国内の銀行連合による新仮想通貨「Jコイン」が意味するもの

新仮想通貨「Jコイン」 みずほ・ゆうちょ・地銀が連合
個人同士や企業との決済、便利に
日本経済新聞 朝刊
https://www.nikkei.com/article/DGXKZO21231550X10C17A9MM8000/
新仮想通貨「Jコイン」検討 国内の銀行連合で テレビ朝日
http://news.tv-asahi.co.jp/news_economy/articles/000110234.html
ビットコインなどのように価格が変動せず、あらかじめ、銀行口座にある円をJコインに替えることで、スマートフォンを使ってお店で支払いをしたり、個人の間で代金の受け渡しをすることが可能になると。
記事にある「Jコイン」は、とりあえず法律上の仮想通貨の条件を満たしているように思います。

情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律
第二条第四項の次に次の五項を加える。
5 この法律において「仮想通貨」とは、次に掲げるものをいう。
一  物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

二  不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

6  この法律において「通貨建資産」とは、本邦通貨若しくは外国通貨をもって表示され、又は本邦通貨若しくは外国通貨をもって債務の履行、払戻しその他これらに準ずるもの(以下この項において「債務の履行等」という。)が行われることとされている資産をいう。この場合において、通貨建資産をもって債務の履行等が行われることとされている資産は、通貨建資産とみなす。

関連>>ビットコインの法律「仮想通貨法(改正資金決済法)」を解説 |「仮想通貨」に関する新しい制度が開始 改正資金決済法等の施行(金融庁)
仮想通貨に関する通貨発行については、以前のブログで、次のように書きました。
課題山積みのブロックチェーン、専門家が語る未来予想図
http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/column/17/080300326/080400003/
「個人がエンパワーメントする時代がきた。ブロックチェーンによって、中央主権型で運用していた通貨発行権がいわば個人にほうりだされた」と。これはよくある勘違いで、仮想通貨を現実通貨と交換可能にしている限り、通貨発行権は依然として既存の組織に留まります。他方、現実通貨を大量保有している金融機関や大企業は、独自の通貨発行権を持てるでしょう。いずれにせよ、現実通貨の信頼性に依拠することになります。
今回の「Jコイン」は、まさに銀行連合による通貨発行と考えて良いでしょう。
テレビ朝日と日経の記事によると、「Jコイン」の特徴としては
・常に円の価値と同じ(円と等価交換できる)
・銀行口座にある円をJコインに替える
・個人間の送金は手数料ゼロ
・双方向性が強みで電子マネーより便利
すでに流通している電子マネーと異なるのは、「Jコイン」から現金に戻すことができることですね。
「Jコイン」の意味するところは、「日銀(日本銀行券)のライバルができた」と理解していますが(政府通貨と暗号通貨の競争)、基本的には歓迎するべきことと思います。
なぜなら、銀行連合という巨大な資本を持つ組織により発行され、法的に強制通用力が付与された円との等価交換を保証されて、かつ円より使いやすいとなれば、国民の選択肢が広がることになるからです。普通に考えれば(変な規制や交換手数料等が無ければ)、「Jコイン」の流通量は増えていくことでしょう。