EUとイスラームの宗教伝統は共存できるか―「ムハンマドの風刺画」事件の本質

EUとイスラームの宗教伝統は共存できるか―「ムハンマドの風刺画」事件の本質 (明石ライブラリー)
森 孝一,同志社大学一神教学際研究センター
明石書店

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ムハンマド風刺漫画掲載問題(Wikipedia)について、様々な国や地域の立場から、その影響や反応を紹介しています。

イスラム信者が少ない日本では、イスラムに対して無知や無関心でいることは、それほど問題にはなりません。

問題となった風刺漫画も、作者からすれば、普通のマンガにしか見えず、日本語による詳しい解説がなければ、その意味を理解することもできません。

しかし、ヨーロッパでは、安価な出稼ぎ労働者として、イスラム圏の人たちが増えているため、最低限の知識や理解が必要となります。

問題が発生したのが、北欧の優等生とされるデンマークであることも、興味深いところです。EUの中でも、「わが道を行く」としてきたデンマークでさえ、グローバル化の影響は予想以上に大きかったということでしょう。

本書を読んでいて感じたのは、やはり、宗教や言論が持つ強力なパワーでしょうか。

宗教や言論は、「増幅器」みたいなもので、人間が持つ憎しみや恐れを増幅して、凶器と化すこともあれば、人間が持つ慈愛や思いやりを多くの人に広め伝えることもあります。

つまり、宗教や言論は、それを扱う「人間の意志」に大きく左右されると。

そう考えると、ガンジーは、やっぱりスゴイなあ

イスラムに限らず、どの宗教にも、危険な要素はあります。

なぜなら、宗教を実践するのは神や仏ではなく、人間だからです。

「宗教」を通して人間を観察すると、人間の良い面、悪い面、良くも悪くもない面など、色んな「顔」が見えてきます。

同じ宗教の信者でも、不器用なまでに愚直な人たちは、社会情勢の変化についていくことができず、自身が置かれている現状に不満を抱き、暴走することがあります。

そうした世渡り下手な人と、うまく立ち回って変化に対応している人と、どちらがエライのかと言えば、よくわかりません。

ただ、そうした暴走するエネルギーを、他の人たちが喜んでくれるようなことに使えたら良いのにと思います。

イスラム信者による暴力や暴力への支持は、イスラム教を危険な宗教と思わせるだけなので、できるだけ慎むのが賢明でしょう。

イスラム信者が西欧社会で順応するためには、西欧文明や他宗教の良いところを、たくさん知ることが必要と思います。

しかし、それ以上に、西欧人こそ、イスラムや中東文化、アジアの宗教・文化について、もっと知る必要があるような気がするなあ