日本の電子政府が良くならない本当の理由(18):「給料もらい過ぎ」の日本人

以前、「国民だけが、電子政府サービスを良くすることができる」と書いたが、その理由を簡単に説明すると

  1. 電子政府サービスを良くするためには
  2. 業務改革が必要で
  3. 業務改革には行政改革が必要で
  4. 行政改革には公務員改革が必要で
  5. 公務員改革には政治改革が必要で
  6. 政治改革ができるのは、主権者である国民である

ということだ。

国民が政治や行政に無関心である限り、電子政府サービスを良くすることは難しい。

国民と共に、重要な役割を担うのが公務員である。

今回は、電子政府時代に対応する「公務員像」を考えてみたい。

●日本を取り巻く労働環境の変化

「ネットワーク化」と「ボーダレス化」が進む現在、労働力の流動性も高まっている。

どういうことかといえば、「仕事に見合った賃金しかもらえない」ということである。

単純労働であれば、それなりの賃金しかもらえないし、高度な技能を必要とする人材には、より高い報酬が支払われる。

国内に良い人材がみつからず、みつかっても賃金が高い。そんな時は、海外の人材を採用することになる。

IT分野では、「自国の高コスト・高賃金環境から逃れる」ために、「オフショアリング」と呼ばれる海外へのアウトソーシングが常態化している。

以前の日本では、途上国の外国人労働者を低賃金で雇い、3K(危険、きつい、汚い)と呼ばれる仕事をさせていた。

しかし、最近は事情が違う。

途上国が教育や技術に投資を行い、優秀な人材が育ち、外貨の稼ぎ手となってきたからである。

「オフショアリング」でも、インドや中国の賃金が高くなるにつれて、フィリピンやベトナムといった新たな労働力への移行が始まっている。

作者が参加する日本語ボランティアでは、アジアを中心に多くの外国人が日本語を勉強している。

「アジア人が貧しく教育レベルも低い」というのは昔の話で、「日本人より高学歴で高給取り」という外国人が増えている。

インドネシアからの外国人は、「研修」の名目で低賃金労働をさせられることが多かったが、先日出会ったインドネシア人は、日本の大学院で情報工学を学んでいた。彼が卒業する頃には、日本語も英語も堪能なITエンジニアの卵となっているだろう。

単純労働の担い手だった外国人が日本に定住すると、子供への教育にしっかり投資する。南米からの日系人も、第3世代・第4世代となり、多くの子供たちが日本の大学で学んでいる。

こうした現状を踏まえると、最近の日本で議論されている「最低賃金」も、違った見方ができる。

もはや二流国となった日本と、労働市場が異なるヨーロッパ先進国を比較して、「日本の最低賃金は安い!」と訴えても、説得力が無いのである。

では、どこと比較するかと言えば、それはアジア諸国である。

地理的には、日本はアジアの一国に過ぎない。日本の企業は、日本人に頼らなくても優秀なアジア諸国の人材を雇うことができる。

ヨーロッパと比べると低水準な日本の賃金も、アジアの中ではダントツで高水準である。

日本人の感覚では「少ない給料」も、実は「もらい過ぎ」ということだ

「もらい過ぎ」の日本人の給料は、高くなるどころか、まだまだ安くなると考えた方が良い。

冒頭で述べたように、これからは「仕事に見合った賃金しかもらえない」が当たり前となる。

仕事に見合わない高い賃金を要求すると、仕事をもらえなくなる。

途上国は、「仕事に見合わない高い賃金を要求する」ことで、痛い目を見てきた。

彼らが学んだのは、「教育や技術へ投資して、高い賃金に見合う労働力となること」であった。