次世代電子行政サービス基盤等検討プロジェクトチーム、利用者あってこそのイベント

次世代電子行政サービス基盤等検討プロジェクトチーム(第1回)」が開催され、配布資料も公開されました。事務局(庶務)は、総務省の協力を得て、内閣官房(情報通信技術(IT)担当室)が処理すると。

「次世代電子行政サービス(基盤)」とは、「IT新改革戦略政策パッケージ」や「重点計画-2007」に基づき提唱されているもので、

・国・地方の枠を超えた電子行政窓口サービスの展開
・フロントオフィスとバックオフィス間の連携
・バックオフィス相互間の連携
・民間手続との連携
・様々な行政手続を基本的にワンストップで簡便に行える

などの実現を目指しています。

また、「次世代電子行政サービス基盤」の標準モデルについて、2010年度を目途として構築することが予定されています。

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検討内容は、
1)利用者視点に基づく行動フロー分析・ニーズの把握
2)府省間、国・地方間のバックオフィスの連携
3)国と地方公共団体の情報システムのデータ標準化
4)次世代電子行政サービス基盤のグランドデザインの策定
5)次世代電子行政サービス基盤の標準モデル等の構築
6)上記検討事項に関連して検討、調査等を要する事項

となっています。

言い換えれば、現在の電子行政サービスの課題として、上記検討内容が存在するということ。特に、「グランドデザイン」はしっかり描いておきたいですね。

プロジェクトチームには、「ワーキンググループを置くことができる」となっており、実際の調査分析や構築の作業は「ワーキンググループ」が中心となって行われるのでしょう。

●イベントの前に、まずは「利用者が誰なのか」を

次世代電子行政サービスについては、作者も政府や民間企業から意見を求められることがありますが、その際に「どんなイベントや手続を対象とするのが良いか」と聞かれます。

既にこの時点で、「利用者の視点」は失われてしまっていると言えるでしょう。

例えば、「結婚」というイベントでも、
・学生結婚
・20代後半で社内結婚
・40代で子供ありの再婚
・70代でリタイア後の再婚
と色々あります。それぞれ結婚に伴う心配や悩み事も違えば、必要な役所の手続も変わってくるでしょう。

さらに、「結婚」に伴って、「引越し」「マイホーム購入」といった他のイベントと繋がっていたりします。

「起業」の場合でも、
・学生起業
・脱サラ起業
・企業内ベンチャー
・投資家(起業家に投資したい人)
など、様々な利用者を想定できます。

企業が主な利用者となる「源泉徴収・年末調整」の場合でも
・零細企業
・IT関連の中小企業
・工場や現場作業の多い企業
・ITリテラシーの高い企業
となれば、企業によって最適なサービスも違ってくるでしょう。

つまり、「どんなイベントや手続を対象とするのが良いか」の前に(少なくとも同時進行で)、「利用者が誰なのか」を整理しておく必要があるのです。

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●「利用者視点」の導入は、お金も手間も時間もかかる

プロジェクトチーム(第1回)配布資料(事務局提出)でも、海外の事例を紹介(カナダ、イギリス、韓国)していますが、そこで共通することは、
・じっくり利用者と向き合い
・お金や時間をかけて調査・分析を行い
・日々の改善を怠らない
ことかと。

関連>>“住民視点”のサービスは,カナダの電子政府に学べ:ITpro日本の社会保障制度は、なぜ分かりにくいのか:ITpro主な検討課題について(PDF)

日本の電子政府でも、本気で「利用者の視点」を導入したいのであれば、体制や予算について、それなりのものを用意して、中長期の視点で取組む覚悟が必要です。

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オンライン手続の利用が進まないと言われる「個人」については、「ペルソナ」の導入なども有効でしょう。

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●具体的なサービスのイメージ、利用者の行動を考えよう

政府のポータルサイトを利用する場合、利用者が欲しいサービスにたどり着くまでの経路を考えておきましょう。もちろん、考えるだけでなく、実際にユーザーテストを行い、利用者の行動を観察・測定する必要があります。

1)利用者大分類>>分野・イベント分類>>欲しいサービス

例:ビジネス>>起業>>会社設立手続

このように、すんなり欲しい情報にたどり着けるケースは、例外と考えた方が良いでしょう。

「会社設立手続」にたどり着いた後は、
・情報提供(調べる、理解する)
・シミュレーション(検討する)
・オンラインまたはオフライン申請(実行する)

といった機能が必要になってきます。

2)利用者大分類>>利用者への質問>>最適なサービスの提示

例:市民(暮らし)>>引越し>>質問>>回答>>最適なサービスの提示

多くの市民にとって、役所の手続は非日常的な行為であり、「自分にとって、どんな手続やサービスが必要なのかわからない」となるのは、普通のこと言えましょう。

そんな時、役所の窓口に行って相談する感覚で、わかりやすい言葉による質問に回答していくと、最適なサービスを提示してもらえる。となれば嬉しいはず。

一部自治体では、これに近いものを提供しています。

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3)利用者大分類>>人気コンテンツ>>欲しいサービス

例:トップページ>>人気コンテンツ一覧>>学校の給食献立

各省庁や自治体サイトには、人気コンテンツがあります。

わかりやすい言葉で、トップページや各ページの見やすいところに、人気コンテンツのベスト5ぐらいを表示しておけば、利用者の情報を探す手間を省くことができるでしょう。

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そのためには、自分たちのサイトについて
・誰が利用するのか
・どんなコンテンツがあるのか
・どれが人気があるのか
・どんな機能があるのか
・どんなチャネル(パソコン、携帯)で利用されるのか

などを調べて理解しておく必要があります。

この他に、Googleなどから欲しいサービスや情報に直接たどり着くケースも多いでしょう。その場合、
・自分が訪れたサイトの概要を理解できる(信頼できる)
・利用者が自分の位置を確認できる
・目的に合った次の行動を取れる
といった配慮が必要です。

「次世代電子行政サービス」については、今後もフォローしていきたいと思います。