ローマ法王に米を食べさせた男 過疎の村を救ったスーパー公務員は何をしたか?

ローマ法王に米を食べさせた男 過疎の村を救ったスーパー公務員は何をしたか?
クリエーター情報なし
講談社

電子政府・電子自治体の分野でも、特に地方でスーパー公務員みたいな人がいて、極めて属人的と言いますか、すごい頑張っている個人に頼っているところがあると感じています。つまり、結局は「人」によるところが大きいと。

著者は、そのスペシャル版みたいな人で、卓越した企画力・行動力・根回し力などで、最終的には人を動かし、地域を動かしていきます。

本書の良いところは、読んでいてとっても楽しいこと。

ものすごく大変なことでも、悲壮感が無いので、なんだか自分でもできるんじゃないかと錯覚してしまいます

電子政府やマイナンバーの話をしていると、「色々と難しいよね」となり、最後は愚痴みたいになってしまうことが多いのですが、無理やりにでも最後は明るく楽しい話で終わらせるのが良いと思っています。

著者が、住職で日蓮宗のお坊さんであることも、興味深いところです。

日本人と言うのは、なんだかんだ言っても仏教の影響を多く受けています。田舎にお墓がある人は、本人が意識していなくても、仏教徒なんですよね。

なので、お坊さんが仏教にちなんだお話しをしてくれると、妙に納得してしまうというか、感覚的にすっと頭に入ってくるのではないでしょうか。

著者が実際にどんなことを行ったかは、本書を読んでもらうとして、電子政府のヒントになりそうなことを、いくつか挙げておきましょう。これらは、私自身の反省を大いに含んでいます。

・村を人間に例えてみる

全体最適を考える上で、大切な考え方。私も、解剖学や運動生理学が好きなのですが、体全体から細胞レベルからまでを行ったり来たりすることで、全体最適を考える癖をつけると、けっこう楽しいです。

・目と耳から入った情報によって心が動く

これは色んな捉え方があると思いますが、「無駄な情報を省いて、ポイントを伝える」のは、けっこう有効です。あれもこれもと、ついつい欲張ってしまうのですが「本当に必要なものって何だろう」と、事あるごとに立ち止まって再確認していくと、電子政府で自分が本当に伝えたいことや実現したいことが見えてきます。

・お金がかからなくてもできることを考え実践する

ちょっと視点を変えれば、電子政府の分野でも、ほとんどお金をかけずにできることが、けっこうあります。「お金をかけずにできること」が「お金が無いからこそできること」で、実はものすごく重要だったりします。

・小さい成功を実感して、大きな成功に繋げる

これもよく言われるのですが、電子政府ではなかなかできません。すぐに何千万、いやいや、うん十億円ぐらいの話に膨らんでしまいます。電子政府をギャンブルではなく投資と考えると、大穴狙いは避けるべきです。

電子政府サービスでも、ハードルの低いサービス(面倒な準備をしなくても使える)が大切と言われますが、成功のハードルも低い方が良いのですね。「あ、これなら自分でもできそう」と思えるぐらいで、実際にやってみると「あ、やっぱりできた」とか、失敗しても再チャレンジすればできるぐらいのハードルが良いでしょう。

・外への情報発信で、外部から褒めてもらう

本書では、「身内の良いところは、なかなか見えてこない」といった指摘がありますが、確かにその通りですね。日本語ボランティアをしている関係で、教育関係の書籍や研修に触れる機会があるのですが、基本的に人間は「褒められて伸びる」みたいです。他人にどう見られるか、認知されるかが、本人のやる気やモチベーションに少なからずの影響を与えると。

日本の電子政府を良くしていくには、「スーパー公務員」までいかなくても、「プチスーパー公務員」がたくさん必要です。

今後の電子政府戦略を考える際は、「プチスーパー公務員」が育つ環境や仕組みづくりを考え、重要施策として組み込みたいものです。