ASPとSaaSは別物、電子政府におけるSaaS活躍の可能性

電子政府でもSaaS(Software as a Service:サース)への関心が高まっています。電子政府評価委員会でも、「SaaSの活用を積極的に検討するべき」といった意見があります。

ところが、未だにSaaSとASPが一緒に語られることが多く、その違いが曖昧になっています。「自治体でSaaSを導入した」といった記事を見ると、「単なるASPじゃん!」ということが多いのです。

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政府の方でも、既存ASPベンダーへの配慮からか「地方公共団体ASP・SaaS活用推進会議」といった具合に、両者を一緒にして考える傾向があります。

両者の違いは、SaaSで一歩抜け出す中小企業:ASPとSaaSの違いをはっきりさせるなどで学ぶことができますが、SaaSやASPの導入を検討している政府機関は、次のような質問をしてみると良いでしょう。下記の質問がYesなら、SaaSである可能性が高いです。

(1)追加費用なしでカスタマイズが自分達で簡単にできるか

業務に合わせたカスタマイズができなければ、SaaSではありません。使えば使うほど洗練され使いやすくなっていく、それが基本です。カスタマイズに追加費用がかかる場合は、要注意です。

(2)プラットフォーム上で独自アプリケーションを開発できるか

メニューに無いサービスは、自分達で作ることができる。それが、SaaSです。

独自アプリケーションが必要になったとき、それを迅速かつ簡単に構築できる。自分達で開発できない場合は、開発業者に依頼しても良く、その時に工期が1年以上かかる場合は、SaaSとは言えないでしょう。金額と時間に要注意です。

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(3)他のシステムやアプリケーションと繋がるか

機能を強化したい場合や、他のシステムで使用しているデータと連携させたい場合に、SaaSは真価を発揮します。

機能追加するのに、同一ベンダーが提供する有料オプションしかない。これは、SaaSではありません。

有料・無料に関らず、他のベンダーが提供するサービスと連携できる。さらには、Webベースのシステムだけでなく、既存レガシーシステムとも連携できる。こうなっていれば、SaaSと考えて良いでしょう。

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●SaaSもピンキリ

実際にはSaaSもピンキリです。

SaaSは新たに再生したASP」と考えると、SaaSに成りきれていないASPもどきもあります。

ですから、「名前や肩書き」に迷わされること無く、あくまでもサービスの中身で判断することが大切です。

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●自治体での活用例は

電子政府でも民間サービスを活用しようで紹介しましたが、ヤフーオークションやGoogle Mapsの利用は、SaaSの利用例と言って良いでしょう。

ヤフーオークションは、財務省から市町村まで幅広く活用されており、かなり一般的になってきたと思います。

●セキュリティよりもデータの取り扱いに注意

SaaSの導入時には、セキュリティへの不安が語られることが多いようです。

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作者は、セキュリティの重要性を認識しつつも、預けるデータの取り扱いに、より注意するべきと考えています。

預けたデータの削除、ダウンロード、バックアップなどが容易にでき、何かあったときに(サーバ停止、サービス終了など)対応できることが大切かと。

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電子政府の評価をしていても、システム開発のスピードや効率性について、疑問を感じることもしばしば。SaaSが活躍できる機会は、これからますます増えていくことでしょう。

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