エストニアの電子処方箋から学ぶ、処方箋データベースの構築と運用

エストニアの電子処方箋から学ぶ、処方箋データベースの構築と運用

電子処方箋実装ガイドVer.1.1
2018年10月 一般社団法人 保健医療福祉情報システム工業会
https://bit.ly/2IZKobY

厚生労働省の「電子処方せんの運用ガイドライン」や「電子処方箋 CDA 記述仕様 第1版」の内容を踏まえた、電子処方箋に関する実装ガイドです。日本で電子処方箋が普及するためには、政府や関係者の本気で取組む強い意志が必要と思います。

これに対して、エストニアでは、2010年に「電子処方箋(e-prescription)」の運用を開始し、現在は利用率が99%で、ほぼ全ての処方箋がデジタル処理となっています。電子処方箋が普及したことで、患者や医師の時間が節約され、病院の管理上の負担が軽減されています。システム障害等で、電子処方箋を発行・利用できない場合の対応方法も整備されています。

電子処方箋の作成は、ほとんど自動化されており、医師が画面上で選択・指示することで、最も安価で副作用の少ない医薬品を処方することができます。処方内容は、自動的に「処方箋センター」に登録されて、登録された処方箋情報は、医師、薬剤師、患者本人がオンラインで閲覧することができます。

つまり、エストニアの電子処方箋の実態は、「処方箋の電子化」ではなくて、「全国規模の処方箋データベースの構築と運用」なのです。「電子化された処方箋」が流通するわけではなく、「処方箋センターにアクセスして、最新の処方箋データを参照し業務を処理する」ということです。エストニ政府は、この仕組みを「デジタル処方箋システム(digital prescription system)」とも呼んでおり、「処方箋の発行と処理のための集中型ペーパーレスシステム」と説明しています。概念図は、次の通りです。

医師が操作する電子処方箋の業務アプリケーションは、医師からの処方箋作成の指示を受けて、複数のデータベースを参照した上で、処方箋データを作成し処方箋センターに転送します。この時に参照するデータベースは、患者の住民登録データ、国民健康保険基金の被保険者データ、医師資格および病院勤務データ、医薬品データ(ジェネリック医薬品を優先)、患者の過去の処方箋データなど多岐に渡ります。アプリケーションは、これらの様々なデータを参照した上で、最も安全で効果が高く、より経済的な処方箋を作成してくれます。

実際の利用の流れは、次の通りです。

1 医師はパソコンを操作して発行する
2 データは処方箋センターに登録される
3 患者は薬局で国民IDカードを提示して本人確認する
4 薬剤師は自身の国民IDカードで処方箋センターにアクセスする(患者の個人識別コードで検索する)
5 患者は処方箋に従った薬を受取る

薬を受取った後も、患者本人は、患者ポータルで自身の処方箋データや購入履歴を閲覧することができます。誰がいつ自分の処方箋データにアクセスしたかを確認することもできます。定期的に同じ薬を処方してもらっているなど、同じ処方箋を受ける場合は、病院へ行く必要もありません。患者は、電子メールやSkypeや電話で医師に連絡し、医師は数回のクリックで処方箋を再発行することができ、患者は最寄の薬局やオンラインで薬を購入することができます。

処方箋データは、医師や患者による利用制限が可能になっています。この利用制限により、「患者本人だけが薬を購入できる」や「患者本人と、その配偶者と長男だけが購入できる」といった制限を付けることができます。もちろん、「近所に住んでいる一人暮らしのおばあちゃんに頼まれたので、薬局へ行き薬をもらってくる」ことも可能です。

なぜこのようなことができるかと言えば、医師も患者も薬剤師も(公務員も)、誰もが同じセキュリティレベルの国民IDカードで本人確認しているからです。患者本人になりすまして医師に電話で処方箋発行を依頼しても、実際に薬を受取るためには、国民IDカードによる本人確認が必要なので、他人が患者本人になりすまして薬を入手することはできません。

