「電子政府で新しい行政サービス」の余裕など無い、「必要」に迫られた電子政府がやってくる

日経ビジネスオンラインで、次のような記事を見ました。

行政サービスも生産性革命へ! ――公共図書館運営の「リブネット」

民営化やアウトソーシングをきっかけとして、行政サービスの価値が見直されるのは良いことです。

公共サービスにおいて、「見直しのきっかけ」というのは重要です。

外部からの新しい刺激があることで、内部にたまっていた改革のエネルギーが活性化されるとも言えます。

例えば、世界の公務員の成果主義給与

成果主義の導入は、公務員のインセンティブとしては、あまり期待できない。インセンティブとしては、金銭や報酬といった経済的なものよりも、キャリア開発や仕事の内容(やりがい)に効果があることが認識されています。

にもかかわらず、面倒で手間のかかる成果主義を導入するは、「組織変革やマネジメント改革を促進する」という効果が期待できるからです。

・目標設定のプロセスが見直される
・公務員自身が、自分たちの仕事内容を見つめなおす機会となる
・職務遂行のために必要な能力(コンピテンシー)が明確となる
・必要な能力を磨くための学習やスキルの獲得に対して意欲的になる
・職員と管理職の対話(コミュニケーション)が改善される
・チームワークが向上する

電子政府も、それ自体で行政サービスが便利になるといったことだけでなく、「組織変革やマネジメント改革を促進する」ための「きっかけ」としても期待されてきたのです。

●「必要」こそ電子政府の母である

しかし、これからは、そんな悠長なことを言っていられない状況になってきます。

これからの電子政府は、「きっかけ」ではなく「必要」に迫られて実施されることになるでしょう。

少子高齢化に伴い労働人口が減少し、定年を迎える公務員が増える中で、公務員の数も減っていく。しかし、仕事の数は減らず、むしろ増えていく。しかも、使えるお金は減っていく。

参考>>平成21年度 一般会計歳入・歳出決算総人口の推移我が国の人口ピラミッド国の行政機関の定員の推移(PDF)国の行政機関の分野別定員(PDF)人口千人当たりの公的部門における職員数の国際比較(PDF)地方公務員数の推移地方公務員数の内訳事務事業の再編・整理等による主な効果(都道府県・政令指定都市)(PDF)

少ない人数と予算で、より多くの仕事をこなすためには、「電子政府で新しい国民サービスを実現!」などノンキなことは言っていられません。

ITを最大限に活用して、できる限り仕事を自動化・効率化していかないと、最低限の行政サービスさえも維持できなくなります。

日本における電子政府や共通番号の取組みを見ていると、そうした危機感など全く感じないところが、とても恐ろしい。

「必要に迫られた電子政府」がやって来るのは、そう遠くない。それは、「国民や公務員の痛みを伴う電子政府」でもあります