つぶやき電子政府情報(2014年10月13日):日本の電子政府はミッションに立ち返ることができるのか

日経ビジネスオンラインの革新的経営問答で、遠藤紘一政府CIO(最高情報責任者)とガートナージャパンの日高信彦社長が対談されています。
 
「わからないからわかるようにしてくれ」
内閣官房 情報通信技術(IT)総合戦略室 「ひたすら話を聞き、質問を繰り返しました」
ヒアリングのときには最初に「あなたの仕事は何」「どこがあなたの終点なのか」と聞くようにしていますと。ミッション(使命)に戻って考え直す、職員に自分で考えさせる、自身の役割を再確認させるなどの手法は、ドラッカーの「非営利組織の経営」や「非営利組織の成果重視マネジメント」を思い出させます。遠藤政府CIOご自身が語っているように、本当の成果が問われるのはこれからですね。
 
電子政府サービスでも、行き詰った時、失敗した時こそ、原点に立ち返り「誰のための、何のためのサービスなのか、何を目指すのか」を再確認することが大切です。
 
電子政府が、本来のミッションに立ち返り、大穴狙いのギャンブルみたいにならないよう、政府CIO制度によるITガバナンスが求められますが、そこにも限界があるでしょう。
 
ドラッカー名著集 4 非営利組織の経営
P・F. ドラッカー
ダイヤモンド社

 

非営利組織の成果重視マネジメント―NPO・行政・公益法人のための「自己評価手法」
P・F. ドラッカー
ダイヤモンド社

 

関連して気になったのが、次の二つの記事・情報です。
 
人事・給与システム:大規模シェアード型府省共通業務情報システムの開発――ユーザ参画型の業務要求定義から――
 
これを読んで、以前書いた「技術とお金があり過ぎた日本の電子政府」が繰り返されていることに、大変失望しました。
 
人事・給与システムと行政改革に踏み込めない電子政府」で書いたように、私の理解では、人事給与システムの問題は、「行政改革の伴わない電子政府の限界」が露呈したものです。
 
府省共通システムは、「コストの共同化」であり、いわゆる「割り勘効果」を狙ったものです。政府共通プラットフォーム(PDF)のイメージ図を見てもわかるように、「割り勘効果」が出やすいのは、施設・設備・ハードウェアといった下層の部分です。なぜなら、下層部分は共通化・共同化しやすく、実現・調整・開発コストが少ないからです。
 
 
ところが、上位層の業務プログラムは省庁の利権や縄張りと直結しており、「実現・調整・開発コスト」が、簡単に「割り勘効果」を上回り、初めから赤字を約束された事業となる可能性が高いのです。その典型が、「人事・給与システム」なのですね。
 
通常は、「人事・給与システム」の「割り勘効果」を厳密に査定して、「実現・調整・開発コスト」を慎重に見積もった上で、これは「投資すべき事業ではない」「成功したとしても効果は少ない」「優先度は低い」となり、投資が見送られることになります。投資のタイミングが来るとすれば、それは公務員制度改革による人事の一元化が実現する目途が立った時でしょう。
 
 
もう一つは、ICT街づくり推進会議 共通ID利活用ワーキンググループ(第4回)
今後の進め方、放送・通信分野等における公的個人認証サービス民間活用実証に係る請負調達仕様書、公的個人認証サービス利活用推進事業(素案)など。平成25年度補正予算、平成27年度予算要求、関連する研究会や実証事業など、マイナンバー制度の本格開始に先駆けて、公的個人認証サービスに係る税金投入が始まっています。
関連>>個人番号を活用した今後の行政サービスのあり方に関する研究会
 
 
マイナンバー関連法である公的個人認証法の改正により、ID・パスワード方式に変わるインターネット上の安全なログイン手段として、公的個人認証サービスに「利用者証明用電子証明書」の仕組みが創設され、これまで行政機関等に限定していた署名検証者の範囲を拡大し、総務大臣の認定する民間事業者を追加することになっています。
 
総務省の「ICT街づくり推進事業」では、複数サービスを連携する「共通ID」として公的個人認証サービスを採用し、大失敗した住基カードと公的個人認証サービスの汚名を何とか挽回しようとしています。
 
