住民基本台帳を基礎とした行政機関の個人情報管理ネットワーク、番号制度の導入前と後

社会保障・税一体改革成案(PDF)社会保障・税番号大綱(案)が政府・与党で決定され、番号制度もいよいよ現実味を帯びてきました。両案については、別途コメントしたいと思います。

今回は、ちょっと視点を変えて「住民基本台帳を基礎とした行政機関の個人情報管理ネットワーク」について整理してみたいと思います。

現在は、こんな感じになっています。


つまり、現在でも、住民票コードや4情報により組織横断的な名寄せやマッチングは、論理的には可能となっています。ただし、各情報は分散管理されてアクセスも制限されているので、現実的には勝手な名寄せ等がほぼできない状態です。

また、現在でも、法令等で認められた名寄せは、紙書類や電子データが混在した形で行われています。ところが、4情報のバラツキや住民票コードの利用制限等により、適法な名寄せ処理に時間がかかっています。より効率的な名寄せを実現するためには、「4情報のバラツキをなくす」「住民票コード等の共通識別子を使う」「電子データの活用を促進する」「業務の見直しを行う」などが有効でしょう。

現在のシステムを有効活用するとすれば、住民票コードを既存番号と紐付けして行政内部の事務処理(バックオフィス)限定で使うのが良いと思います。政府が検討している番号制度では、

”「番号」は「民-民-官」で広く利用される「見える番号」であることから、個人情報保護の観点から、これを直接、個人を特定する共通の識別子として用いてはならないこととする。”

としています。言い換えれば、「官-官」限定で利用されるのであれば「個人を特定する共通の識別子」として用いて良いように思えます。「官限定で利用されてきた住民票コードについては特に大きな問題が起きていない」という実績もあります。

住民票コードを「官-官」限定で使えば、「民-民-官」で広く利用される既存番号も変更不要でそのまま使えます。既存番号は住民票コードと紐付けられているものも多いので、番号制度で最も大変と言われている「既存番号との紐付け」負担も軽減します。住民票コードは「見える番号」なので、紙でも電子でも使えます。電子で使う時だけ暗号化しても良いでしょう。

番号を新たに作る場合(納税者番号など)や既存番号を分野別に統合する場合(社会保障番号など)は、既存の「見える番号」と同じように扱い、住民票コードと紐付けしておきます。イメージは、こんな感じです。

問題なのは、住民票コードが自由に(理由無く)変更できることです。住民票コードについては、変更を制限する方が良いでしょう。これは番号制度を導入する場合にも言えることです。

次に、「住民基本台帳を基礎とした行政機関の個人情報管理ネットワーク」が番号制度導入により変化するのか見てみましょう。

まず、「情報保有機関が保有する基本4情報の住基ネット基本4情報との同期化」により、4情報のバラツキが改善されます。そのため、4情報による名寄せやマッチングが(論理的には)しやすくなります。ただし、各情報の分散管理やアクセス制御は変わらないので、現実的には勝手な名寄せ等は困難なままです。

法令等で認められた名寄せの電子化や効率化が進むかについては、微妙なところです。電子化・効率化については、番号導入よりも「業務の見直し」にかかっているので、今のところ予測が困難です。

他方、確定申告書や法定調書の提出手続、年金や雇用保険の資格取得等の手続などについては「情報を相互に活用する情報連携には当たらない」としたり、医療・介護等の分野での情報連携は特段の措置を認めるなど、(厳格に運用される情報連携基盤に縛られること無く)名寄せの効率化を実現できるような配慮も見られます。

「番号」の付番は苦労が予想されますが、「番号」そのものは、名寄せのための「共通識別子」としては使えないことになっています。もう少しユースケースの分析が進めば、「番号」がどのように使えるのか(使えないのか)が見えてくるでしょう。

情報連携基盤(「番号」に係る個人情報を交換する仕組み)が使い物になるかは、正直厳しいと思います。なぜなら、「使えるもの」になるための障害が多いからです。これについては、別途コメントしたいと思います。

「番号」が社会の役に立つものになるかは、「番号」を直接使える場面が増えるかどうかでしょう。別の言い方をすれば、『情報連携基盤の成否に左右されずに「番号」を活用できるか』ということです。社会保障・税番号要綱、プライバシー専門家の影で政府は笑うで書いたように、情報連携基盤が無くなっても番号制度が機能する仕組みを考えておいた方が良いでしょう。

住民基本台帳ネットワークシステム調査委員会による中間論点整理(概要)によると、「番号制度における情報連携のイメージ」は次の通りです。

うーん、何度見ても複雑怪奇。。。

「番号」に加えて「リンクコード」の紐付け作業もあるし、ホントに情報連携できるのかな