日本版「法人ポータル」の現状と進むべき方向性

 
 
「マイナポータル」を追い越す「法人ポータル」
経産省は、他省庁の法人情報省内活用システムとの連携を拡大していくことで、検証サイト「経済産業省版法人ポータル(ベータ版)」を2017年1月に正式版の法人ポータルとして稼働させる計画と。
 
諸外国から10-15年ほど遅れて、日本でもようやく法人ポータルがスタートします。なお、海外では「法人ポータル」ではなく「ビジネスポータル」として機能しているのが一般的です。
 
エストニアの法人ポータル「e-Business Register」では、法人の代表者等の情報が個人番号と共に公開されており、マネーロンダリング防止等の観点から、企業間の関係性が見える化(ビジュアル化)されています。年次報告の9割以上はオンラインで提出され、電子申告の利用についても法人は義務化されているので、100%がオンライン申告で処理されています。不動産情報ともリンクしており、企業が保有する不動産が簡単に確認できます。もちろん、企業の財務情報も確認できます。
 
関連>>e-Business Register 
Registrite ja Infosusteemide Keskus
Offshore Leaks Database
パナマ文書を含む、企業等による海外租税回避に関する情報のデータベース。
 
 
Estonian Visualized Business Register
 
紹介動画を見れば、日本の「法人ポータル」との圧倒的な差に驚くと思いますが、残念なのは日本のマイナンバー制度(法人番号や関連システムを含む)では、このような法人ポータルの実現はほぼ不可能ということです。
 
エストニアでは、
1 デジタル処理を前提とした公的なレジスター(登録簿、登記簿等)が重複することなく整備されている
2 各レジスターのデータを安全な環境で相互に参照して処理する仕組み「Xロード」がある
3 法人番号と個人番号が共通識別子として各レジスターのデータに紐付けされている
 
これに対して日本では、
1 日本人の信頼の起点となる戸籍情報さえ電子化が完了しておらず、同じようなデータが様々な組織で重複管理されている
2  Xロードのようにリアルタイムで最新データを参照して処理するデータ連携の仕組みを持っていない
3 ようやくマイナンバーが始まった段階で、紐付けされるデータも限られており、使い勝手も良くない
 
この差を5-10年の期間で埋めることは、ほぼ不可能なので、番号制度導入の後発組として日本独自の道を模索することになるでしょう。
 
日本版法人ポータルにおける、今後の進むべき方向性(かつ実現可能性の高いもの)としては、
 
1 「企業活動の透明性・信頼性の向上」を主目的の一つとすること
2 基本3情報に限らず、より多くの情報をオープンデータ化していくこと
3 役員等の情報をマイナンバーと紐づけること
 
あたりではないでしょうか。
 
 
未来型国家エストニアの挑戦 電子政府がひらく世界 (NextPublishing)
クリエーター情報なし
インプレスR&D
 
 

ヤバイIT先進国・エストニアの実像…高校生が3カ国語習熟しプログラム言語を学習
文=山本一郎2016.05.27
http://biz-journal.jp/i/2016/05/post_15252_entry.html
山本一郎隊長が、『未来型国家 エストニアの挑戦 電子政府がひらく世界』を取り上げ、しかも賞賛してくださったおかげで、 「情報社会」カテゴリのベストセラー1位になりました。ありがとうございます!

エストニアのデジタル社会の実現を支えたのは、エストニアの歴史から生まれた国民性だったりするのですが、エストニア人と日本人の国民性は実は似ているところも多いのです。なので、日本のデジタル化の実現についても、最終的には日本人の良心に訴えることになるのではないかと、なんともナイーブで感傷的な気持ちになる今日この頃です。

 

 
証明書コンビニ交付、1枚の発行経費3万円超も
証明書コンビニ交付は、日本の電子政府が抱える問題の象徴と言えるでしょう。そもそも、窓口処理においても各種証明書1通あたりの発行経費は1000-3000円と言われています。まあ、人件費が高いので当然ですよね。
 
証明書コンビニ交付の問題点は、大きく分けて2つあります。
 
1 証明書発行自体を減らす発想に欠けている
2 採算性を考慮せずに過剰な要求でシステム構築・維持している
 
言うまでもありませんが、本来の電子政府が目指すのは、「紙の証明書発行を不要とすること」です。現在は「証明書コンビニ交付」の実現が目的化しており、コスト感覚が麻痺しています。
まともな電子政府専門家であれば、「証明書コンビニ交付にお金をかけるのであれば、もっと他にすることがあるでしょう」とアドバイスするはずです。
 

 
“マイナンバーリテラシー”は全職員に ライフイベント時のサービスに活用を
三鷹市の清原慶子市長へのインタビュー記事。市民課の窓口など市職員の“マイナンバーリテラシー”を高めるだけでなく、税務署や商工会、隣接自治体、ハローワーク、年金事務所等と連携して対応を進めたと。さすがに地に足の着いた取組みですね。
 
