地方公共団体電子申告等普及促進協会の設立(4):エルタックスを自治体や企業の「電子私書箱」として使う

地方公共団体電子申告等普及促進協会の設立(3):求められる成果主義、成功報酬&SaaS型サービスを」の続きです。

今回の提案は、『エルタックスを自治体や企業の「電子私書箱」として使う』というものです。

政府が検討している「電子私書箱」については、本ブログでも取り上げていますが、実は、電子政府には既に「電子私書箱」が備わっています。

それは、「オンライン電子申請(電子申告)システム」です。

※ここで言う「電子私書箱」は、「個人情報の管理ツール」ではなくて、単純に「政府と企業が、オンラインでデータを安全にやり取りする手段」という意味です。

電子申請システムには、行政機関と申請者(個人、企業)が、申請>受付>審査>結果通知という流れで、データを安全かつ確実にやり取りする機能が備わっています。

これを、「電子私書箱」として活用すれば良いのですね。

中でもエルタックスは、全ての自治体が共通して使えるシステムなので、「電子私書箱」としては非常に使い勝手が良いのです。

提出先がどの自治体でも、あるいは複数の自治体であっても、エルタックス経由で提出すれば、後は自動的に振り分けてくれるのですから。

これが、都道府県や市町村ごとにバラバラな電子申請システムだと、大変な手間となるでしょう。

●自治体へのエルタックス無料解放が条件

以前、『次世代電子政府サービスを考える:これからは行政が国民に合わせる』では、において、次のような提案をしました。

1 企業は既存の「給与支払報告書」データを「法人サービス・ポータル」にアップロードする。この時点で、企業の提出は完了する。
2 各自治体は、LGWANやインターネットを経由して、データを取りに行く。

この「法人サービス・ポータル」を「エルタックス」に置き換えるためには、次のような仕組みが必要となります。

1)エルタックスをLGWAN経由で、全ての自治体に無料解放する
2)法改正等により、エルタックスに申告データが到達した時点で、自治体への申告は完了したものとする(自治体側のエルタックス対応を義務付ける)
3)自治体は、住民や企業の利用件数・データ量等に応じて、利用料金を支払う
4)自治体に送られてくる申告データは、既存の税・会計システムに取り込めるようにしておく

自治体がエルタックスを利用しない理由に対しては、

・利用料金が高い:利用件数に応じた料金(成果報酬型)です
・ニーズが無い:ニーズの有無を決めるのは住民です。

と回答することができますね。

全ての自治体は、申告データを最終的には電子化するわけですから、電子データでもらって困ることはないはずですし。

各自治体は、申告義務者である個人や企業に対して、独自に「申告・納税用の整理番号」を付与しているはずですから、その整理番号を「エルタックス」の利用アカウント(ID)と紐付けしておけば良いでしょう。

●「電子私書箱」としての活用例

さて、次はいよいよ「電子私書箱」としての活用です。

(1)自治体から住民・個人へ

自治体は、税務に関してだけでも、毎年たくさんの通知等を住民や企業宛に送付しています。これを、エルタックスで行えば、少なくとも封書作業コスト・印刷代・郵送料を削減することができます。

利用者の希望に応じて、税務以外の通知についても追加していくと良いでしょう。

電子申告を利用しない住民や企業も、エルタックスの利用アカウントを取得すれば、オンライン通知を利用することができます。もちろん、電子証明書や電子署名は不要です。

(2)税務署から自治体へ

現在は、国税の申告データの多くが、各自治体へ紙で交付されています。これを、エルタックスで行えば、自治体側のデータ取得・入力作業コストが削減できます。

社会保険庁から自治体へのデータ交付についても、同じことが言えます。

(3)総務省から自治体へ

総務省や国税庁など国の機関からの通達等についても、エルタックスを活用できるでしょう。また、自治体から国の機関への照会等が行えると、さらに便利ですね。

●既存の電子政府インフラを活用し、費用対効果を高めるべき

現在、電子政府・電子自治体に関する様々なインフラが存在し、その運用・維持に多くの税金が使われています。

しかも、住基ネットや公的個人認証サービスといった、国と自治体が共有するインフラについては、全体の費用(毎年の運用費など)さえ明らかにされていません。国の予算を見ても、国が負担する費用しか記載されていないので、各自治体が負担している費用はわかりません。

このような状況は、電子政府評価委員会などを通じて改善していくつもりです。

それと同時に、既存の電子政府・電子自治体インフラを活用したサービスも考えることで、費用対効果を高める努力が必要となります。

もちろん、「使えないもの」を「使え、使え」と言うのではなくて、「使えるサービス」を提案・提供していくということです。

今回の「LGWAN」や「電子申告システム(エルタックス)」を活用した提案が、その一つ(ヒント)となれば嬉しいなあ

次回は、本シリーズの最終回として「エルタックスの公共性・社会性」について考えてみたいと思います。