エストニアのeヘルスと医療情報システムの未来について

2018年2月3日(土)北海道大学クラーク会館で開催された第16回日本医療情報学会北海道支部学術大会の講演資料を少し修正追加したものです。

エストニアのeヘルスについてお話しするのは、2017年7月12日:国際モダンホスピタルショウ2017 以来です。

1時間でどこまでお話しようか迷ったのですが、学生さんや若い研究者の方も多かったので、未来志向の少し哲学的なところまでを含めました。どこまで伝えられたかは、悩ましいところです。。

私自身、医療は専門外で、あくまでも電子政府の専門家という立場からのお話です。

電子政府と言うと、その目的は「行政事務の効率化」「住民サービスの向上」「オープンガバメントによる市民参加」といったものが挙げられますが、現在の私においては「電子政府が目指すのは、より多くの人々を幸せにすることである」となっています。

行政からもITベンダーからも完全に独立している私の立場として、実現可能性やマネタイズといったものから離れ、少し変わったより広い視点から電子政府を見ることが、非常に重要と考えています。

住民はもちろん、公務員の皆さんも幸せになり、その幸せが家族や友人・知人など周囲の人へと広がり、社会全体の幸せを形作っていくために、公益性・公共性の高い電子政府の役割があるということです。

社会全体の幸せですから、日本国内にとどまらず、エストニアなど諸外国とも相互に良い影響を与え合っていくことが求められます。

エストニアのeヘルスを、日本の多くの方々に知っていただくことは大変嬉しいことであり、今回のような場にお招きいただき感謝しています。

その一方で、「いつまで、こうした話を日本でしていくのだろうか」という寂しさもあります。

エストニアのeヘルスが確立したのは2008年頃で、最も遅い電子処方箋も2010年に始まっています。つまり、かれこれ10年も前の話で、使われている技術も特に最新というわけではありません。日本が実現しようと思えば、少なくとも予算と技術の面で言えば、とっくの昔に実現できたことなのです。

そういったわけで、エストニアの成功要因として「迅速で合理的な意思決定」を挙げています。

そもそも人間は合理的な意思決定が苦手で、感情的な判断をしやすいゆえに、欧米ではディベートなど「迅速で合理的な意思決定」を行なうための技術を教育を通して伝える仕組みが確立しているように思います。

日本に欧米のような仕組みを確立するのは難しいですが、AIの普及により、感情や権威に流されること無く、AIが収集・整理・提示するエビデンスや選択肢に基づく「迅速で合理的な意思決定」が日本で一般化することに期待しています。

人工知能(AI)については、人とコンピュータの新しい関係として「デジタルパートナーシップ」をお勧めしています。

時が経つにつれて、人間とAIの区別が曖昧なものになっていくと思いますので、法律についても、いわゆる「AI法」や「ロボット法」といったものではなく、憲法レベルでAIの存在を前提とした法制度を確立していくことが大切と考えています。

エストニア政府の人工知能(AI)についての考え方では、「AIに対して法的人格を与える」というシナリオの可能性にも触れています。私自身は、「将来的にAIが人間から独立して社会経済活動を行なうようになり、その法的責任もAI自身が負うことになる」といったシナリオをできるだけ早い段階で具体的に策定し、法律に落とし込んでいく必要があると考えています。

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