社会保障・税に関する番号制度についての基本方針(3)、情報連携基盤はシンプルで使いやすいものに


社会保障・税に関する番号制度についての基本方針(2)、シンプルな方法で付番、番号利用時に本人確認を
の続きです。

●情報連携について

情報連携は、
・複数の機関において
・それぞれの機関ごとに「番号」やそれ以外の番号を付して管理している
・同一人の情報を紐付けし
・紐付けられた情報を相互に活用する仕組み

としています。また、付番について説明する中で、

・複数の機関で管理している同一人の情報は、国民IDコード(PDF)を用いて紐付けする
・紐付けられた情報を相互に活用するための仕組みを「情報連携基盤」とする

といった記述が見られます。詳しく見ていきましょう。

・現在、各府省・関係機関・地方公共団体等が様々なデータベースを保有している
・既存のデータベースを前提とした分散管理方式とする

・データに紐付けられた個人の属性情報は、住基ネットの最新4情報(住所、氏名、生年月日、性別)とリンクさせて情報の最新化を図る
・法人の情報は、登記の最新3情報(商号・名称、本店・主事務所、会社法人等番号)とリンクさせて情報の最新化を図る
・情報の最新化(更新)は、定期的または随時に行う

・当面の情報連携の範囲は、年金、医療、福祉、介護、労働保険の各社会保障分野と国税・地方税の各税務分野とする
・各機関間の情報連携は情報連携基盤を通じて行わせる
・情報連携基盤はデータのやり取りの承認やアクセス記録の保持を行う
・国民が自己情報へのアクセス記録を確認できるようにする

・番号制度の情報連携基盤が、そのまま国民ID制度の情報連携基盤となる
・将来の幅広い行政分野や民間サービスでの活用が可能なシステム設計とする
・民間サービスでの活用は、国民が自らの意思で同意した場合に限定する
・システム設計にあたってセキュリティに配慮する
・連携が可能な情報の種類については今後検討する

・情報連携基盤の構築は、国民ID制度(PDF)と連携して行う
・情報連携基盤の具体的手法や技術要件等は「情報連携基盤技術ワーキング・グループ」で議論して検討・整理する

★作者コメント

複数の機関において、それぞれの機関ごとに番号やそれ以外の番号を付して管理している。例えば、ある人の番号が

A機関:12345
B機関:56789
C機関:12345

と管理されている状態です。

この場合、A機関とC機関では番号が共通しているのでお互いの情報のやり取りが容易です。お互いに「12345の情報をください」とお願いすれば良いからです。

しかし、A機関とB機関では番号違うので、A機関が「12345の情報をください」とお願いしても、B機関では誰の情報を渡せば良いのかわかりません。この場合、何らかの情報連携(中継・仲介)の仕組みが必要になります。

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情報連携の具体的な方法は様々で、ベンダー間で主張が異なり競争もあります。情報連携基盤技術ワーキンググループの構成員(PDF)を見ても、電子政府に関連する大手ベンダーやシンクタンクが数多く参加しており、その様子が伺えます。企業の肩書きで参加している以上は、少なからず組織の意向が働くことは認識しておかなければいけません。

情報連携基盤は、電子政府のインフラ事業としては、最大・最後の大物であり、官民問わず様々な情報システムとも関係があります。今後、長期間に渡ってキャッシュを生み出してくれる事業でもあります。

作者の希望としては、できるだけシンプルに設計・構築して、実務で使えるもの・使いやすいものにすることです。手法については、特にこだわりません。シンプルに設計・構築されることで、オペレーションを安定化させると共に、国民や第三者が評価・監視しやすくなります。基本方針の内容を見ると、エストニアや韓国やベルギーの制度(PDF)に近いように思いました。

分散管理方式は良いと思いますが、既存のデータベースは、業務改革や組織改革とセットで統合・整理した方が良いでしょう。データベースと個別の番号制度は、行政の縦割りや既得権益の象徴でもあるからです。

情報の最新化(更新)は、取り扱うデータの用途や種類によって、定期的または随時に行うか決めれば良いでしょう。

「国民が自らの意思で同意する」ことについては、ガイドライン等で整理・明示しておく必要があるでしょう。

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番号制度の情報連携基盤が、そのまま国民ID制度の情報連携基盤となるようですが、番号制度と国民ID制度との違いや関係性について、もう少しわかりやすい説明が待たれるところです