良いでしょう。

「報告書の要旨」に続く本文では、本年度の評価方針や評価活動の内容を示した上で、分野や目的ごとの評価結果を解説しています。

電子政府や電子申請の現状を知りたい場合は、参考資料がオススメです。

参考資料3:全体及び手続ごとの利用率や利用件数について
参考資料4:システムごとの利用状況や費用について
参考資料5:停止となったオンラインシステムについて
参考資料6:利用者満足度や利用阻害要因について

●国民視点の情報公開が大切

各省庁の協力により、電子政府に関する情報公開については、以前に比べると量・質共に格段の進歩があります。

その一方で、オンライン利用件数・利用率の計上方法については、非常に判りにくく、何でもかんでも「オンライン利用」にして数字を稼いでいるといった指摘があります。

少なくとも定義や内訳を明示して、「使われているサービス」と「使われていないサービス」の現状がわかるようにする必要があります。

●システムの停止に、どこまで切り込めるか

最近では「出口戦略」といった言葉がよく聞かれますが、電子政府にも、この「出口戦略」が欠けています。

そのため、ほとんど利用されないシステムが、その実態を把握されないまま放置されてきました。

今回、「文部科学省オンライン申請システム」と「防衛省申請届出等システム」が停止となりましたが、これらは氷山の一角に過ぎません。

米国の金融機関や自動車会社のように「大きすぎてつぶせない」ものが、まだまだたくさんあります。

特に電子政府のインフラとされるものは、構築・運用費用さえ明らかにされておらず、かなり問題があります。

今後の評価では、個々のサービスに対する評価はもちろんのこと、電子政府全体に大きな影響を与えるインフラや制度に対して、どこまで切り込んでいけるかが、鍵となるでしょう。

そのためにも、更なる「情報公開」と「利用者参加」が求められます

関連ブログ>>オンライン申請システム停止の意義(1)、何を学び何を生み出すかが問われるオンライン申請システム停止の意義(2)、全部でいくら税金を使ったのか?

“電子政府評価委員会報告書2008、さらなる情報公開と利用者参加を” に2件のコメントがあります

  1. 電子申請ご意見箱 今年度は素早い公開
     http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/ikenbox/h20/kekka.html
     平成20年度 電子申請等手続に関するご意見の募集
     (電子申請ご意見箱)の結果について
     内閣官房情報通信技術(IT)担当室

     公開されましたが、意見のほとんどが士業者と思われるので、極めて閉鎖的で狭量なものが多いですね。(苦笑)

  2. 電子申請の利用状況
    イエモリさん、こんばんは。
    情報提供ありがとうございます。

    ご意見箱に頂いたご意見は、電子政府評価委員会でも取り上げられて、私も事務局へいくつかコメントを出しました。

    全体的に見ると、まだまだ改善の余地が大きいですが、メリットを享受する申請者も少しずつ増えているようです。

    ●電子申告

    電子申告の方が楽チンで経済的にもお得と考える税理士さんが増えているようです。

    地方税の電子申告が普及すれば、さらに利用は増えることでしょう。

    他方、国民個人の利用については、窓口電子申告(電子署名なし)は増えそうですが、自宅のパソコンからの申告は、伸び率が低迷するのではないでしょうか。

    ●不動産登記の電子申請

    前年度に比べると、大幅な利用増加となっています。

    利用が増えているのは、やはり登録免許税の控除が大きいようです。申請者によっては、この控除メリットを最大化するために、一つで済む申請を個別に行っているようですね。

    ★電子申請・電子申告による税額控除と添付書類の省略
    http://blog.goo.ne.jp/egovblog/e/ae832f53d6be09f00990a7804120d757

    不動産登記については、電子申請が増えることで、かえって行政事務の効率化が遅れ、コスト増しとなる恐れもあるので、しっかりしたチェックが必要と思います。

    ●イーガブ(厚生労働省関係)の電子申請

    利用率で見ると、重点分野(税、登記、社会・労働保険)の中で、一番成績が悪いのが、厚生労働省関係の電子申請です。

    税、登記と比べると
    1)税控除等の金銭メリットが無い
    2)申請アプリケーションの使い勝手が悪い
    3)手続によっては、紙申請の方が処理が早い
    といった点が劣るようです。

    「手続そのものが、電子化に馴染みにくい」といった意見もあるようですが、先進国の電子政府サービスでは、社会保障や雇用等の分野での成功例も多いので、あまり理由にはならないでしょう。

    イーガブ電子申請システムの使い勝手は改善される予定で、民間ソフトウェアとの連携も強化することになっています。

    残る課題は、やはり手続自体の統合・省略・簡素化や、関連行政機関における情報連携などと思いますが、具体的な行動予定は無いようですね。

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