つぶやき電子政府情報(2014年9月22日):マイナンバー制度の情報提供ネットワークシステムの位置づけ

「情報提供ネットワークシステムの運営に関する事務を対象とする特定個人情報保護評価書(案)」に関する意見募集
平成26年9月18日 総務省、内閣官房
マイナンバー法第27条第1項の規定により、特定個人情報ファイルが取り扱われる前に、個人のプライバシー等に与える影響を予測・評価し、かかる影響を軽減する措置をあらかじめ講じるため、「情報提供ネットワークシステムの運営に関する事務を対象とする特定個人情報保護評価書(案)」を作成し、意見募集を実施しています。平成26年10月17日(金)まで。
 
情報提供ネットワークシステムは、コアシステムとインターフェイスシステムで構成され、コアシステムには、(1)符号の生成、(2)情報連携の媒介、(3)情報提供等の記録の管理、の3つの機能があります。
 
情報提供者が情報照会者に特定個人情報を提供する際は、コアシステムを介さず、インターフェイスシステムを介して行うので、コアシステムに特定個人情報が蓄積されないようにし、情報の一元管理ができない仕組みとしています。
 
 
 
 
 
しかし、情報提供ネットワークシステムは、その仕組みとして、所管する行政庁(総務省)が自治体など他の行政機関等と結託した場合、個人情報の一元管理とまでは言いませんが、かなりの情報収集ができてしまいます。その意味では、本システムの特定個人情報保護評価は、特定個人情報保護評価の中でも特に重要な位置づけとなります。
 
また、マイナンバー法では、これまで通りの紙による情報照会・提供を制限していないので、情報提供ネットワークシステムが実務上どのぐらい利用されるのか等の不安もあります。
 
番号法第19条第7号に基づき、情報提供ネットワークシステムで照会できる情報について、従来どおりメールやFAXで他の地方公共団体などに照会しても問題ないですか?
個人番号を使わずにメールやFAXで情報を照会することは、直ちに番号法に違反するものではありません。しかし、行政の効率化という番号法の趣旨に鑑みれば、情報提供ネットワークシステムを使って情報連携を行うことが望ましいと考えられます。 なお、システム化していない事務でも、情報提供ネットワークシステムで直接照会内容を確認でき、直接提供内容を入力できる機能を中間サーバーに実装することにしています。
 
さらに、「戸籍制度の見直しで行政中心の電子政府サービスにさよならを」でも解説したとおり、情報提供ネットワークシステムを情報連携基盤とするマイナンバー制度でも、全国自治体への一斉検索・照会機能が無い限りは、生活保護の不正受給を発見することができません。
 
情報提供ネットワークシステムが適切に機能して、期待通りの効果を上げるためには、制度・システムの運用後も、様々な修正や環境整備が求められることになるでしょう。
 

 
社会保障・税番号制度に係る関係法令・政省令
「別表第一の主務省令で定める事務を定める命令」が平成26年9月10日に官報公布されました。
関連>>行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律別表第一の主務省令で定める事務を定める命令案に対する意見募集結果
 
Open and Libre Office projects should reunite
スイスの連邦裁判所では、OpenOfficeを使っているようですね。日本の中学・高校でICT利用を進める際に、「ワードやエクセルが使えるように」といった考えで、高価なWindowsパソコンやタブレットを購入することがありますが、「ちょっと違うでしょ」と思います。文書の作成やデータの管理・利用ができるようになるためには、ワードやエクセルが使える必要はなくて、無料や安価な代替ソフトで十分です。それよりは、実務で使うような文書を読み解いたり、データベースや統計処理の基礎を学んだりすることに力を入れるべきでしょう。そうしないと「エクセルでキレイな文書を作成する」とかが増えるばかりと思うのです。
関連>>French ministries prove free software is viable
フランスでは、LibreOfficeが、省庁間で50万人以上のデスクトップにインストールされていると。
 
e-Gouvernement 2014 : La France se hisse au 4e rang mondial
国連の電子政府調査2014では、韓国(1位)、オーストラリア(2位)、シンガポール(3位)に次いで、フランスが4位に上昇しました。中でも、オンライン公共サービスの世界的リーダーとして位置づけられています。フランスのポータルサイトでは、個人アカウントを開設して、シングルサインオン(ID・パスワード)で各種行政サービスを利用できるようになっています。シングルサインオンは、かなり前から導入しているのですが、サービス連携が以前よりスムーズになった気がします。
関連>>Accueil Particuliers – Service-public.fr.(フランスの電子政府ポータル)
Mon service public (フランスのマイポータル)
 
 
 
Observatory of Public Sector Innovation
経済協力開発機構(OECD)が、公共部門のイノベーションを支援するポータルを開設しました。公共部門のイノベーション事例を収集・分析し、関係者の情報共有や共同作業を進めて、実践的なアドバイスを提供していくと。
 
Eurodac
EU内で亡命申請者や不法移民の管理に利用される、指紋のデータベース。EUのデータ保護指令・規則は厳しいと言われますが、その一方で、必要に応じて国を越えたデータの共有・一元化を行っています。
関連>>European Data Protection Supervisor
 
