電子申請システムのコスト、本当はもっと高い

電子政府・電子申請サービスを利用する側(国民、企業等)のコストについては、以前「電子政府・電子申請サービスにおける利用者コスト」で整理しました。今回は、サービス提供者である行政のコストについて整理してみましょう。

箱物行政よりヒドイ、使われない電子申請は今すぐ止めるべきで紹介しましたが、政府の調査により「申請1件当たりの経費」が明らかにされています。

今までは、こうした情報が全く公開されていなかったことを考えると、非常に良い傾向と言えます。しかしながら、これではまだまだ不十分なのです。

なぜなら、現在の計算方法は、

申請1件当たりの経費=年間運用経費/年間利用件数

となっており、経費のほんの一部しか計上されていないからです。

●電子申請の本当の経費

電子申請システムには、「年間運用経費」以外に、次のような経費があります。

1 人件費

電子申請システムで1件処理するのに、いくら給与をもらっている公務員が、何分・何時間働いているか。ということです。

公務員の時給の目安としては、
750万円(年収)/230日(年間稼働日数)/8時間=約4076円となります。
公務員を働かせると、一分あたり67円のコストがかかります。

2 減価償却費

電子申請システムを作るのにかかった費用です。電子申請システムの構築費用は、数億円から数百億円と様々です。

20億円かけて作ったシステムを5年で償却するとしたら、年間4億円の費用が発生することになります。

最近、その重要性が高まっている「支援系業務」もシステム構築費用に含めておきましょう。

3 調達費用

システムを調達するためには、入札の準備、契約等の作業が必要で、全て費用となります。こうした間接費については、現在の電子政府ではほとんど考慮されていません。

調達費用は、公務員やCIO補佐官等の人件費、設備費(電子入札システムの維持費など)が含まれます。

4 広報・宣伝費(販促・営業費)

電子申請システムを国民に利用してもらうために、政府は様々な広報活動を実施しています。電子申告などは、有名タレントや女優を起用し、テレビやインターネット等のメディアを使っており、その費用は億単位でしょう。

広報・宣伝費についても、全く公開されておらず、その効果についても検証されていません。

利用者へのインセンティブとして提供されている「税金の控除・減額」や「手数料の割引」も販促・営業費用です。インセンティブ費用は莫大で、利用率によっては数百億円から数千億円にもなります。

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今後は、電子政府・電子申請の本当のコストを明らかにすると共に、紙申請との比較ができるようにすることが必要です。

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