マイナンバー法案が提出、「漠然とした不安」は具体化しよう

バレンタインデーの2月14日に、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律案(PDF)(マイナンバー法案)が国会に提出されました。その概要や全文は、内閣官房の国会提出法案で閲覧することができます。また、これに関連する法律として、総務省からは「地方公共団体情報システム機構法案」も提出されました。

これに関連して、東洋大学の山田肇先生が「未だに個人情報保護しか語れない愚昧な朝日新聞」を投稿されています。

個人的には、番号制度に賛成か反対かは別にして、様々なメディアに取り上げてもらい、まずは多くの人たちに知ってもらうことが大切だと考えています。

番号制度に対しては、住基ネットの時とは事情が異なることもあって、これまでのマスコミの反応は割合と好意的なものが多かったように思います。

年金記録問題などの被害により、番号制度に対するマスコミや国民の理解が進んだ(誤解がとけた)面もあるでしょう。

とは言え、マイナンバー法案が国会に提出され審議が進む中で、法案への注目度が高まると、一部のマスコミによる「法案つぶし」が起きるかもしれません。

それは、現政権をたたくためかもしれませんし、不正受給や脱税が難しくなると困る人たちからの圧力もあるでしょう。マイナンバー法が成立しても、施行されることなく廃止される可能性もあります。

こうした問題に対しては、首相や担当大臣がマスコミやインターネットを通じて、地道に時間をかけて国民へ説明していくしか無いと思います。番号制度への理解は、国民と政府との信頼関係による所が大きいからです。

それでも多数の国民が反対するのであれば、今の日本に番号制度は導入できないということでしょう。

しかし、「一部の声が大きな人たちによって番号制度が導入できなくなり、多数の人たちの利益が損なわれる」といったことだけは避けなければいけません。

「社会保障番号」は必要か(池田信夫 blog)に寄せられたコメントを見ると、5年前から全く議論が進んでいないみたいで面白いです。

●番号制度を国民が知らないのは政府だけが悪いのか?

内閣府が実施した社会保障・税の番号制度に関する世論調査によると、番号制度の認知度は41.8%となっています。詳しい内容は知らないまでも、とりあえず聞いたことがあるという人は、思ったよりも多い印象です。

今回、法案が閣議決定されたことはテレビや新聞にも取り上げられたので、認知度はさらに高くなったことでしょう。

政府では、国民に対する番号制度の広報活動として
・ホームページ等での様々な情報提供
・全国シンポジウムの開催
・マスコミへの発表

などを行ってきました。検討の過程で、国民から広く意見募集することも複数回ありました。関係者からのヒアリングも行われており、限られた予算で行うこととしては、それほど悪いものではないと思います。

しかし、消費税や震災復興、あるいは政治家のスキャンダルといったテーマに比べると、番号制度はかなり地味なので、マスコミにはあまり取り上げてもらえません。取り上げられるとしても、「社会保障と税の一体改革」といったより大きなテーマの中の一部としてです。

マスコミ関係者から「番号制度で、何か面白い動きはありませんか?」と尋ねられて、検討状況などを説明しても、その内容が記事になることは、まずありません。官僚による良からぬ動きなどとのセットじゃないと、取り上げてもらえないのですね。

もちろん、番号制度について調べ、一定の知識を備えた上で取材を行い、読者に対して制度の検討状況等を誠実に伝えようとしてくれる人もいますが、それは少数派だと思います。

●「漠然とした不安」は具体化しよう

番号制度を実現するにあたって、特にやっかいなのは「漠然とした不安」です。例えば、

・回復できない重大なプライバシー侵害(人権侵害)が起きる
・資産や診療歴などの個人情報が丸裸にされてしまう
・政府による監視社会が実現する

といったものです。個別具体的な問題点の指摘は、より良い番号制度を実現するための貴重な意見であり、解決策を考えて対応すれば良いのですが、「漠然とした不安」は消すことができません。

この場合は、「漠然とした不安」を「より具体的な不安」にしていくと良いでしょう。
・誰が、いつ、どうやってするのか
・誰が、どんな被害を受けるのか
・その被害は、なぜ回復できないのか

といった質問を行って具体化していけば、解決策も考えやすくなります。

こうした質問は、番号制度に対するマスコミ報道の質を見極めるだけでなく、番号制度に対して「漠然とした不安」を煽るだけの人たちにも有効なので、ぜひ使ってみてください