つぶやき電子政府情報(2013年7月29日):電子政府における個人の識別と追跡

プライバシーエンジニアを育てよう
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20130717/492102/
産業技術総合研究所の高木浩光氏によるパーソナルデータに関する解説と提言。

電子政府やマイナンバー法の観点から誤解がありそうな点について、少し触れておきたいと思います。

まず、米国のFTC(連邦取引委員会)の報告書やホワイトハウスの政策大綱(フレームワーク)は「消費者(データ)プライバシー」に関するもので、民間企業等がビジネスを目的として取り扱うデータが対象になっています。ですから、行政機関が業務を行う上で取り扱うパーソナルデータ(個人に関する情報)については、基本的に対象外となります。米国ではパーソナルデータの保護に関し、分野横断的な法律は存在せず、分野ごとの個別法と自主規制を基本としているからでしょう。

これに対してEUでは、分野横断的に(原則として官民を区別せずに)パーソナルデータ保護に関し、加盟国が遵守すべき指令を策定して、この指令に従って各国が国内法を整備する形となっています。しかし、EU各国のデータ保護法等では、法令に基づくデータ利用は本人の同意を必要としないことが通常です。ですから、法令に基づいて機能する行政機関のデータ利用は、実質的には米国と同じように「消費者データ」と区別されています。

なぜこのような区別がされているかと言えば、行政機関によるデータ利用は本人の意思に関わらず、ある種の強制力を持って行われるからです。不正・不法なデータ利用については、国民・住民は当然文句を言えますが、法令に基づいた利用については文句を言えません。マイナンバーについても同様で、住民基本台帳に登録される国民・住民は、マイナンバーの付番を拒むことができません。

もし行政機関によるデータ利用を避けたいのであれば、国籍を離脱した上で国外へ移住するといった行為が必要になります。しかし、移住先の国でも同じようなデータ利用や番号制度があるわけですから、国民・住民にはほとんど選択肢は無いと言って良いでしょう。「究極のオプトアウト」という感じです。

これに対して、民間企業等がビジネスを主目的としてデータを利用する場合は、消費者に選択肢があり、原則として本人の同意が必要になります。また、プライバシー保護に有効とされる「評判」の仕組みが働きやすい点も、行政機関と異なります。法令やガイドライン等に違反しなくても、消費者に不信感を抱かせるような行為については、「評判」により修正や淘汰が行われる可能性があります。「適度な選択肢の提供」は、消費者の満足度向上にも影響を与えます。

行政機関の場合は、民間企業のような「評判」の効果はあまり期待できないので、第三者機関等による監視や罰則等が必要になります。

今後の電子政府や行政サービスでは、官民が共同でサービスを提供する機会が増えると思いますので、本人の同意を前提とした行政機関によるデータ利用(当初予定していなかった目的外利用や二次利用等)も増えてきて、上記のような区別が難しくなるのではないかと思います。マイナンバー制度におけるマイ・ポータルの利用も、その一例です。だからこそ、「強制力を持って行われる行政機関によるデータ利用」の位置づけとルールについて、より明確化しておく必要があるでしょう。

もう一点。「個人の識別と追跡」についても触れておきます。

関連>>番号制度における個人情報保護の役割、追跡機能を邪魔しないように
http://blog.goo.ne.jp/egovblog/e/0f164c76a5f75817ff40616faa9d050b

行政機関において、個人を識別して追跡することの意味は、大きく分けて二つあります。一つは、「権利義務の存在を確認すること」で、もう一つは「権利義務を実行・実現する(ために本人に通知・連絡する)こと」です。

権利義務の主体が日本人の場合、「権利義務の存在確認」は、最終的にはトラストアンカー(信頼の起点)である戸籍にまでさかのぼる必要がありますが、通常はトラストアンカーに依拠した信頼ポイントである住民基本台帳やその他の業務データベース(年金等)に照会して確認すれば足ります。

消費者と企業の関係では、「権利義務の存在確認」は、双方の自由な契約によって決まるのが普通なので、法令で定められているような場合を除けば、上記のような確認は行われません。

使える電子政府の実現には、必要に応じてオンラインで効率的にトラストアンカーにまでたどれることが必須なのですが、日本では、いまだに郵便や紙書類による確認が必要です。