第2回データヘルス時代の質の高い医療の実現に向けた有識者検討会
平成28年5月23日
社会保険診療報酬支払基金ほか関係者からのヒアリングを実施。韓国健康保険審査評価院の機能・業務内容について、廉宗淳さんが紹介されています。
 
EC updates eGovernment Action Plan
欧州委員会がEUの電子政府行動計画の改定版を公表。7原則の下で、20のアクションプランを実行していきます。7原則とは、
1 デジタルがデフォルト
2 一度だけ(何度も同じ事をさせない)
3 包括性とアクセシビリティ
4 開放性と透明性
5 クロスボーダーがデフォルト
6 相互運用性がデフォルト
7 信頼性とセキュリティ
EUが目指す「デジタル公共サービス」のキーワードは、ボーダレス、パーソナライズ、ユーザーフレンドリー、エンドツーエンド、オープン、効率的、包括的など。日本も、こうした原則や基本方針を宣言して欲しいと思います。
 
エストニアの電子政府はシステム基盤からアプリケーションまで挑戦的だった
『未来型国家エストニアの挑戦』の出版記念セミナーに参加された、ITジャーナリストの星暁雄氏が、エストニアの電子政府を解説してくれました。エストニアの電子政府システムでは重複開発を避けることを目的として、データベースの複製を許さず、多数のシステムを共通のシステム間連携基盤で結んだ分散型システムになっていると。日本の場合は、重複したシステムを無理やり連携しようとするんですよね。
関連>>Statistics about the X-Road
Protocol for Data Exchange Between Databases and Information Systems
Requirements for Information Systems and Adapter Servers
 
What government might look like in 2030 
政府はデータ駆動型となり、より小さく、より速く、より柔軟になると。
 
アイドル刺傷 3年前にもアイドル脅迫…警察名前の登録「失念」
同署の担当者が相談内容を登録するシステムに岩埼容疑者の名前を入力することを失念し、冨田さんが刺されるまで、同容疑者が過去に同様の問題を起こしたことを把握できていなかった。登録内容は全ての警察署が見ることができ、約3年前の問題で名前が入力されていれば、冨田さんが武蔵野署に相談した際に対応が変わっていた可能性があると。さらにマイナンバーが紐付けされていれば、名前が変わっても対応できますね。
 
痴漢で捕まってもクビにならない!? 公務員の「身分」はこんなに守られている
役人だけが幸せな国〔身分保障編〕
「28歳、主事、男性。都内JR駅構内の階段で、女性の下半身を衣服の上から触る痴漢行為を行った。停職1ヵ月」など。民間企業で係長以上の社員は6人に1人。一方、公務員では過半数が課長補佐以上の「役職者」と。情報セキュリティの観点からも、過度な身分保障は弊害が多いのですよね。
関連>>政府の無責任な個人情報管理を加速させる、「現場は悪くない」という発想
 
流通業におけるビッグデータ活用の方向性をとりまとめました~消費者接点を起点としたデータ利活用に向けたアクションプランの策定~ 平成28年5月2日
消費データのフォーマットは、流通企業ごとにばらばらであり、統一されておらず「データを集約・活用しづらい」という課題がある。そのため、関連する業界団体と連携しながら、消費データの標準的なフォーマット(=デジタルレシートデータ)を公表しますと。
関連>>消費者向けサービスにおける通知と同意・選択のあり方検討WG報告書
 
解禁された電子処方箋、運用の実際とは
「ゆけむり医療ネット」の実証事業に見る
最も重要な点は、調剤履歴情報の一元化。ジェネリックの普及推進などにより一般名で処方することが多くなり、医師にとって実際の調剤実施情報を把握したいという声があった。また、新患の診察に際して調剤履歴が即座に分かることの価値は大きい。一方、薬剤師も(紙のお薬手帳を忘れる患者が多い中で)患者の調剤履歴がシステム上で分かることに加え、アレルギー情報や手術歴などの付帯情報を得られることにメリットがあると。
日本の電子処方箋への取組みを見ていると、いかにエストニアのX-Roadと国民IDカードを用いた電子処方箋サービスの優位性が高いかがわかります。
 
電子処方箋、解禁になったワケ
医療情報ネットワーク基盤検討会の座長を務める大山永昭教授へのインタビュー記事。医療にかかわる文書の電子化や保存、PKIの医療分野への適用、インターネットを利用した安全な医療情報交換など、さまざまな技術要素や制度運用を検討してきた延長上に処方箋の電子化があると。10年以上前から議論を続けてきた電子処方箋ですが、未だ出口は見えません。。エストニアの場合、電子処方箋を開始して1年も経たないうちに普及率が80%を超えました。
 