次の紹介動画「Estonian digital prescription system – how does it work?」も参考にしてください。

エストニアの電子処方箋は、医薬品処方のオープン性と透明性を強化し、処方箋情報や統計データを共有することで、医療品質の向上だけでなく、政策立案者の意思決定の質の向上も目指しています。今流行の「エビデンスに基づいた政策形成(Evidence-Based Policy-Making:EBPM)」ですね。異なる医師によって処方された医薬品の相互作用、治療勧告に対する患者の遵守(実際の行動)、薬剤の誤用などを評価することも可能になります。

エストニアと比べると、日本の方式は、ちょっと複雑すぎるように思います。電子処方箋と言いながら、かえって医師の負担や紙の処理が増えてしまうのではないかと心配してしまいます。

私も理事として参加する「日本・エストニアEUデジタルソサエティ推進協議会(JEEADiS ジェアディス)」では、電子処方箋を含むエストニアのeヘルスを学ぶためのツアーを計画しています。ツアー詳細は、近日中に発表しますが、ぜひ日本における電子処方箋の実現の参考にしてもらえればと思います。


平成30年10月5日 未来投資会議
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/201810/04mirai.html

公共サービスでは、子育て・住所変更・死亡・相続等の行政手続きの自動化に向けた環境整備を進めるとともに、道路・水道といったインフラについて、防災の観点も含め、AIやロボット、センサーを用いたメンテナンスを一気に実行に移してまいりますと。
総理から「行政手続きのオンライン化」ではなく「行政手続きの自動化」の発言があったのは嬉しいことです。

関連>>未来投資会議(第19回) 配布資料
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/dai19/index.html
成長戦略の方向性(案)が出ています。
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/dai19/siryou5.pdf

第4次安倍改造内閣 閣僚等名簿
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/meibo/index.html
平井 卓也(ひらい たくや)
情報通信技術(IT)政策担当
内閣府特命担当大臣(クールジャパン戦略、知的財産戦略、科学技術政策、宇宙政策)

行政手続きデジタル化 政府、推進へ議員立法
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO36369090R11C18A0PP8000/
デジタル化の理念や推進策をまとめた議員立法を今秋の臨時国会にも提出する。個人の認証や戸籍の確認にマイナンバーを活用できるようにするなど、政府がデジタル化推進の関連法を提出しやすい環境を整えると。

第1回 産業構造審議会 2050経済社会構造部会 2018年9月21日
http://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/2050_keizai/001.html
2050年までの経済社会の構造変化と政策課題、「新しい社会保障改革に関する勉強会」中間とりまとめ、「個別化」医療の必要性、明るい社会保障のための「投資型医療」など。
ICTを活用することにより、患者が自身の健康データを記録・管理し、オンラインで医師と共有できることで、早期発見・重症化予防が可能と。


電子マネー決済解禁へ 公共料金、茨城県が規制緩和提案
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181012-00000005-ibaraki-l08

自治体施設の入場料や証明書の発行手数料、納税などは従来、現金支払いが原則だったが、緩和により、SuicaやWAON、nanacoなどの電子マネーを公金の収納に活用できるようになると。川崎市の粗大ゴミ収集の手数料も、コンビニでシールを購入するのですが、現金払いしかできないので不便なんですよね。

木更津市が電子地域通貨発行、地産地消型キャッシュレスで経済活性化
https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/news/18/02773/
利用者はスマートフォンのアプリを使って現金を電子地域通貨に換金してチャージし、店頭の2次元コードを読み取ることで現金を使わずに支払いができる。クレジットカードや既存の電子マネーに比べて取り扱いが容易で即座に支払いに使える電子地域通貨に着目したと。木更津市には最近観光で遊びに行きましたが、これは地域住民向けでしょうか。

キャッシュレス時代に日本人が「現金主義」から抜け出せない真因
https://diamond.jp/articles/-/181969
日本の場合、そもそも現金が便利だから、先進国でドイツに次いで微妙な差で二番手くらいにキャッシュレス化が進んでいないと。


