失敗か手抜きか、「するべきこと」をする大切さと難しさ

優れた電子政府・電子申請サービスを作り維持していくためには、多くの「するべきこと」が存在します。どんなに素晴らしいアイデアも、諸外国では成功している人気サービスも、「するべきこと」をしない限りは、多くの人に喜んで使ってもらえるサービスとはなり得ません。

日本の電子政府・電子申請サービスの多くは、「するべきこと」をしないために、利用が進んでいません。

「するべきこと」をしないのであれば、それは「失敗」ではなくて、「手抜き」です。

「するべきこと」をした上での「失敗」からは多くのことが学べますが、「するべきこと」をしない「手抜き」は、同じことが繰り返されるでしょう。

「手抜き」といっても、それは法律や契約上の「手抜き」ではありません。

「多くの人に喜んで使ってもらえるよう、本当に良いサービスを作りたい」という思いから見た場合の「手抜き」なのです。

実際には、「するべきこと」を行い、しかも続けていくことは、非常に難しいことです。

作者自身も、毎日の「するべきこと」ができた、と思える日は、年に数日あるかないかですから、あまり偉そうなことは言えません。

そもそも、「するべきこと」が何かを理解していない場合が多いでしょう。

「するべきこと」は、誰かに教えてもらえるものではありません。

「多くの人に喜んで使ってもらえるよう、本当に良いサービスを作りたい」という思いから、「するべきこと」が何かを考え、自分たちで整理していく必要があります。

自分が本当に何をしたいかがわかれば、「するべきこと」は自ずと見えてくるでしょう。周囲を見渡せば、多くのヒントがあるはずです。

最後に、電子政府が成功するための必須条件(国連の電子政府レポートから抜粋し、作者なりの解釈で整理したもの)を挙げておきますので、何かのヒントにしてもらえれば幸いです。

1 社会的に優先される分野に電子政府を活用する
2 具体的な効果こそが成功の基準となる
3 予算を慎重かつ有効に使う
4 民間サービスからテクニックと文化を学ぶ
5 電子化する前に整理・統合する
6 必要な法整備を行う
7 本当に必要で使えるインフラを整備する
8 政治的なリーダーシップと長期的な支援を得る
9 市民の関心・参加を促す
10 人材育成や技術開発によりデジタルデバイドを解消する
11 企業・市民団体等と協力・連携できる関係を作る
12 適切な監視・評価の仕組みを作る
13 利用者に付加価値を提供する
14 簡単にアクセス・利用できるようにする
15 セキュリティやプライバシーへの不安を緩和・解消する

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