台湾有事と内政干渉と存立危機事態の関係についての整理
先日、「民主的・デジタル駆動の防諜強化:JEEADiS政策提言」を公表しましたが、良い機会なので、台湾有事について国際政治学・国際法および安全保障の観点から、整理しておきます。
中国と台湾の問題に対して他国が主権問題として介入することは、中国の立場からは内政干渉に該当すると主張されています。個人的には私も内政干渉の可能性があると思いますが、国際法上の位置づけは、「中国はそう主張しているが、国際法上は未解決問題」となっており、次のように整理できます。
・台湾の主権帰属は国際法的に確定した結論が存在しない
・中国の代表権を中華人民共和国に認める(国連総会決議)
・国連に台湾が加盟していないことは「台湾が中国の一部であると国際法上確定した」ことを意味しない。
一方、台湾有事に関する問題は、高市総理の発言にも出てきた「存立危機事態」の話なので、内政干渉とは別の問題になります。
この「存立危機事態」は、日米安保の関係を前提とした下記の法律で定めるもので、正式には「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」を指します(武力攻撃事態等認定法第2条)。「存立危機事態」以外にも、「武力攻撃事態」や「武力攻撃予測事態」があります。「我が国と密接な関係にある他国」というのは、もちろん米国であり台湾ではありません。
武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律
https://laws.e-gov.go.jp/law/415AC0000000079
台湾有事は中国の立場では内政問題なので「武力攻撃事態(中国による日本への直接的な武力攻撃)」になる可能性は低く、日本も基本的には干渉しません。しかし、米軍への攻撃、シーレーン遮断、在日米軍基地への波及リスクなどにより「武力攻撃予測事態」や「存立危機事態」になった場合は、法律が定める具体的な措置(米軍に対する支援等)を行う可能性があります。ニュースにもなった高市総理の発言は、上記を説明したものです。
それでは米国はどうかと言えば、近年の米国の立場は一貫しており、公式には「戦略的曖昧性(Strategic Ambiguity)」を維持しながらも、バイデン政権において「台湾防衛の意思がある」ことを複数回表明しています。トランプ政権でその傾向は少し弱まったものの、基本的な姿勢や立場は変わっていません。
米国の「軍事的関与を否定せず、強い抑止意思を繰り返し示している」という立場は、台湾に米軍基地は無いけど、台湾への軍事訓練支援や同盟国(日本・フィリピン)の基地を活用することで、台湾周辺の安全保障に積極的に関与して、中国への抑止力として機能させていることからもわかります。
これは、米国が台湾有事を自国の安全保障の問題と捉えていることを意味します。米国が他国に対して内政干渉したり、影響工作活動を行うのは台湾に限った話ではありません。根底には、米国が自国の安全保障判断を他国の主権主張よりも優先してきたという、独自の主権観・戦略文化があります。こうした米国の主権観・戦略文化を理解した上で、日本の国家安全保障を考えていくことが大切です。
民主的・デジタル駆動の防諜強化:JEEADiS政策提言
~執行権限ゼロの国家情報局(NIB)創設と台湾有事72時間自動対応で、
Five Eyes・QUAD上位パートナーへ~
【英語版】
https://www.jeeadis.jp/pressrelease/jeeadis-policy-proposal-democratic-and-digitally-driven-counterintelligence-enhancement-in-japan
【日本語版】
https://www.jeeadis.jp/pressrelease/jeeadis4496413