電子申請のJRE問題を解決するには

現在の電子申請には、JRE問題というのがあります。何年も前から指摘されていることで、つい最近も「電子政府も縦割り弊害 各種申請、同一PCで無理」(asahi.com)という記事がありました。これは、電子申請を「サービス」ではなく「システム」と考えているから起きる問題です。

基本的な考え方や姿勢の問題なので、JREを最新バージョンで統一するといった方法では、根本的な問題解決となりません。

電子政府・電子申請サービスでは、「利用者の負担を軽減する」ことが「わかりやすいメリットを提供すること」と共に最重要の課題となります。

実際にサービスを使ってもらうためには、マイナスの要素を減らし、プラスの要素を増やすことが必要だからです。

「利用者の負担を軽減する」ためには、電子政府・電子申請サービスで採用する方法を、「利用者が日常的に使用しているもの」「既に広く普及しているもの」としなければいけません。(例えば、ブラウザー、電子メールなど。PDFやフラッシュも市民権を得ているので、許容範囲と言えます。)

利用者に対して、新しいものを準備させたり、新しいことを覚えさせたりするのは、確実に利用者の負担を増やすことになるからです。

この最も基本的な考え方を理解して、実践することができれば、JRE問題のようなことは起きないのです。

e-Gov電子申請システム」の利用前準備を例にとって見てみましょう。

電子申請をご利用になる場合に」を見るとわかりますが、まず準備事項が多過ぎます。これでは、始める前からうんざりしてしまいます。

私が責任者であれば、(仕様から推測される)利用イメージができあがった時点で、やり直しを指示するですが。。

1 安全な通信を行うための証明書の入手と設定

こんなことをさせるサービスは、民間ではあり得ません。ただちに止めるべきでしょう。

2 Java実行環境への証明書の設定

1と同様です。ただちに止めるべきでしょう。

3 電子署名に必要な利用者の電子証明書について

一般の人は、電子署名を使いませんし、電子証明書も持っていません。別の方法を考えましょう。

4 クライアントモジュールの入手と設定

1と同様です。ただちに止めるべきでしょう。

5 公的個人認証証明書登録ツールの入手と設定

1と同様です。ただちに止めるべきでしょう。

以上のことから、
・安全な通信を行うための証明書の廃止
・JREの不採用
・電子署名、電子証明書の廃止
が必要とわかります。

「それでは、成りすまし等の問題が・・・、安全な電子申請が・・・できない」といった意見は、本末転倒です。できる別の方法を考えれば良いのですから。

「仏造って魂(たましい)入れず」と言われますが、仏を造ってから、魂を入れようと思っても遅いのです。きれいな魂があって、それが仏の形となっていくのです。

電子申請のJRE問題を解決したければ、まず、基本的な考え方や姿勢を改めなければいけません。それができれば、自ずと何をすれば良いのかわかります。

電子政府・電子申請サービスを使ってもらいたければ、その魂(たましい)を磨きましょう。

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“電子申請のJRE問題を解決するには” に2件のコメントがあります

  1. 問題はJREのみにあらず
    問題はJREのみではありません
    OS、ブラウザ以外の汎用の技術に依存すると
    申請システムの提供事業者が解決できない問題に突き当たります

    汎用の技術であるが故、当該電子申請システムの都合とは無関係にアップデートが行なわれます
    すると、最新版での動作確認がされるまでは、利用者が申請不可能な状態に陥る可能性があります

    PDF利用のシステムでもAdobeReader7.0が出た当初、6.0前提で動いていたシステムはついていけませんでした
    最新のPCを購入し7.0がプレインストールされている初心者に対し、
    電子申請利用のために7.0をアンインストールし、6.0を再インストールを強制するような情況にありました
    結局、OSブラウザ以外は事業者がの関与が及ぶ範囲の仕組みでないと問題が生ずることになるのです

    JREにしてもOSのクロスプラットフォームを念頭に選択されたようですが
    現在、MacやLinuxで動作保障している電子申請のシステムはないようなので、結果的に全く根拠がなかったと言えます

    因みにe-TAXはJRE依存でないらしいですね、流石にえらいと持ち上げておきましょう
    税金の申告納税に使うシステムが、○○ドロボーと言われるようではシャレになりませんけどね….

  2. OSのクロスプラットフォームなど
    elicuriさん

    いつも、的確なコメントありがとうございます。

    ご指摘の通り、OSとブラウザ以外には依存しない方が良いですね。その場合でも、バージョンアップ時への対応を契約内容に盛り込む(SLAなど)と言った工夫が必要と思います。PDFのような特定企業の技術・サービスに依存するシステムの場合は、特に。。

    OSのクロスプラットフォームについてですが、

    電子申請のような複雑なサービスの場合、必ずしも全てのOSに対応させる必要は無いと思います。MacやLinuxへの対応は、電子申請の利用率が30-50%ぐらいになってから考えれば良いでしょう。それよりは、携帯電話への対応が先と思いますし。

    もちろん、「インターネット利用環境にあれば、電子政府サービスを利用できる」というのが基本ですけどね。

    e-TAXがJRE依存でないのは良いことですね。課題は多いですが、少しずつ改善されていくことで、順調に利用者も増えていくと思います。

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