社会保障・税番号大綱案を読み解く(4)、「番号」で許される名寄せとは

社会保障・税番号大綱案を読み解く(3)、ユースケースの検討は多角的にの続きです。

今回は、番号制度に必要とされる3つの仕組み、「付番」「情報連携」「本人確認」について考えてみましょう。

●「番号」で情報の名寄せ・突合を効率的・正確に行う

「付番」とは、最新の基本4情報と関連づけて、新たに「番号」を付ける仕組みであるとしています。そして、番号制度における「番号」の特性として、次の5つを挙げています。

(1) 国民一人ひとりに一つの番号が付与されていること
(2) 全員が唯一無二の番号を持っていること
(3)「民―民―官」の関係で利用可能なこと
(4) 目で見て確認できる番号であること
(5) 最新の基本4情報が関連付けられていること

「最新の基本4情報が関連付けられている」となると、「氏名・住所・生年月日・性別」を住民票(住基ネット)等で確認してから、「番号」を付けるのでしょう。その場合、「住所不定の人」や「住基ネットから離脱している人(住民票コードが無い人)」は番号がもらえなそうな気もします。

しかし、負担・給付の対象者全員に番号がないと、公平な負担や適切な給付がなしえないため「国民一人ひとりに一つの番号」としていることを考えると、住民票があれば住基ネットから離脱していても、番号を与えた方が良い気もします。「番号がもらえない人」についての整理が必要そうです。

「全員が唯一無二の番号」とする理由については、「情報の名寄せ・突合(マッチング)を効率的・正確に行うため」としています。これは、「番号」をキーとして名寄せやマッチングを行うことを意味しています。ただし、「許される名寄せ」と「許されない名寄せ」があるので注意が必要です。

「番号」による名寄せとマッチングのイメージ

「民―民―官」の関係で利用可能とは、本人が金融機関や勤務先に「番号」を告知して、その後、税務署等の政府機関に対して金融機関や勤務先から、「番号」とセットになった申告や届出が提出されること等を意味します。

「目で見て確認できる番号」は、「番号」がコンピュータ処理で使われるだけでなく、紙書類への「番号」記入や、窓口での口頭による「番号」の告知等を想定していることを意味します。

●「情報連携」は「名寄せ」の事前準備

「情報連携」については、

・複数の機関において、
・それぞれの機関ごとに「番号」やそれ以外の番号を付して管理している
・同一人の情報を紐付けし
・紐付けられた情報を
・相互に活用する仕組み

としています。まず、複数の機関における話なので、単一機関の中で情報をやり取りすることは、番号制度の「情報連携」には該当しません。また、「同一人の情報」を「相互に活用する」としており、「名寄せする」とも言っていません。

ちょっとわかりにくいのですが、「情報連携」は「名寄せ」の事前準備と考えて良いと思います。次に示すような2段階となっています。

(1)名寄せが許されていない段階
複数の機関に散在している情報を、「情報連携」や「情報収集」等により、まずは単一機関内に集める。

(2)名寄せが許されている段階
集められた情報について、単一機関の中で「番号」をキーにして「名寄せ」する。さらに、「名寄せ」した情報を、同じ機関内で保有する他の情報と「マッチング」する。

「番号」で許される名寄せ、許されない名寄せ

「名寄せ」の定義を「同じ人の情報を集めること」としましょう。勝手な「名寄せ」を防ぎ、適切な「名寄せ」だけを行うためには、何らかの事前準備が必要です。特に、情報が分散管理されている状況では、「番号」や「4情報」だけをキーにして「名寄せ」をしても、門前払いされてしまいます。

複数の機関に散在している情報を適切に「名寄せ」するためには、

・欲しい情報がどこにあるのかを特定する
・根拠や理由を示して、情報が欲しいとお願いする
・お願いに対する許可をもらう
・本当に必要な情報だけをもらう

などのプロセスが必要です。これら名寄せの事前準備を「名寄せ」と区別して、「情報連携」としているのです。名寄せの事前準備は、「情報連携」以外にも方法があり得ます。とにかく、法令で認められた方法等で、単一機関の中に必要な情報が集まってくれば良いのです。

これに対して、「番号」や「4情報」だけをキーにすれば、何の制限も無く様々な情報が集まってしまうような状態だと、「個人情報の一元的な管理」と言われてしまいます。

●情報連携基盤やマイ・ポータルは「電子情報処理組織」

「情報連携」の中で、「情報保有機関」と「情報連携基盤」が出てきます。この二つは重要なので、定義を確認しておきましょう。

情報保有機関:「番号」に係る個人情報を保有する行政機関、地方公共団体及び関係機関

情報連携基盤:法令で定める事務について「番号」に係る個人情報を情報保有機関間でやり取りするための電子情報処理組織

後で出てくる「マイ・ポータル」も、「情報保有機関」ではなく、「情報連携基盤」と同様に「電子情報処理組織」の一つであると定義されています。「電子情報処理組織」は、情報処理システムを意味する法令(お役所)用語です。

大綱では、複数の情報保有機関においては、一部の例外を認めつつも、原則として「情報連携基盤」を使って「情報連携」しないとダメですよ(義務付けますよ)と言っています。

他方、情報の流れがほぼ一方通行で情報を相互に活用する状態でない場合は、「情報連携」ではないとしています。これは、名寄せの事前準備を「情報連携」だけに限定してしまうと、かえって名寄せの効率化を妨げることにもなるので、そうした問題への配慮だと思います。

関連ブログ>>社会保障・税の番号制度、名寄せについての整理からわかること

●番号確認と本人確認

番号制度における「本人確認」は、個人が「番号」を利用する際、利用者が本人であることを証明するための仕組みとされています。

本人確認には、対面での本人確認とオンラインでの本人確認(認証)があります。

番号確認と本人確認は、基本的には別ものなので異なる手段で行うことができますが、必ずセットで行います。市町村の窓口であれば、

(1) 番号を口頭や書面で伝えて、本人確認は運転免許証で行う
(2) 番号が券面に記載された住基カードを提示して、番号確認と本人確認を行う

などが考えられます。(1)の場合は、番号が本人と紐付けられていること(利用者が「番号」の持ち主であること)を市町村側のデータベース等で確認する必要があります。(2)の場合は、住基カードの券面とICチップの内容を確認することで、番号が本人と紐付けられていることがわかります。

窓口での本人確認方法は、いくつかの選択肢があると思いますが、オンラインでの本人確認(認証)については、今のところはICカード(住基カード)に格納した公的個人認証サービスの電子証明書に限定されているような印象を受けます。

いずれにせよ、具体的な本人確認の方法やタイミングなどについての整理が必要でしょう。