税と社会保障の抜本改革、シンプルでわかりやすいものにしよう

税と社会保障の抜本改革
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日本経済新聞出版社

まず、税と社会保障改革の一体・抜本改革について、本書一冊でここまで整理されたことに敬意を表します。

本書では、日本の税制と社会保障制度を俯瞰した上で、消費税、個人所得税、年金制度、健康保険、子供手当て、給付つき税額控除などについて解説・提言しています。

財政や社会保障の専門家だけでなく、国民や政治家であっても、消費税を少し上げただけで問題が解決しないことはわかっていると思いますが、それさせも決定できないことが問題とも言えます。

基本的には、一部の官僚しかわからないようなブラックボックス化された税や社会保障の制度を、できる限りシンプルでわかりやすいものにすることが必要です。

そのためのインフラとして、番号制度や歳入庁などを整備し、法令で認められた必要な範囲で名寄せや追跡ができて、効率的かつ効果的に徴収や給付を実行できる体制を整えると。

現在の税・社会保障制度改革や番号制度は、これまでの電子政府で失敗してきた「シンプルでわかりやすいものにする」努力が足りないように思います。

本ブログでも取り上げたことがある、米国内国歳入庁(IRS)の改革などを見ても、ICTを活用した組織改革や業務改革を行っても、業務の根拠となる制度が複雑化していく中で限界が見えてきます。そうなると、次に必要なのは「新たな社会システムのデザイン・構築」です。こうした新しい社会システムは、シンプルでわかりやすいものでなければ、国民の支持を得られません。

日本の電子政府では、ICTを活用した組織改革や業務改革であまり成果を出せないまま、税・社会保障制度など「新たな社会システムのデザイン・構築」を迫られている状況にあると思います。

投資家のバフェット氏は、「自分が理解できないものには投資しない」ことで有名ですが、国民の多くも「理解できないもの」に対して税金を使うことや増税することを許してくれないでしょう。

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