「権利義務の存在確認」ができた後は、「権利義務の実行・実現」の段階へ移行します。

「権利義務の実行・実現」とは、本人に必要な手続を行ったり、行政サービスを実際に利用してもらったり、税金を払ってもらったりすることです。「権利義務の実行・実現」には、申請・届出など本人の関与や意思確認が必要な場合が多いので、まずは本人に確実に通知・連絡・接触できることが重要になります。マーケティング用語で言えば、本人に確実にリーチできることが求められるのです。

ところが、「権利義務の存在確認」によって得られる通知・連絡先情報は「住所」であり、通常は住民票等に記載された住所に通知すれば足りる(行政側の仕事は終わり)ことになっています。もちろん、補完的な手段として電話や訪問がありますが、どこまで行うかは行政側の裁量でしょう。

こうした行政からの通知・連絡は、インターネットや携帯電話が普及した現在、時代に合わないものになってきました。例えば、オンラインショッピングで重要なのは、「住所」よりも「お届け先情報」であり、本人への連絡は登録された「メールアドレス」への電子メールで行い、補完的に電話番号が使われます。

実際、エストニアのように国民全員にメールアドレスを交付する国もあり、デンマークでは社会保障等の給付や税還付用に専用口座を登録しています。

電子政府では、「サービスを形式的に提供すること」よりも、「サービスを実際に届けること(利用してもらうこと)」が重要なので、過度に「住所」に依存した仕組みは好ましくありません。「住所」以外の連絡・接触手段を確保しておくことが求められます。「住所」以外の連絡手段は、本人や家族の生命や安全に関する緊急時の連絡にも有効です。

本人の選択肢について言えば、行政が「権利義務の存在確認」のためにオンラインで効率的にトラストアンカーにまでたどれることは、本人に拒否権を持たせるべきではありません。他方、「住所」以外の連絡・接触手段を行政に提供するかどうかは、本人の選択で良いでしょ
う。電子政府が普及すれば、自ずと「住所」以外の連絡・接触手段の利用も進みます。しかし、将来的には、より効率的かつ確実に本人とリーチできる手段を、行政側が確保せざるを得ない状況になるかもしれません。その場合、本人の選択についてはオプトアウト方式になるでしょう。

現在のマイナンバー制度は、「権利義務の存在確認」において、マイナンバーをキーとして、住民基本台帳まではたどることができますが、トラストアンカーである戸籍まではたどることができません。その意味で、ちょっと中途半端です。

「権利義務を実行・実現する(ために本人に通知・連絡する)こと」においては、マイナンバーをキーとして、本人の携帯電話番号やメールアドレスを知ることができませんが、最新の住所や勤務先、銀行口座にたどることはできるので、税の徴収等には一定の効果を発揮してくれるでしょう。

関連>>「パーソナルデータの利用・流通に関する研究会」報告書の公表
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu02_02000071.html
FTC報告書「急速に変化する時代における消費者プライバシーの保護」原文(PDF)
http://www.soumu.go.jp/main_content/000196318.pdf
Suica乗降履歴データの外部提供で問われるプライバシー問題—JR東日本に聞く
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20130724/493665/
Suica に関するデータの社外への提供について(PDF)
http://www.jreast.co.jp/press/2013/20130716.pdf


サイバー犯罪対策夏休み特集
http://www.npa.go.jp/cyber/summer/index.html
警察庁から。出会い系サイト、コミュニティサイト、不正アクセス、スマホの不正アプリなどについて注意を呼びかけてます。

既定路線の消費増税、せめて歳出削減をセットで行うべき
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20130718/358478/
歳出を削減せずに消費増税を行っても財源は足りないまま、歳出削減は絶対にやる必要がある。社会保障費の抑制で歳出削減を行うべきで、社会保障費の中で削るべきものは年金と医療だと。正論過ぎて、政治家では絶対言えない内容ですね。竹中さんの意見を安倍政権がどこまで組み入れるか注目です。

Washington State’s IT Project Law Aims to Enhance IT Operations
http://www.govtech.com/Washington-State-IT-Project-Law.html
米国ワシントン州では、「パーソナライズされた政府」を目指して、法律によりITプロジェクトを支援すると。「ITプロジェクト提案のランク付け」といったアイデアも見られます。韓国の電子政府法のように、電子政府実現へのコミットメント(宣言・約束)として、法律による支援は有効です。マイナンバー法も、そうした役割を期待されているのですが、どれだけ効果を発揮できるかは不安もあります。