東京五輪ボランティア募集サイトは障害者を排除する
http://agora-web.jp/archives/2035105.html
組織委員会は「JIS X 8341-3:2016のレベルAAへの準拠を目標とする」というウェブアクセシビリティ方針を掲げているが、募集特設サイトは障害者を排除していると。速やかな改善と共に、仕様書等の公開もお願いしたいですね。

企業都合の「情報隠し」は許さない 個人情報保護法のガイドラインを改定
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/NBD/15/depth/100201229/
「全個人情報の開示」への対応義務を明示するなどの改定を行なう予定と。

「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申(案))」に関する意見公募手続の実施 平成30年10月10日~平成30年10月26日
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/30/10/1410039.htm
本格的な人口減少社会の到来など経済社会の大きな変化の中で、高等教育機関が求められる役割を真に果たすことができるよう、概ね2040年頃の社会を見据えた、これからの時代の高等教育の将来構想について。
自主的・自律的に考え、また、多様な他者と協働しながら、新たなモノやサービスを生み出し、社会に新たな価値を創造し、より豊かな社会を形成することのできる人を育てていくことが必要。
社会人などの多様な受講スタイルを持つ学生や本業と兼務している実務家教員等の、時間と場所の制約を受けにくい教育研究環境へのニーズに対応するとともに、学生が主体的に学修するアクティブ・ラーニングへの展開を図るなど教育プログラムの質の向上を目指し、情報通信技術(ICT)を利活用した教育を推進することが必要と。

第2回 指定難病患者データ及び小児慢性特定疾病児童等データの提供に関する有識者会議 平成30年10月10日
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000189777_00004.html
指定難病患者データベース及び小児慢性特定疾病児童等データベース、データベースにおける過去の研究利用の事例、指定難病患者データベース及び小児慢性特定疾病児童等データベースにおけるNDB、介護DBとの連結解析への対応について(案)など。
指定難病及び小児慢性特定疾患については、患者数が少ないため、個々の確実な連結が必要不可欠であり、氏名・生年月日等の情報による結合ではなく、確実に結合できる識別子により連結解析を行うことが必要である。

「正しい情報」だけでは変わらない患者の行動を変えるには
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/series/iryou4/201809/557890.html
今後の医療にとっては、「医療の質」よりも「行動変容」が大切。行動変容を起こすには、本人の納得感が非常に大切と。


VR/AR Virtual Reality/Augmented Reality
https://tech.nikkeibp.co.jp/it/atcl/keyword/14/260942/092600021/
自治体における利活用の事例を紹介。地域の3Dモデルデータが公共の資産として作製され、広く流通し、地域の多種多様な官民のプレーヤーによって様々な用途で有効活用されていくような将来像を共有し、そのために必要な施策を全庁で連携しながら講じていくことが必要と。

今後のLアラートの在り方検討会(第4回)平成30年10月4日
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/02ryutsu06_04000143.html
愛媛県におけるLアラートの活用状況、今治市における災害時の避難勧告等発令など。

ビッグデータ等の利活用推進に関する産官学協議のための連携会議(第4回)
平成30年10月4日
http://www.soumu.go.jp/menu_sosiki/kenkyu/02toukatsu01_04000285.html
民間企業のエリアマーケティング活動におけるビッグデータ活用、GISマーケティング活用事例、メッシュ流動人口検証WGの設置と検証方法など。

石田総務大臣閣議後記者会見の概要 平成30年10月5日
http://www.soumu.go.jp/menu_news/kaiken/01koho01_02000738.html
インターネット投票の導入に向けたスケジュールについて、来年度の概算要求に実証的な検証をするための予算を盛り込んでいるところと。


1件10円のマイナンバー照会手数料 政府内で検証へ
https://www.asahi.com/articles/ASL9W5JYLL9WULFA01T.html

マイナンバーを使って個人情報を照会するたびに総務省所管の団体に手数料を支払うしくみについて、原則1件10円という手数料の妥当性を検証する動きが政府内で出ていると。今頃になって検証って、遅いでしょ。

