法務省のオンライン利用率、50%達成したら大変なことになる?

本ブログで取り上げてきた「法務省のオンライン利用件数」ですが、いちおう「オンライン利用件数の数え方」や「オンライン利用件数の内訳」が明示されたので、一段落となりました。

今回は、政府が掲げる目標である「利用率50%」を達成した場合の、行政側の負担を考えてみたいと思います。

まずは、平成18年度のデータを見てみましょう。

★不動産登記事項証明書等の交付請求等(乙号):2億6476万1698(年間総数)

 ■ :オンライン利用件数  □:オフライン利用件数

オンライン請求:1万1428件
□窓口請求:1億5062万2052件
登記交換システム(窓口請求による広域交付):2042万2753件
□窓口閲覧:7598万8778件
オンライン閲覧:1771万6687件

年間総数がこのまま推移するとすれば、「利用率50%」を達成するためには、オンライン利用件数が、全部で1億3000万件ぐらい必要となります。

「登記交換システム」は、まだまだ利用拡大が見込めるので、目標を5000万件としておきましょう。

「オンライン閲覧」は、既に飽和状態で大幅な利用拡大は見込めませんが、地図情報提供も始まったことですから、目標を3000万件としておきましょう。

と、かなり甘めの目標設定ですが、「登記交換システム」と「オンライン閲覧」の両者を併せても8000万件で、まだ5000万件も足りません。

つまり、「オンライン請求」だけで5000万件ぐらいの利用(5000倍増し)を確保する必要があるのですね。

「オンライン請求」は、今年の4月に手数料割引を実施したこともあり、利用件数は大きく増えています。

とは言え、「1万1428件」が100倍になっても、100万件にしかなりませんので、前途多難と言えましょう。

●「オンライン請求」が増えると大変なことになる?

この「オンライン請求」、利用者にとっては便利なことこの上ありません。

簡単な利用者登録さえ行えば、電子署名やICカードも必要なく(システムの使い勝手には課題もありますが)、欲しい証明書が格安(送料無料&手数料割引)で入手できるからです。請求してから、1日か2日で届くのも嬉しい。

一度「オンライン請求」を体験してしまうと、わざわざ登記所へ行って、窓口に並んで証明書をもらうことが、すごく馬鹿馬鹿しく思えてしまうでしょう。

ところが、この「オンライン請求」、行政側でやっていることは、ものすごくアナログ&手作業です。

請求(注文)があった証明書(商品)を、印刷して、封書して、発送するのです。

現在「オンライン請求」の利用は年間数万件ですが、これが数百万件、数千万件になったら、行政側の作業負担は大変なことになるでしょう。

●行政の負担を減らすには、年間総数(分母)を減らすべき

行政サービスの質を向上させつつ、行政の負担を減らすには、分母である年間総数(2億6千万件)を減らすことが有効です。

証明書の利用目的は、
・行政庁への提出(添付書類など)
・民間への提出(取引先、金融機関など)
・保管
などが考えられます。

このうち、「行政庁への提出」については、「行政機関による利用を無料」として、「申請者である国民は、行政庁へ証明書を提出する必要なし」とします。

これだけで、年間総数は半分ぐらい減るのではないでしょうか。

次に、登記情報のインターネット無料公開サービスを始めます。

米国のオンライン企業検索サービス、日本は癒着構造の見直しを』で紹介していますが、登記情報の一部を無料公開することは、海外では当たり前となっています。

日本でも、個人情報やプライバシーに配慮しつつ、一部の登記情報については無料で公開し、誰でもネットで閲覧できるようにしましょう。

●オンライン利用率の独り歩きに注意!

このように、「とにかく利用率を増やして、50%達成すれば良い」というわけではありません。

利用率の増加を進める一方で、国民の実感や費用対効果といった他の指標を考慮しながら、総合的に判断することが必要となってくるでしょう。

“法務省のオンライン利用率、50%達成したら大変なことになる?” に3件のコメントがあります

  1. 無料ですって?
    『オンライン利用率の独り歩きに注意!』は、大賛成です。
    「いつでも、どこでも、誰でも」が、何時の間にやら「オンライン利用率50%以上」の政策にすり替わってしまいました。
    結果、強請された利用率を達成するために、官僚は法の目的を蔑ろにしてまで施策を実施しようとしています。
    法制度によっては、安全、公正、公平が保障された上でのオンライン化でなければ、目的が達成されないものがあります。

    『登記情報の一部を無料公開』は、登記時に納める税、登録免許税が財務省に入ってしまい、対応策として法務省に入る登記手数料令があり、なおかつ手数料値上げ時の大臣の「受益者負担」による行政サービスの考え方があります。
    これらの各省庁の権益にまで踏み込んで解決しないと、国民の負担を軽減する「いつでも、どこでも、誰でも」の電子政府は形だけのものになるのではないでしょうか。

  2. 分母を減らすしかない
    むたさん ご苦労さまでした。

    分母減らし策まったくもって賛成です。

    しかし、政府全体としてはあの数字が減るのは困るから、なかなかやりたがらない。

    あまり登記の証明書の数だけをあてにされても困るのですが、ほんとの利便性が提供されれば、分母が減って利用率は上がる。

  3. 利用件数を増やすには
    司空悍吏さん、sagoさん
    コメントありがとうございます。

    登記制度の維持・管理には、多くの税金を使っていますので、『登記情報の一部を無料公開』はあって当然と思います。

    法人については、例えば
    岡山県下の建設業許可業者一覧
    http://www.pref.okayama.jp/doboku/kanri/list.htm
    といった形で、行政が保有するデータベースの一部が無料公開されています。以前は、役所に出向いて閲覧しなければいけなかった情報です。

    省庁間の縄張り意識が、そうした情報公開・活用を邪魔しているのであれば、少しずつでも排除していかないといけないですね。

    『登記情報の一部を無料公開』は、「定額制の導入」と共に、利用件数の増加にも大きく貢献します。有料であろうと、無料であろうと、利用件数(閲覧回数)に違いはありませんので。。

    政府のオンライン利用推進には、「損益」といった考え方は無いので、利用件数(売り上げ)だけ増えれば、費用対効果(純利益、利益率など)は気にしていないのが現状です。

    とは言え、「数の強み」があるのも事実で、登記情報提供サービスの利用件数が、現在の数千万件から億単位に増えると、利用手数料も格段に安くすることが可能ですし、情報の一部無料公開も、有料情報利用の宣伝費・販促費として考えれば、それほど高いものでもないはずです。

    問題は、そうしたサービスの改善や工夫を、現在の運営体制(外郭団体の独占)では期待できないことです。

    これが、民間を含めた三社ぐらいで競争してもらえば、サービスは格段に良くなることでしょう。

コメントは停止中です。