オーストラリアの電子政府優秀賞2008から学ぶ、弱者に優しい「安全な不動産取引」とは

オーストラリア政府から、2008 e-Awards for Excellence in e-Governmentが発表されました。これは、電子政府に関する優れたサービスや取組みに贈られる賞で、一年遅れで事例研究レポートも公表されています。

関連>>e-Government Awards – Department of Finance and DeregulationExcellence in e-Government Awards: 2007 Finalist Case Studies

2008年の最優秀賞には警察の捜査照会システム(National Police Reference System :NPRS)が選ばれました。

オーストラリアでは、国民のプライバシー意識が高く、行政機関による個人情報の共有・利用が厳しく制限されていますが、犯罪の取り締まりは例外のようですね。もちろん、照会の対象とされる人は限定されています。

NPRSでは、警察の管轄による縦割りを無くし、横断的な情報の照会を可能にしています。

受賞は逃したものの、最終候補となったサービスの中に、ヴィクトリア州のオンライン土地取引システム「Electronic Conveyancing System (EC)」があります。

日本の「不動産登記の電子申請」と異なるのは、「不動産登記」の電子申請ではなく、「不動産取引」のオンラインサービスとして機能している点です。

ECでは、弁護士らと共に、金融機関を利用者として位置づけており、オンラインで決済(入金)が確認されてから、次の手続(土地の登録変更)へ進むようになっています。

そのメリット(The Benefits )も「Faster Easier Cheaper Better」と明確で、一回の取引あたり235-395ドルほど安く済ませることが出来ます。

オーストラリアでは、日本のように司法書士が買い手(例えばマイホーム購入者)と売り手(例えば不動産会社)の双方を代理することはありません。

通常は、法的知識の乏しい買い手の代理人として弁護士が参加し、売り手と交渉しながら契約内容を決め、決済も代行してくれます。

関連>>オーストラリアの不動産取引(SBI不動産ガイド通信)

日本では、不動産会社が用意した契約書に買い手が署名押印して、不動産会社が手配した司法書士に手続の代理を依頼する(用意された委任状に署名押印する)となることが多く、買い手にとって不利な契約となる危険が高いと言えます。

日本は、中途半端な不動産登記の電子申請を行うよりも、弱い立場にある国民の視点で不動産取引制度の見直しをすることが必要でしょう。