福祉の公共哲学 (公共哲学叢書)

福祉の公共哲学 (公共哲学叢書) 塩野谷 祐一

世界に類を見ない急速な高齢化を迎える日本にとって、福祉国家・福祉社会の「制度」と「理念」を考えてみることは有益ですね。

日本語ボランティアをしていると、「利己(自分のためにする)」と「利他(他人のためにする)」について考えさせられます。

人間の行動には、常に「利己」と「利他」が含まれていて、その配分や割合が行動や人によって変わります。

ボランティアという行為は、どちらかと言えば「利他」よりも「利己」の割合が大きいのですが、実際にはそれを理解していないボランティアが多いようです。

日本語ボランティアで言えば、「外国人のため」と強く訴える人をよくよく観察いてみると、主張していることや行動は、自身の自尊心や自己実現といった欲求を満たすためであったりします。

逆に、「自分のため」と明確に認識している人の行動が、結果的には他者(外国人だけでなく、他のボランティアにも)にもより多くの利益をもたらしたりします。

日本の福祉には、どの程度の「利己」と「利他」が割合として適当なのか、どちらに訴えかけていくのが効果的なのか。。本書から、そんなことを考えさせられました。

また、本書でも取り上げられている「他人をケアしたい欲求」は、人間だけでなくチンパンジーなど他の霊長類にも見られるようで、なかなか興味深いところです。この欲求を上手に刺激することで、より住みやすい社会を実現しやすくなるかもしれません。

「コミュニティ」という視点も面白いですね。

グローバルでボーダレスな社会になればなるほど、自分一人で生きていくことが困難となるので、相互扶助やコミュニティが力を発揮するようになるでしょう。

一昔前と異なり、自身が参加できるコミュニティの数も増え、選択肢も増えてきました。

町内会に参加する人が少なくなる一方で、リアルかバーチャルかに関らず、大小様々なコミュニティ(家族、趣味の集まり、専門家チームなど)が活動の場を広げています。

こうした状況においては、魅力や必要性を感じられない強制参加のコミュニティは嫌われ、参加する人も少なくなるでしょうね。