アキ・カウリスマキ監督 過去のない男

2024年、最後に鑑賞したのはフィンランドのカウリスマキ監督の作品「過去のない男」でした。

カウリスマキ作品は、見始めるとついつい最後まで見てしまうという不思議な感じが好きです。

ジャンルとしては、「ちょっぴり社会派のロマンスコメディ」になるのかな。

主人公は、暴漢に襲われて(絶対死んでるだろうってくらいボコボコにされる)頭部に傷を負ったため、記憶喪失になってしまうのですが、名前も覚えていないので、仕事を見つけるにも苦労するという描写があります。職安に行っても、名前もわからないと言うと、けんもほろろに門前払いされて福祉局への紹介もできないと言われてしまいます。

北欧諸国の一つでエストニアとも近いフィンランドは、個人番号制度が普及しているのですが、自分の名前も個人番号も覚えていない、身分証明書も無いという状況では、身元確認ができないのです。

あくまでも映画の中の話なので、実際には役所もここまで不親切ではないでしょうし、顔写真や医療データ等で個人を特定することができると思いますが、緊急時のことを考えると公的データベースに住民の生体情報を登録しておくことは必要だなと思いました。例えば、警察署等へ行って指紋で照会すると、自分が誰なのかわかるといった仕組みです。

本作では、ひょんなことから主人公が誰なのかが判明しますが、「自分が誰なのか」というのは小説や映画では、よく使われるプロットです。これも、国によって描写が変わってきますが、ダン・エイクロイド主演の米国作品「コーン・ヘッズ」では、宇宙人夫婦が勤務先で社会保障番号を聞かれて「無い」と答えると、「(きっと、不法移民なのね)はいはい、大丈夫よ」みたいな対応をされるシーンがありました。