外国による偽情報等に関するポータルサイトが開設、政府の偽情報の評価は信頼できるのか?
内閣官房が「外国による偽情報等に関するポータルサイト」を開設しています。この動きは、国家安全保障の観点からは重要な一歩ですが、同時に「偽情報」を誰がどのように定義するのかという問題も浮かび上がらせています。
外国による偽情報等に関するポータルサイト|内閣官房ホームページ
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/nisejouhou_portal/index.html
外国による偽情報の事例として、国際的評価・信用の毀損、他国・地域との関係への悪影響、社会の分断・不安定化の助長などを挙げています。
偽情報の評価においては地理的・地政学的な文脈が深く考慮されるので、「どの国」が行う影響工作かによって政府の対応も変わってきます。したがって、このサイトを参考にする国民も、政府によるバイアスがあることを前提に情報を受け取る必要があります。また、政治的配慮によって偽情報の評価が恣意的になれば、結果的に政府への不信を深めることになります。政府自身がそのリスクを自覚することが重要です。
実際に、政治的意図をもった情報操作の懸念は現実にも見られます。例えば、先の自民党総裁選挙において、元デジタル大臣の牧島かれん議員が、行き過ぎた情報操作(コメント投稿の呼びかけ)により応援候補者の印象を良くしようと、あるいは対抗候補者の印象を悪くしようとした事案などがあります。牧島かれん議員がデジタル大臣だったことで、政府のデジタル政策全般に対する国民の信頼低下にも繋がりました。
JICA(国際協力機構)が「アフリカ・ホームタウン」構想を国内4自治体とともに進めたところ、実質的な移民政策と国民に判断されても仕方がない説明不足であったにもかかわらず、政府が一方的に偽情報と評価したことも問題になりました。しかし、国民の「誤解」や「偽情報」とされる現象の多くは、実際には政府の説明不足と情報公開の不十分さに起因しています。
「アフリカ・ホームタウン」構想においても、例えば「人材環流について各自治体につき年間5名以内として、在留資格は研修または短期滞在で、在留期間も30日以内で延長なし」といった具体的かつ明快な説明があれば、国民からの誤解を防げたでしょう。
今後、日本社会が求められるのは「偽情報の摘発」よりも、「情報に強い社会」を育てることです。
社会全体のレジリエンス(抵抗力・耐久力・回復力)を高めるためには、義務教育段階からのメディアリテラシーやデジタルリテラシーの教育体系を確立することが急務です。具体的には、情報源の使い方、信頼性の確認、ネット上で被害者や加害者にならないための作法、メディア批判や操作の検知などを体系的に学ぶ仕組みが必要です。同時に、政府においてもデジタル社会に対応した透明性の高い情報公開制度への抜本的な見直しが求められます。
義務教育段階からのリテラシー教育の体系化と、政府の情報公開制度の透明化――この二つが揃って初めて、健全なデジタル社会の基盤が築かれるでしょう。