マイナンバー法の施行令案に見る、情報提供ネットワークシステムに「よらない」特定個人情報の提供

行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律施行令(仮称)案に対する意見募集が、本日2014年2月24日で締切となります。私も、滑り込みで提出しておきました。

なお、マイナンバー法の本体(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律)は、法令データ提供システムで閲覧できるようになっています。

関連>>インターネット上の意見募集フォーム(締切日必着)
https://form.cao.go.jp/bangouseido/opinion-0001.html

提出した意見はシンプルなもので、次の通りです。

第一条(個人番号カードの記載事項)

個人番号カードの記載事項には、自動車運転免許証の番号と同じように、カードを識別・特定できるシリアル番号を記載して、自由に利用できるようにするべきである。同時に、当該シリアル番号を利用して、個人番号カードの有効性をインターネット上で容易に確認できるサービスを提供するべきである。この措置により、個人番号カードを本人確認手段として広く汎用的に利用できると考える。

第三条(請求による従前の個人番号に代わる個人番号の指定)
第3項
個人番号指定請求の理由を疎明するに足りる資料について、ガイドライン等で具体的な事例を解説するべきである。

その他
施行令案については、データの再利用等を考慮して、PDFファイル以外の方法による提供方法を考えて欲しいです。また、施行令案の内容の理解を助けるために、関係条文(少なくとも番号法の条項について)を併記するなどの工夫が必要と考えます。

以上

ちなみに、在留カードについては、法務省入国管理局が提供する「在留カード等番号失効情報照会」というサービスがあります。

今回の意見募集は、2週間という短期間でドタバタでした。せっかくなので、個人的に思ったことを、簡単な解説を交えて整理しておきたいと思います。


●情報提供ネットワークシステムに「よらない」特定個人情報の提供

詳しいことは主務省令が出てこないとわからない部分も多いのですが、今回の施行令によって、『情報提供ネットワークシステムに「よらない」特定個人情報の提供』のケースが明らかになってきました。

日本のマイナンバー制度は、マイナンバーよりも4情報(氏名、住所、生年月日、性別)に依拠した不思議な制度で、加えてエストニアともオーストリアとも異なる摩訶不思議な情報連携の仕組み(情報提供ネットワークシステム)を採用しています。

そのため、行政や民間の実務において、業務遂行の制約となるマイナンバーを含む特定個人情報や情報提供ネットワークシステムを避ける動きが出てくるのは、極めて自然なことです。(別に悪いことではありません)

実際、情報提供ネットワークシステムがどの程度使えるものになるのか、現状では判断できませんが、関連調達での苦戦状況を考えると、かなり難しいのではないかと思います。

このような視点で、今後出てくる主務省令を読み解くと、より面白いかもしれませんね。

関連ブログ>>社会保障・税番号要綱、プライバシー専門家の影で政府は笑う
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ID管理モデルとしてのセクトラル方式、日本向けにアレンジできるか
http://blog.goo.ne.jp/egovblog/e/6a561a26c9f3d6fa63a364343b39ec43

今回の施行令では、見かけない用語もいくつか出てきたので、紹介しておきます。

●個人基礎番号と個人番号用検査数字

どちらも、個人番号を構成する番号のことです。個人番号用検査数字は、いわゆる「チェックディジット」のことで、個人基礎番号は個人番号における個人番号用検査数字以外の部分になります。従って、

個人番号(12桁)=個人基礎番号(11桁)+個人番号用検査数字(1桁)

という構成なります。

●個人識別事項

個人識別事項は、住民基本台帳法第七条第一号に掲げる事項及び同条第二号、第三号又は第七号に掲げる事項のことで、いわゆる「4情報(氏名、住所、生年月日、性別)」と言われる基本的な個人情報を意味します。

具体的には、次の4つです。
・氏名
・出生の年月日
・男女の別
・住所及び一の市町村の区域内において新たに住所を変更した者については、その住所を定めた年月日

個人識別事項のうち、「出生の年月日」は過去の事実なので原則として変更されませんが、それ以外の事項は変更されることがあります。一般的には、住所、氏名、性別の順で変更頻度が高いと言えます。

なお、個人番号カードの記載事項は、次の通りです。
・氏名
・住所
・生年月日
・性別
・個人番号
・本人の写真
・その他政令で定める事項(有効期間の満了日、通称名などを予定)

個人番号カードの有効期間は10年間(20歳未満は5年間)ぐらいになりそうです。

●機関別本人識別符号

機関別本人識別符号とは、

・情報提供ネットワークシステムを使用して
・情報照会者等が特定個人情報の授受を行う場合に
・個人番号(マイナンバー)に代わって
・特定個人情報の本人を識別するために用いることができる
・番号、記号その他の符号

を意味します。

情報提供ネットワークシステムでは、マイナンバーが使えないので、マイナンバーとは別の本人識別番号が必要になります。この別番号が「機関別本人識別符号」ということになります。

機関別本人識別符号は、コンピュータ上で処理されて一般の人が目にすることはありません。そのため、マイナンバーが「見える番号」であるのに対して、機関別本人識別符号のことを「見えない番号」と言ったります。

マイナンバー制度を契機として、市町村では個人を識別・特定するための事項が増えていきます。

これまでは、住民○○さんを識別・特定するために、
・宛名番号(市町村独自の住民管理番号)
・4情報
・住民票コード
・各業務の個人識別番号(利用番号)

などがありましたが、マイナンバー制度により、マイナンバー(個人番号)と機関別本人識別符号が追加されます。

こうした様々な項目のうち、実務上では、最も利用しやすい宛名番号と4情報が重宝されることになります。

この部分だけを見ても、マイナンバーは国民共通番号などではなく、色々ある番号等の一つに過ぎないことがわかりますね。

関連ブログ>>マイナンバーは「共通番号」ではなく「納税者番号」である