NBDCヒトデータベースについて(PDF)
http://www.mhlw.go.jp/file.jsp?id=145975&name=2r9852000003705a.pdf
ヒトに関する多様なデータを受け入れ予定(配列、画像、疫学…)、受け入れるものは(再利用できる)データセットおよび付随情報、公開が予定されるもの限定、提供者との協議による公開レベル分けなど。
関連>>第6回疫学研究に関する倫理指針及び臨床研究に関する倫理指針の見直しに係る合同会議
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000036zy0.html

平成25年度 語学指導等を行う外国青年招致事業(JETプログラム)の概要
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01gyosei05_02000045.html
外国語指導助手のような中途半端な方法は、子供たちの英語能力の向上に寄与しなかったのだから、普通に英語で授業する外国人教師を増やして欲しいのですが、そうなると「日本人教員の職を守れ」みたいな話になるのでしょうね。

公益通報者保護制度に関する意見
~消費者庁の実態調査を踏まえた今後の取組について~
http://www.cao.go.jp/consumer/iinkaikouhyou/2013/20130723_iken.html
課題として、労働者において法制度の認知が進んでいない、中小企業において法制度の認知及び内部通報制度の導入が進んでいない、内部通報制度導入事業者においても取組状況は様々であるの3点を挙げています。

法人税は投資減税より実効税率の引き下げを
http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20130723/251408/
地方は、行政サービスの資金が不足すれば、住民にさらなる負担を求めるか、それができなければ歳出をカットする、というメカニズムの働く税制にすべきだろうと。安定した税収減である固定資産税(市町村)をマイナンバーでしっかり補足して課税ベースを拡大した場合の効果は、かなり期待できるでしょう。

平成25年度における東日本大震災による被災地方公共団体への地方公務員の派遣状況(平成25年5月14日時点)
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01gyosei20_01000006.html
各地方公共団体による岩手県、宮城県、福島県、千葉県内の地方公共団体に対する地方公務員の派遣の状況について。全国の自治体から派遣された職員数は、2,056人。派遣を受けた自治体ごとの人数は、宮城県内へ1,096人(全体の53.3%)、岩手県内へ552人(全体の26.8%)、福島県内へ404人(全体の19.6%)、千葉県内へ4人(全体の0.2%)。

次世代エネルギーパーク計画を公募します(第7回)
http://www.meti.go.jp/press/2013/07/20130726003/20130726003.html
次世代エネルギーパークって、まだやってたのね。実は川崎にもあるのですが、「ザ・ハコモノ」という感じで、何とも。。
関連>>なっとく!再生可能エネルギー 次世代エネルギーパークに出かけよう!
http://www.enecho.meti.go.jp/saiene/park/
かわさきエコ暮らし未来館
http://eco-miraikan.jp/

マイナンバー制へ|Dr.和の町医者日記
http://www.nagaoclinic.or.jp/doctorblog/nagao/2013/07/post-3316.html
平井たくや・自民党IT戦略特命委員長に聞く「ITが変わる、医師が変わるマイナンバー法、3年を待たずに見直す」の記事を紹介。マイナンバーを医療でも活用し、国民のメリットを最大化できるようにすることが最大の目標で、3年を待たずに、医療・介護の分野における番号利用の環境整備を急ぎたい。その一方で、医療情報のネットワークから離脱したいと考えれば、離脱する権利を持つことも重要と。

広島の事件にLINEはどうかかわったのか、3つの視点で考える
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20130722/493122/
連絡手段がLINEだっただけであり、一部で使われている「LINE殺人事件」という表現は行き過ぎだが、ネット上でのコミュニケーション手段を提供するサービスとしての社会的な立場を意識する必要はあるだろうと。LINEを初めとしたスマホ向けメッセージアプリの業界でも、何らかの防護措置が取られることでしょう。

