高機能エアコンとオリパラアプリ

家族が「部屋のエアコンの調子が良くないので見て欲しい」と言うので話を聞いてみると、購入してから1度も中を開けて掃除したことがないと。掃除は自動でしてくれるからというのが理由らしい。リモコンを見ると、確かに「掃除」ボタンが付いている。

エアコンの自動掃除機能というのは便利な反面、掃除やお手入れが不要だと誤解されるリスクがある。型番や製造年月を調べると、1度も手入れされないまま、5年間ほど放置されていたことが判明。中の汚れ具合を想像すると恐ろしいが、5年なら大惨事にはなっていないだろう。

実は、3年ほど前にリビングのエアコンを見たことがあり、その時は10年放置されていてた。しかも、スペックを重視する傾向のある私の兄に勧められて購入した分不相応の最上級機。案の定、機能がてんこ盛りで、中を開けると今まで見たことがないほど複雑で部品が密集している。10年分の汚れはヘドロのようにこびりつき、その醜い姿は機械が悲鳴を上げているかのようだ。

あの時の悪夢がよみがえりそうだか、今回のエアコンはそれほど複雑ではなく、汚れも大したことがないのでラッキーだった。しかし、自動掃除の機能で使われるダストボックスは、入りきれなくなった5年分のホコリがあふれていて、シート型のフィルターは機能しなくなったダストボックスに引っかかってひん曲がっていた。調子が悪くなったのは、これが原因かもしれない。高級機ではないが、専用の高密度フィルターなるものも付いており、交換の目安は3年に1度らしい。とりあえず説明書に従って部品を外し、水洗いできるものは洗面所でキレイにしてから、ベランダに干しておく。

ところで、私の部屋のエアコンは、ヨドバシカメラのネット販売で工事費込みで1番安かったシンプルな霧ヶ峰だ。厚みがあるものの、必要な機能は十分に備わっている。中を開けるとスカスカで、半年に1度ほどフィルターに掃除機をかけて、エアコン本体表面を軽く水拭きするだけで良い。

シンプルだけど8年以上も期待通りに動いてくれる私の部屋のエアコンを見ていると、エストニアの電子政府を思い出す。これに対して、最上級機のエアコンは、日本のオリパラアプリに思える。あれもこれもと機能を付け、見栄えの良い最先端の技術を使おうとして、何十億円ものアプリになってしまった。そんなアプリを作って喜ぶのは誰なのだろうか。

最初の基本方針として、「シンプルでオープンなアプリを作る」と決めておけば、不毛なスキャンダルや政争の具に使われることもなかったであろうに。必要最低限の機能を決めて、オープンソースをベースにプロトタイプを一つ作り、それを使って規模や実績を問わず広く民間企業にコンペ形式で競争させたら、今とは違う景色が見えていたかもしれない。エアコン掃除をしながら、そんなことを思ったのでした。