エアコンのリモコンに学ぶ、「誰でも使える電子政府」とは

電子政府において「誰でも使える」とは、利用者ターゲットを定めないまま、漫然とサービスを提供することではありません。

「誰でも使える」とは、「利用してくれそうな人、利用してもらいたい人」の利用環境でサービスが使えることを意味するのです。

それは、
・一般的なインターネットの利用環境で使えます
・ネットに繋がる携帯電話で使えます

といった機器の環境だけでなく、

・オンラインショッピングを利用している
・オンラインバンキングを利用している

といったサービス利用(行動)環境も含みます。

「アクセシビリティ(繋がりやすさ)」と「ユーザビリティ(使いやすさ)」を融合させた視点と言っても良いでしょう。

●使われない電子政府サービス=誰でも使えない

現在の電子政府・電子申請サービスで、10%に満たない利用率となっているものは、おせじにも「誰でも使える」と言えません。

他方、利用を強制すること無く50%以上の利用率を稼いでいるサービスは、「誰でも使える」と言って良いでしょう。

自治体で提供される「公共施設の検索・予約サービス」なども、「誰でも使える」と言えますね。

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●家電では「誰でも使える」が当たり前

最近、クーラー(エアコン)のリモコンを買い換えました。

10年近く前のエアコンなので、メーカーから取り寄せようにも在庫が心配でした。

ところが、ビックカメラへ行って店員さんに尋ねると、

「そのメーカーなら、94年以降に製造されたエアコンでしたら、こちらの汎用リモコンで大丈夫ですよ。」

と教えてくれました。値段も1980円とお手頃です。

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こんな時に思うのが、「あー、やっぱり家電製品はすごいなあ。」「それに比べて、電子政府はひどいなあ。。」

・電子申請を利用したい人は、住基カードと公的個人認証を取得してください。
・ICカードリーダは指定されたものを用意してください
・専用アプリケーションをダウンロードしてください
・パソコンの設定は、○○にしてください

そんな状態では、「誰でも使える」どころか「誰も使ってくれない」「マニアしか使えない」ですよね。

政府が目指しているのは「オンライン利用率50%」ですが、インターネットの普及率が70%に満たない日本で、オンライン利用率50%を目指すのであれば、インターネット利用者の7、8割に使ってもらわないといけません。

政府が目標を達成したいのであれば、電子政府サービスが「誰でも使える」となるよう、早急に改善しましょう。

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“エアコンのリモコンに学ぶ、「誰でも使える電子政府」とは” に2件のコメントがあります

  1. 「誰でも使える」
    ご指摘のとおりだと思います。
    個人的には手続が複雑となっている原因の一つとして申請窓口(サイト)を(各府省1つやe-govに)絞ったことがあると考えています。
    電子署名が必要ない申請(申請人が限定されたい証明書の請求等)などであれば,複雑な設定等は不要なのに,複雑な設定等が必要な申請と同様な設定を求めているように感じます。
    各府省や政府のポータルサイトは各手続きへのリンクで足り,申請窓口を一つに絞ることにこだわらなければ,簡易なフォームや,SSLでの対話型の申請などもでてくるのではないかと感じます。

  2. まずは小さな成功から
    しゅうさん、こんばんは。
    コメントありがとうございます。

    ご指摘の内容は、まったくその通りと思います。

    電子申請システム(窓口)を統合してワンストップにすれば、使いやすくなるというわけでもありません。

    e-govにしても、統合化で費用削減は実現しましたが、まだまだ敷居が高く、使いやすいサービスとは言えないように思います。

    現在の政府の考え方では、簡易なフォームや,SSLでの対話型の申請などが出てくる可能性は少ないと思いますが、海外では実にシンプルです。

    例えば、米国の多くの州で提供している各種ラインセンス(運転免許、自動車登録、専門家の資格等)のオンライン更新手続きサービスがあります。

    1 郵送で更新案内が送られてくる
    2 ウェブサイトにアクセスして登録番号等を入力する
    3 クレジットで更新費用等の支払いを済ませる
    4 郵送で新しい登録証やナンバープレート等が送られてくる

    手続きが限定されているので、ほとんど迷うことなく、誰でも簡単に使えます。システムも、すごく軽くてシンプルで低価格です。

    政府は、利用状況や利用者からの要望等を踏まえて、機能や手続きを少しずつ追加していきます。この過程がとても大切で、行政職員と国民がオンラインサービスに慣れ親しみながら少しずつ経験・学習していけるのです。

    日本の場合は、いきなり重たくて難しいシステムを作ってしまったので、利用者(国民、行政職員)は置いてけぼり、かと言って後戻りも難しいという状況です。

    今からでも遅くないので、しゅうさんがご提案されているように、簡易なフォームやSSLでの対話型申請などをやって欲しいですね。(国よりも、自治体の方が可能性が高いかもしれません。)

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