「おもてなしの情報システム」を実現する「人間中心設計プロセス」の適用
http://e-public.nttdata.co.jp/topics_detail4/id=925
電子政府の多くの課題は公務員制度や霞ヶ関改革などの抜本的な変革なしには解決できないのですが、そこに至るまでの過程で、もっとも効果的かつ重要な役割を果たすのが「利用者中心」の考え方だと思います。政府や自治体の情報システム調達のガイドラインで、仕様書に「人間中心設計プロセス」の組み込みを義務付けるだけでも、大きな変化・効果が期待できます。
関連>>スマホ全盛時代にますます高まる「ユーザー目線を持つこと」の重要性
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Watcher/20130719/492724/

Europe 2020 — Europe’s growth strategy – European Commission
http://ec.europa.eu/europe2020/index_en.htm
EUの2020年までの成長戦略。日本の成長戦略と比較してみると、優先順位付けや絞込みがしっかり行われていて、ターゲットや目標もわかりやすいですね。重点分野は、雇用、イノベーション(研究開発)、教育、社会的包摂(共生社会)、気候・エネルギー(持続可能性)としています。
関連>>新たな成長戦略 ~「日本再興戦略-JAPAN is BACK-」を策定
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/

企業の競争力を左右する新しい労働力調達市場
http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20130722
クラウド・ソーシングは確かな脅威で、基本的には全ての仕事がグローバルな価格競争に晒されることになります。いわゆる「付加価値の高い仕事」は例外であり、その付加価値の賞味期限も短期化する傾向にあります。公務員の仕事や政府の情報システム開発等も、国内の民間企業等との価格競争で済んでいるうちは、まだまだ平和で幸せなのですね。

基礎自治体による行政サービス提供に関する研究会(第1回)
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/kisojichitai/76819.html
大都市制度の改革及び基礎自治体の行政サービス提供体制に関する答申、市町村の現況、広域行政圏施策・定住自立圏構想、地方中枢拠点都市、検討課題など。地方交付税頼みの体制を変えないことには、改革の必要性も危機感も希薄なままで、シェアードサービスさえ実現できないでしょう。

ラーメンはサンドイッチの“仲間”。 だから世界で愛される
http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20130724/251476/
ラーメンは、食べる人の好みに応じて、どんな食材でも、乗せたり挟んだりできる料理「プラットフォーム・フード」である。スープの味やトッピングなどを工夫することで、日本人だけではなく、海外の異なる味覚を持つ人たちにも柔軟に適応することができると。日本の電子政府や電子自治体も「プラットフォーム・フード」になれると良いのですが。。

スマホの不正アプリで逮捕者、「the Movie事件」以降続く個人情報の詐取
http://www.nikkeibp.co.jp/article/news/20130725/359261/?ml
「特定電子メール法違反」の容疑で逮捕されているのがポイントでしょうか。「不正指令電磁的記録(ウイルス)保管・供用」の立件が期待されるところ。スマホアプリによる個人情報データの抜き取りは、法整備も含めた対応が急務と思います。

あと3年で世界が変わる…モバイルの系譜
http://www.nikkeibp.co.jp/article/news/20130725/359229/?ml
今後の電子政府サービスでは、「提供する」ことよりも、「必要な人に確実に届ける」ことがより重要であると再認識されるようになるでしょう。その意味では、個人とダイレクトに繋がるモバイル端末が「主」になることが望ましく、プラットフォームを選ばず実行できるHTML5の活用等が期待されます。

SNSは民意を代表しない!?初の「ネット選挙」採点簿
http://www.nikkeibp.co.jp/article/matome/20130725/359201/?ml
個人的にはネット選挙運動解禁による大きな変化は期待していなかったので、今回の選挙では思ったよりもネットが活用されたという印象です。今回の選挙で蓄積されたデータやノウハウは、今後の選挙に生かされると思いますが、本格的なネットの活用には、しばらく時間と経験が必要でしょう。選挙や政治広告の市場は一定の規模がありますので、関連ビジネス市場は着実に拡大しそうです。

IPv6によるインターネットの利用高度化に関する研究会
「第二次プログレスレポート」の公表
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban04_13000001.html
大手ISPを中心にIPv6インターネット接続サービスの提供が進展しており、デフォルト提供を行うISPも増えてきている一方、利用者における利用状況は未だ低調な状況。グーグルのウェブサイトへのアクセスについて、全世界の1.51%がIPv6を利用しており、日本は3.15%で世界第5位の位置付けと。