資本主義と自由 (日経BPクラシックス)

資本主義と自由 (日経BPクラシックス)
ミルトン・フリードマン
日経BP社

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金融危機をきっかけとした世界的な経済不況の中で、骨太の経済本が売れているとのこと。本書は、最近のベストセラーではありませんが、一度は読んでおきたい良書です。

本書の良さとして、まず「わかりやすさ・明快さ」を挙げることができます。

例えば、「負の所得税」などは、極めて合理的です。

実際には、人間は常に合理的に考え行動するというわけではないので、「合理的なこと」が選択・実行されるわけでもありません。

「確かに、そうだけど。。。」で終わってしまったり。

フリードマンは、本書で

『自由主義者は、権利の平等・機会の平等と、物質的平等・結果の平等との間に厳然と一線を引く。』

と述べています。両者を分けて処理することは、やはり合理的で必要なことと思います。

また、

『平等主義者はさらに一歩を踏み出そうとする。彼らが「誰かから取り上げて別の誰かにあげる」ことを認めるのは、目標を達成するための効率的な手段だからではなく、「正義」だからなのだ。この点に立ち至ったとき、平等は自由と真っ向から対立する。」

とも述べています。

「正義」の暴走は、かなり怖い。

「誰かから取り上げて別の誰かにあげる」で最も大きな満足を得るのは、誰なのか。

誰かにとっての「正義」は、別の人にとっての「侵略」や「略奪」になるのではないか。

「正義」を実現したという満足だけが虚しく残るのではないか。などなど。。

日本人の多くが、「与えられた仕事を黙々とこなす」「既にある仕組みを磨き上げていく」といったことばかりが得意であるとしたら、今の世の中は、日本人にとって厳しいものと言えましょう。

本書を、今後の世の中を優しくもたくましく生きていくための糧としたいものです。