職員が住基システムで個人情報を業務外閲覧 – 大阪市
請求人を含む住民2人のアクセスログを確認したところ、同職員が2人の住民情報を閲覧していたと。「公務員の個人情報覗き見天国」を変えない限り、同じことが繰り返されるでしょう。
 
2台に1台がシェアリングになる?
クルマによる年間走行距離が1万2000km以下のユーザーがカーシェアもしくはライドシェアに移行した場合、デロイトの試算では主要8地域の乗用車保有台数が最大で53%減少し、およそ2台に1台がシェアリング車両となる可能性があると。シェアリングエコノミーは、電子政府の分野でも確実に進むでしょう。
 
警察関係者の集うイベントでサイバー犯罪捜査ツールを見てきた
通信傍受は、各国の法律に則って行われるが、日本は他国と比べて捜査可能な対象が非常に限られており、機能はかなり絞り込まれてカスタマイズされていると。
 
遺伝子組み換え作物は「安全」 米科学アカデミーが報告書 
過去20年間の約900件におよぶ研究成果をもとに包括的に評価した結果、がんや肥満、胃腸や腎臓の疾患、自閉症、アレルギーなどの増加を引き起こす証拠はないと。誤解や偏見が多いテーマだけに、エビデンスの積み重ねが大切ですね。
 
EUデータ保護規則、「中小企業はEU法適用があるとは夢にも思っていない」と警鐘
2018年5月25日から適用されるEUデータ保護規則は、EUに拠点がない日本の中小企業であっても、商品やサービスを提供していたり、EU居住者の個人情報を扱っていたりする場合は対象になると。
 
自動化専門家が断言「移民よりまずはロボット」
このままテクノロジーが発達すれば、およそ四半世紀後の2040年には、第1次から第3次まで多くの産業の人手不足を、ロボットで補える可能性が高いと。エストニアの電子政府は、多くの業務で自動処理化が進んでいますが、その延長線上にはAIやロボットがあると考えれば、日本との協働テーマも見えてくるでしょう。
関連>>AIは人間の愚かさを修正する最良の道具 
 
ゲノムと臨床の統合データベース、国がんが整備
ゲノム解析結果を格納したデータベースや、それを臨床情報とひもづけたデータベースを構築し、全国の医療機関や研究機関と共有することで、ゲノム医療の実践に向けたネットワークづくりを進めると。構築するデータベースは、
(1)「一般研究用」データベース
(2)「共同研究用」データベース
(3)「知識ベース医療リファレンス」
 
G7香川・高松情報通信大臣会合の開催結果 平成28年4月30日
あらゆる人やモノがグローバルにつながる「デジタル連結世界」の実現に向けた基本理念や行動指針をとりまとめた「憲章」、「共同宣言」及び「協調行動集」(共同宣言の附属書)という3つの成果文書を採択し、自由や民主主義等の基本的価値を共有するG7として、世界に対する統一のメッセージを発出しましたと。
正当な公共政策目的がある場合を除き、情報の自由な流通を阻害するようなデータローカライゼーション(ICTサービスの提供に用いられるサーバー設備等の国内設置)の要求への反対につき一致。
 
AIネットワーク化検討会議について
中間報告書「AIネットワーク化が拓く智連社会(WINS)
ー第四次産業革命を超えた社会に向けてー」を中心に
平成28年4月26日 総務省情報通信政策研究所
検討課題として、
AIネットワークシステムに関するプライバシー影響評価の在り方の検討
AIネットワークシステムに関するプライバシー・バイデザインの在り方の検討
AIネットワークシステムの利活用の場面に即したプライバシー保護の在り方の検討
AIネットワークシステムを用いたプロファイリングにおけるパーソナルデータの利活用に関するルール及びパーソナルデータを利活用することにより得られたプロファイリングの結果の取扱いに関するルールの 在り方の検討
パーソナルデータの保護及び競争的な利活用の促進の観点からのデータポータビリティに関する動向の注視及び検討(データポータビリティの適用範囲、方法、域外適用等の検討)
パーソナルデータの保護と利活用との両立を図るための技術的仕組み(匿名加工情報等)の在り方の検討
 
Google、「忘れられる権利」を巡るフランス当局の決定に上告
フランスの法律を世界に適用すれば、より民主的ではない他の国が、情報を規制する自国の法律を同様に国際的に適用するよう要求しだすだろうとの懸念を示したと。確かに、CNILはちょっと暴走気味ですよね。
 
ソフトウェア制御計量器のための一般要件
監査証跡 Audit trail
例えば装置のパラメータ値への変更、ソフトウェアの更新などの、法定計量に関連し、計量特性に影響しうる事象の情報記録を時刻刻印付きで漏れなく記録したデータファイル。
身元認証 Authentication
利用者、プロセス又は装置が宣言又は申し立てた身元の正当性を確認すること(例えば、ダウンロードされたソフトウェアが、型式承認書の所有者に由来することの確認など)