ここでの違和感は、「公的個人認証サービスありき」の発想です。
 
本来は、使ってもらえるサービスの提供と一定の利用者があり、そのサービスの品質向上に寄与する場合に限り、「公的個人認証サービス」の採用を検討するべきなのです。
 
オンラインバンキングのサービスがあって、その後にワンタイムパスワードの採用があるのであり、ワンタイムパスワードを活用するためにオンラインバンキングのサービスが生まれたわけではありません。
 
つまり、行政中心の発想で「公的個人認証サービスを活用するためのサービス」を考えている時点で、「利用者中心のサービス」とは違う方向に進んでおり、これまでの電子政府の失敗を繰り返す可能性が高いのですね。
 
もし公的個人認証サービスを普及させたいとしても、政府が行うべきなのは、民間サービスが採用したくなるような機能・品質を確保し、採用しやすい環境を整備(採用手続の簡素化、検証・利用料の無償化・低価格化など)することでしょう。
 
日本の電子政府が、本来の使命・ミッションに立ち返るのは、まだまだ先のことになりそうです。
 
 

 
資格取得時の本人確認事務の変更のお願い(PDF) 日本年金機構
平成26年10月より、マイナンバー(個人番号)の導入に向けた取り組みとして、日本年金機構では、新規に基礎年金番号を付番する際に、住民票コードを収録します。このため、基礎年金番号を事業主の方において確認できない場合については、資格取得届に住民票上の住所のご記入が必要となります。
基礎年金番号を事業主の方で確認できない場合は、本人確認のうえご記入いただく住民票上の住所をもとに日本年金機構で住民基本台帳ネットワークシステムへ本人照会をし、確認をします。
関連>>年金について – 従業員を採用したときの手続き   日本年金機構
 
 
Apple IDやLINEほか、まとめて分かるアカウント便覧
このシリーズ連載を読んでおくと、個人情報保護法制の見直しに関する議論を理解しやすくなるかも。
関連>>ネットは裏でつながっている
 
Digital States Survey: Which States Are the Best of the Best?
米国のどの州政府が、デジタル対応で進んでいるかと。リーダーシップでコネチカット州、エンタープライズICTと市民参加でユタ州、公安部門でインディアナ州、保健社会福祉部門でケンタッキー州など。米国の電子政府サービスは、シンプルで使いやすいのが特徴ですね。
 
ICTサービス安心・安全研究会(第4回) 平成26年9月25日
ICTサービス安心・安全研究会 報告書案を公開。消費者保護ルールの見直し・充実、通信サービスの料金その他の提供条件の在り方など。販売奨励金やSIMロック解除、モバイルサービスの料金体系などは、消費者の関心も高いですね。次の解約時には、私も乗換えを検討します。
 
「情動の科学的解明と教育等への応用に関する調査研究協力者会議」審議のまとめ
平成26年7月24日
極めて困難な状況下において、この困難を克服し、やがて、大きな成長を遂げる子供や若者達がいることにも研究者の目が向けられた。このようなストレス場面から心理的に回復する能力はレジリエンスと呼ばれ、心理学者や教育学者の重要な研究対象となり、情動の安定化とレジリエンスの養成を目標とした教育手法の開発へと応用が進んでいる。
子供の情動の発達に関して情動に関する研究者と教育関係者が、情動に関する研究情報や課題意識を共有することができ、関係者間の共通認識の上に立って、情動に係る研究の教育現場での応用や各発達の段階における学校現場のニーズを踏まえた研究が具体的に進展していくような仕組み作りが早急に必要であると。
 
郵便の不在配達通知書に記載される窓口での受取に必要な印鑑の表記
-行政相談委員意見を踏まえた通知に対する関係機関の措置状況-
郵便の不在配達通知書に印鑑に代えて署名でも郵便物を受け取れることを表記することは有益と判断する旨を平成26年9月17日に日本郵便株式会社に通知し、同年9月22日に日本郵便株式会社から回答を受領し、同年10月から使用される不在配達通知書において改善されることになったと。「印鑑に代えて署名」ではなく、単純に「署名(印鑑不要)」として欲しい。
 
公立病院改革プラン実施状況等の調査結果(平成25年度) 平成26年9月30日
対象病院:892病院(640団体)について、経営の効率化、再編・ネットワーク化に係る取組み、経営形態の見直しなどを調査。経常収支比率は25年度で99.8%、黒字病院の割合は46.4%、地方独立行政法人化は53病院、指定管理者制度導入は16病院、民間譲渡は14病院と。
 
