「NHK ONE アカウント」の不具合、公共性の高いサービスの移行はベータテストやユーザー参加型計画で

防災DX関連の番組を視聴しようと、「NHK+」から新しい「NHK ONE」への移行手続きを試みたところ、必要な認証コードが届かず手続きが進みませんでした。調べてみると、やはりニュース記事にも取り上げられていました。

「NHK ONE」早々のトラブルにSNSでは「やっぱり」 “移行期間なし”に疑問の声(ITmedia NEWS)
https://news.yahoo.co.jp/articles/51d3c18a5602a411cefe34387c4efdaa0557bcf0

NHK広報局からも、2025年10月1日付けでプレスリリースが出ています。緊急的な対応措置として、入力エラーの解消を急ぎ、基本サービスをアカウントなしで利用可能にしています。プレスリリースによると、原因は調査中とありますが、ニュースでは大量発信によるスパム判定の可能性が指摘されています。

「NHK ONE アカウント」一部、不具合に関するおわび
https://www.nhk.or.jp/nhkone/release/assets/pdf/251001_001.pdf
現在アカウントの新規登録や、旧NHKプラスからの移行手続きをする際、Gmailなどの一部のメールに、手続きで必要な認証コードが送られないといった不具合が発生しています。なお、番組の同時配信や見逃し配信などの基本的なサービスは、アカウント登録がお済みでなくてもご利用いただけます。後日、改めてアカウント登録のお手続きをいただきますよう、よろしくお願いいたします。

ITmedia NEWSの記事にもあるように、新旧システムの切り替え時には一時的に併存させる「オーバーラップ期間」を設けるのが定石です。これによりトラブルを吸収し、利用者や業務への影響を最小化できます。しかしNHKの移行では、こうした配慮が十分に行われていなかったのではないかと感じます。

この種の問題は、公共サービスのシステム移行でしばしば見られる課題です。たとえば電子政府サービスの「e-Gov電子申請」やマイナポータルなどでも、過去に移行や刷新時の不具合が利用者に大きな影響を与えた例がありました。最近は改善される傾向があるように感じますが、公共性の高いサービスほど「移行計画の甘さ」は社会全体に不利益をもたらします。

今回のNHKの事例は、システム移行において「オーバーラップ期間の確保」や「利用者目線のリスクシナリオ想定」が不可欠であることを、改めて示しています。

NHKを含む公共性の高いサービスについては、デジタル庁や総務省が中心となって、サービス移行やシステム更新の計画策定や実施に関するガイドラインを作成するのが良いのではないかと思います。特に、ベータテストの実施やユーザー参加型の移行計画などが有効と考えます。こうしたガイドラインにより、国民のデジタル体験を向上させることは、デジタル庁の重要な役割の一つです。システムが切り替わる「プロセス」自体が国民の利便性に直結することを再認識した上で、今後のデジタルサービスを考えて欲しいと思います。