関連>>会計検査院法第34条の規定による処置要求
日本年金機構による地方公共団体情報システム機構に対する本人確認情報の照会に係る情報提供手数料の支払について
http://www.jbaudit.go.jp/pr/kensa/result/30/h301010_02.html
28、29両年度における月次照会に係る情報提供手数料支払額計28億4610万余円(情報提供件数計9億4870万余件)、年次照会に係る情報提供手数料支払額計6億7337万余円(情報提供件数計7914万余件)、合計35億1947万余円を対象として。


Tallinn digital summit focuses on AI
https://news.err.ee/867669/tallinn-digital-summit-focuses-on-ai
10月15日と16日にエストニアでタリンデジタルサミット2018が開催。世界の主要研究グループとシンクタンクがエストニアに来て、人工知能(AI)と国境を越えたデータ交換に関する新しいアイディアを発表します。エストニアはAIに関する法的問題の国際的な議論を主導することを目指すと。
関連>>Tallinn Digital Summit 2018
https://www.valitsus.ee/en/digitalsummit2018
https://www.digitalsummit.ee/

Taking GOV.UK Verify to the next stage
https://gds.blog.gov.uk/2018/10/11/taking-gov-uk-verify-to-the-next-stage/
今後18ヶ月以内にGOV.UK Verifyをサポートする5つの民間部門のアイデンティティプロバイダーとの新規契約を締結したと。エストニアのような個人識別番号や国民IDカードを持たない英国では、電子政府サービスの利用において、銀行や郵便局、デジタルIDサービス会社など民間企業との連携でオンライン上の本人確認を行なっています(英国内の住所が必要)。
関連>>GOV.UK Verify
https://www.gov.uk/government/publications/introducing-govuk-verify/introducing-govuk-verify#government-services-you-can-use-with-govuk-verify
What is identity assurance?
https://gds.blog.gov.uk/2014/01/23/what-is-identity-assurance/


第1回 産業サイバーセキュリティ研究会 ワーキンググループ1 分野横断サブワーキンググループ 2018年10月5日
http://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/sangyo_cyber/wg_seido/wg_bunyaodan/001.html
サイバー・フィジカル・セキュリティ対策フレームワーク』の見直し方針など。
産業分野別の課題や対策等を相互に持ち寄り、分野を横断して共通するセキュリティ課題の洗い出しやその対策について検討する。検討結果は、産業分野別の検討にフィードバックするとともに、「サイバー・フィジカル・セキュリティ対策フレームワーク」へ反映すると。

世界最大の海賊版ストリーミングサイトは「捜査と圧力」で閉鎖に追い込まれた
https://p2ptk.org/copyright/1325
ハリウッドが米国当局の力を借りて、ベトナムの犯罪捜査警察局とも協力し、123moviesを閉鎖に追い込んだが、その隙間を狙って多数のクローンやコピーが登場していると。これだけお金と時間をかけても、撲滅するのは難しいようです。

幻滅期のブロックチェーン、LINEとメルカリが力を注ぐ理由
https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00462/100500001/
ブロックチェーン上で生成したデジタルトークン「メルコイン(mercoin)」を取引の媒介として、出品やエスクロー(第三者預託)など基本的なCtoC取引の機能を備えると。

仮想通貨事業者の銀行口座開設を円滑化
https://www.jetro.go.jp/biznews/2018/10/9500b1783f08316f.html
スイス銀行組合が、これまで事実上認められていなかった仮想通貨関係事業者への銀行口座開設を円滑に進めるためのガイドラインを公表したと。


KON747「沖縄県知事選/朝鮮半島情勢/日韓関係~この数週間で極東アジアの地政学は大きく変化し、日本は孤立無援に」
http://www.lt-empower.com/ohmae_blog/viewpoint/2408.php
もう文在寅大統領は完全に向こう側(北朝鮮側)の人物であり、説得しても無駄だと私は思います。もはや「日米韓」という発想は文在寅大統領の頭にはないでしょう。逆に、いかにして米国を騙して「祖国統一」を実現するかを考えているはずですと。

真如苑、ジリ貧宗教界でも信者が増える「事業モデル」の秘密
https://diamond.jp/articles/-/181609
時代の変化を見すえた事業モデルとリスク対策がすごすぎる!