希望の構想―分権・社会保障・財政改革のトータルプラン、まだ本当の痛みを知らない日本

希望の構想―分権・社会保障・財政改革のトータルプラン

岩波書店

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地方分権改革の道程、体系的な社会保障制度改革、税制改革の将来構想、資産・負債管理型国家の提唱という4つの柱で提案する政府・社会のデザイン。

本提案のベースは、シュムペーター(Joseph Alois Schumpeter)にあるようですが、高齢化先進国であるスウェーデンの政策を参考にしながら、日本型の解決策を提案しています。

内容的には、「なるほど」と納得できるものが多いですね。

「日本が、この提案を実行できるか」と問われれば、「うーん」とうなってしまうのが、日本人としてちょっと寂しい。。

その理由は、北欧教育の秘密―スウェーデンの保育園から就職まででも触れましたが、日本は、まだまだ幸せな国で、スウェーデンやイギリス、あるいはブラジルのように追い詰められていないからです。

つまり、肝心の国民が、色々と不安を感じつつも、「まだ大丈夫でしょ」「少なくとも自分が生きているうちは年金暮らしでいけるでしょ」といった感じで、「本当の必要」に迫られていないということです。

振り込め詐欺のニュースを見て、作者の友人は「それにしても、お年寄りは、振り込むだけのお金をよく持っているなあ」と。

それに対して、「確かに」と答えた作者。。。

昨年の4月から今年の3月まで、作者が住むマンション管理組合の理事長をしてました。

住民の高齢化が進み自主管理が難しくなっており、住民からの要望も頂いたので、現状調査に基づく将来予測を提示し、住民アンケートも実施して結果をまとめ配布した上で、事務管理の委託等を含めた改善策を提案しました。

結果的には、多くの住民の賛同を得ることができ、全ての提案が可決されました。

しかし、一部の方は「今まで自主管理でやってきて、特に大きな問題もなかったのだから、まだ今のままで良い」と主張されてました。

こうした主張は、十分に理解できるものです。

「今まで長年やってきたことを変える」のは、誰でも不安で怖いからです。

しかし、問題の先送りを続けて限界近くまで行ってしまうと、もはやノンキに検討している余裕もなくなり、それまでのツケが一気にやってきます

日本は、色んな意味で「まだまだ大丈夫」で、食べ物に困ることもなく、選ばなければ仕事もあります。不十分と言われながらも、政府による生活保障もあります。

そんな日本が本気モードになることは、なかなか難しいと思います。

もしあるとすれば、それは強力なリーダーシップを持った政治家が現れ、多くの国民から支持を得られた場合なのでしょう。