平成25年度地方公営企業決算の概要 平成26年9月30日
平成25年度決算においては、公営企業全体の事業数、決算規模及び企業債現在高が、前年度と比較してそれぞれ減少しているが、職員数は13年ぶりに増加。建設投資額は平成11年から減少が続いていたが、2年連続で増加。総収支については、13年連続で黒字と。
 
 
平成25年度決算に基づく健全化判断比率・資金不足比率の概要(速報)平成26年9月30日
エクセルで全自治体のデータも出てますが、地域や団体間でかなり差がありますね。自分が住んでいる自治体の状況を確認しておいた方が良いかも。
・財政再生基準以上の団体:北海道夕張市
・早期健全化基準以上の団体:北海道夕張市
・財政再生団体:北海道夕張市
・財政健全化団体:青森県大鰐町
・実質赤字額がある団体は市区町村で2団体
・連結実質赤字額があるのは、市区町村で6団体
・夕張市の実質公債費比率は47.2%(都道府県平均13.5%、市区町村8.6%)
・夕張市の将来負担比率は748.7%(都道府県平均200.7%、市区町村51.0%)
・経営健全化基準以上の公営企業会計は18会計
・資金の不足額がある公営企業会計は60会計
関連>>平成25年度都道府県普通会計決算の概要(速報)
平成25年度市町村普通会計決算の概要(速報)
地方債現在高は、前年度と比べて 3,392億円増(0.6%増)の55兆 2,670億円、債務負担行為額は 7,682億円増(10.3%増)の8兆 2,071億円、積立金現在高は9,266億円増(7.3%増)の13兆 6,292億円に。
 
 
第1回地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会 平成26年9月18日
各都道府県が、2015年4月以降に地域医療構想を策定するにあたり、策定方針となるガイドラインを作成することを目的に開催。来年1月を目途にガイドラインなどをとりまとめる予定と。検討会で議論すべき論点及び今後の進め方、今後の地域の医療提供体制の方向性、構想区域の設定の考え方、二次医療圏の状況など。
地域の医療提供体制の方向性には、地域包括ケアシステムを支える病床の整備や在宅医療の充実、認知症高齢者、単身や夫婦のみの高齢者世帯の増加を踏まえた、地域の中で医療と介護サービスが一体的に提供される体制の構築などを含みます。
関連>>医療情報の活用について(PDF)
レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)、国保データベース(KDB)システム、DPCデータに係るデータベース構築計画(平成26年度~)など。
 
 
 
生体認証イヤホンが目立たず本人確認?
インテルが米SMSオーディオと共同で開発したBioSportは、フィットネス愛好家向けにデザインされたイヤホンで、耳の内部で心拍や血圧などのデータを収集すると。音楽を聴きながら運動する人は多いので、フィットネス用途で使えますが、確かに生体認証でも使えそうですね。
関連>>SMS AudioとIntel、心拍計機能搭載の防水イヤフォン「BioSport」
 
日立が開けたパンドラの箱 年功序列廃止の波紋はどう広がるか
自ら率先して、日本企業がグローバルで戦うために適した雇用環境を作り出そうという気概を感じざるを得ない。城繁幸氏は「年功序列廃止は管理職だけでなく一般社員にも拡大するはず。他の産業にも同じ流れが波及し、終身雇用制度が終わる契機となる。日立の経営陣や人事部がそこまで意図しているのかは不明だが、パンドラの箱を開けてしまったのは間違いないでしょう」と。
 
米国デラウェア州でデジタルコンテンツが相続可能に(PDF)
デジタル資産には,電子メ-ル,デジタル写真,SNSのアカウント,クラウドストレージ,診療記録,コンテンツのライセンスなども含まれると。「 忘れられる権利」で削除された記事をWikipediaが公表し、「欧州では一般への説明や,確かな証拠,司法審査,不服申し立ての手続きもないまま,正確な検索結果が消えつつある。インターネットは不都合な情報を簡単に消せる場になっている」と。
 
すかいらーく再上場の軌跡 筆頭株主の米投資会社が語る二人三脚経営
日本人のリソースを生かしつつ、グローバルでの潤沢な資金力も生かせるのがベインの強みと。日本企業が海外で多くの企業買収を進める一方、日本企業に対する海外の投資ファンドは全てハゲタカみたいな感じで偏向報道(朝日新聞など)されますね。大切なのはその中身であって、すかいらーくのような事例が増えれば、少しはイメージが改善されるかな。