これからの電子政府評価、求められるのは参加意識・当事者意識

今年度の電子政府評価委員会も無事に終わりました。報告書も数ヶ月内に公開されると思います。今回は、次年度への提言として、委員会でも発言したことを書きたいと思います。

●評価指標のあり方について

これまでのヒアリングを通じてわかったのは、各省庁で電子政府に対する熱意や理解度に差があるということでした。

これは能力の差と言うよりは、各省庁で使える予算や人材、所管する業務の性質・種類・量、そうした違いから生まれる組織文化などの影響が大きいように思います。

つまり、各省庁の電子政府・電子申請進捗度に、現在地点で差があるのは確かなのだけど、そもそもスタート地点から違っていたり、ハンデを負わされてのスタートだったりしたわけです。

とは言え、能力に差があるのも事実。

とくに、「利用者とのコミュニケーション」が下手だと、利用率や満足度に大きな差が出てきます。

伸びない利用率に悩んでいる省庁は、お金をかけてシステムをいじくる前に、「利用者とのコミュニケーション」について、腰を据え時間をかけて見直してみると良いでしょう。

さて、これまでの評価指標は、トップダウンで「オンライン化率」や「オンライン利用率」を決めて、全省庁に一律に課するというものでした。

これはこれでわかりやすくて良いと思いますが、個人的には、各省庁や現場の職員といったボトムアップからの評価指標を見てみたいと考えています。

「これなら行政サービス向上に繋がる」「国民に利便性を実感してもらえる」という指標を、各省庁や現場に考えてもらい、提案してもらうことで、より実状にあった指標を策定できるかもしれないと。

電子政府において「参加意識・当事者意識」は大切な要素ですが、国民だけでなく行政にもそうした意識を持っていただけるような施策が必要なのではないかと思います。

「ボトムアップからの評価指標」は行政職員だけとは限りません。

利用者が提案する指標、ベンダーが提案する指標など、より多くの人たちが「参加意識・当事者意識」を持ってくれれば、より有効な評価指標が出てくることでしょう。

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●評価の仕方について

「オンライン利用率」といった総合的な達成度に加えて、各省庁あるいは各サービスにおいて、前年度比で、どの項目がどのように良くなったかという点を、より積極的に評価し、成果として認め、わかりやすく明示して欲しいと思います。

先に述べたようにスタート地点やハンデが異なる省庁を比較しても、あまり公平ではありません。「その省庁が、どんな目標を立てて、どう変わったのか」を見ることが必要と思います。

また、他の先進国では例がありますが、電子政府サービスやオンライン行政サービスの中から、優秀なものを選び表彰するといった試みがあっても良いのではないかと思います。

サービスとして利用者の評判が高く、利用件数も多いもの。利用率の低迷で停止となったが、他のサービスと統合することで、新たな利用者を獲得しているもの。SaaSやオンデマンドサービスを利用することで、コストを大幅に削減したもの。などなど。

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最近では、少しずつですが、非常に便利で、利用者が本当に喜んで使っている電子政府サービスが出てきています。

そうした優れたサービスについては、積極的に高く評価し勇気付けることで、電子政府を実際に考え作り運営している人たち(行政職員、ベンダー、利用推進者など)に元気を出してもらう。

その元気から、より優れたサービスを生み出してもらえるようになることが、「評価のための評価」にならないためにも、大切なことと思います。

まだまだ未熟な電子政府の評価であり、1年に1回のんびりペースではありますが、これからも確実にPDCAを回していけるように頑張りたいと思いますので、皆様のご協力を宜しくお願い致します