日本の医療DXに必要なのは、「患者の権利」の確立と医療データ提供の義務化

2022年10月から、閣議決定に基づき、医療DX推進本部が開催されています。

医療DX推進本部(第1回)令和4年10月12日
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/iryou_dx_suishin/dai1/gijisidai.html

第1回医療DX推進本部幹事会 令和4年11月24日
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/iryou_dx_suishin/pdf/dai1_kanjikai.pdf

医療DXは、省庁の縦割り感が強い分野の一つで、厚生労働省、経済産業省、デジタル庁、総務省などが関与しています。検討項目として、全国医療情報プラットフォーム、電子カルテ情報の標準化、診療報酬改定DX、電子処方箋などがあります。

全国医療情報プラットフォームについては、データコントローラー(データベース管理責任者)、データプロセッサー(データベース技術管理責任者)、データプロバイダー(データ提供義務者)の役割(責任と義務)を法令で明確に定めることができれば、期待できるかもしれません。もちろん、個人情報保護委員会による監督は必須です。

電子カルテ情報の標準化については、標準の実装を義務付けるための根拠として、公的データベースへの電子カルテ情報の提供を医療機関や医師に義務付ける必要があるでしょう。中央データベースへの電子カルテ情報提供が義務になれば、電子カルテ情報の標準化は、ほぼ自動的に進むことになるからです。どの企業の会計ソフトを使っても、作成した税申告のデータが、国税庁の電子申告で利用できるのが良い例でしょう。

これは、電子カルテ情報の標準化は、技術的な問題でも、法律的な問題でもなく、政府の意思決定の問題であり、極めて政治的な問題であるということを意味します。そのためにも、電子カルテ情報の標準化が進まないのは、間違いなく国の責任であること(ベンダーの責任ではないこと)を、政府(厚労省)が明言する必要があるでしょう。

医師や国民の意識改革という観点では、「患者の権利」の確立が最も重要です。エストニアや北欧諸国で、患者や医療データの中央データベース化が進んだ背景には、「患者の権利」や「患者中心の医療」という考え方が、法制度として確立し、医療関係者に浸透していることがあります。医療データを「何のために、誰のために」利用するのか、そのための方法としてデータをどのように収集して、どのように管理するのが良いのかを考えて欲しいと思います。