クラウド活用で患者の「たらい回し」を防げ――三重県の挑戦
Amazon Web Services社のクラウド基盤を使い、救急車に乗り込む救急隊と、急性期医療を担う医療機関の間でリアルタイムに情報を共有できるようにする。個々の救急搬送事例における「照会・搬送・診療」という一連のプロセスを定量化(視覚化)して、地域医療を継続的に改善していくための知見を生み出すツールにもなると。
 
Government Financial Reports – California State Controller’s Office
米国カルフォルニア州では、11年間に渡る1,300万の財務データを公開するオープンデータポータルを、2014年9月より開設しました。自治体の財務分析と支出チェックは、公開データの自動処理が進み、おかしな支出があれば、ほぼリアルタイムで市民や関係者に警告通知されるようになるかもしれません。
 
 
「データが売れる時代」のセキュリティ対策とは
システム部門にデータを全部預けちゃいけない。データは経営のもので、データを生かすのであれば、これをしっかり管理しなければいけないと。
 
カリスマのひらめきからイノベーション組織は生まれない
成長しつづける組織のリーダーというのは、イノベーションを歓迎し、失敗を許容する企業文化を創造しようとする。彼らは、自分のビジョンを完成させたり伝えたりすることに時間を使わずに、社員がイノベーションを起こせる“環境づくり”に注力していると。英国の電子政府の取組みは、これに近いものがありますね。
 
理由は「過去を消すため」、SNSに入退会を繰り返す10代の事情
依存しすぎるよりは、退会してリフレッシュした方がは良いと思いますが、悪いことをしたら、退会しても逃れられるものではないことは、子供たちにきちんと教えてあげた方が良いですね。
 
第9回 「選択する未来」委員会 平成26年9月12日
全国知事会からの意見聴取、主要な検討の方向性の整理、少子化対策の現状と課題など。バラマキではない「社会投資」市場の形成、一人当たりが生み出す付加価値を高める、ホワイトカラーの生産性向上、地域がメディアを持つ時代といった意見があります。
関連>>第6回 人の活躍ワーキング・グループ 平成26年9月3日
成熟社会における雇用戦略について。正規・非正規の差別が常態化しているのは厚労省の政策によるところが大きいのだから、同一労働同一賃金(職務給)は速やかに実施して欲しい。
第5回 地域の未来ワーキング・グループ 平成26年9月17日
「個性を活かした地域戦略」の推進、東京圏への一極集中の是正など。
 
 
地域における医療及び介護を総合的に確保するための基本的な方針
医療介護総合確保法規定に基づく方針。この基本方針に従って、都道府県や市町村が計画を策定し、地域包括ケアシステムを構築していくことになります。質の高い医療・介護人材の確保と多職種連携の推進、情報通信技術(ICT)の活用などの記述もあります。
関連>>地域包括ケアシステム |厚生労働省
持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律
地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律
 
まち・ひと・しごと創生本部   首相官邸
平成26年9月12日に、第1回「まち・ひと・しごと創生本部会合」を開催。人口急減・超高齢化という我が国が直面する大きな課題に対し、政府一体となって取り組み、各地域がそれぞれの特徴を活かした自律的で持続的な社会の創生を目指して設置。大都市圏等において、過密・人口集中に伴う諸問題に対応するとともに、高齢化・単身化を地域全体で受け止める「地域包括ケア」を推進すると。
 
統計からみた我が国の高齢者(65歳以上) 平成26年9月14日
「敬老の日」にちなんで、統計からみた我が国の高齢者のすがたを紹介。医療費等の社会保障支出は確実に増えるので、高齢化を強みにできるような発想の転換が必要ですね。
・高齢者人口は3296万人、総人口に占める割合は25.9%と共に過去最高
・8人に1人が75歳以上
・日本の高齢者の就業率は、主要国で最高
・高齢者のいる世帯は2000万を超え、過去最多
・増える高齢単身世帯の共同住宅割合
・50.9%が高齢者等に配慮した住まい
・交際費、保健医療への支出割合が高い高齢者世帯
・健康に気を配り、旅行などの趣味を楽しむ高齢者
・支出が収入を上回る高齢無職世帯
・高齢者世帯でも増加するネットショッピングの利用 などなど。
 
 
 
デング熱診療ガイドライン(第1版)について 平成26年9月16日
医療機関の医師がデング熱を疑う場合の対応及び治療指針を示すもので、WHOのガイドライン及びCDCのガイダンスを参考に作成。
○屋外の蚊が多くいる場所で活動する場合は、できるだけ肌を露出せず、虫よけ剤を使用するなど、蚊に刺されないよう注意してください。
○デング熱に感染しても重症化する場合はまれ。蚊に刺されてから3-7日程度で高熱のほか、頭痛、目の痛み、関節痛等の症状が見られれば、デング熱の可能性もあるため、早めに医療機関を受診してくださいと。
関連>>デング熱について|厚生労働省
 
外務省は韓国の情報戦に応戦せよ   アゴラ –
こういう場合は、経済的な関係を保ちながら、政治的にはなるべくつきあわないのが最善だが、相手が世界に嘘を広めている場合は、日本もそれを打ち消す事実を伝えるしかないと。対韓国に限らず、どんな国に対しても外交上の情報戦は必須ですが、情報戦となった場合、韓国ほどやっかいな相手はいないでしょう。長年、中国からの脅威とプレッシャーに対峙し、戦後は米ソの対立で北朝鮮とのスパイ合戦を余儀なくされ、つい最近(1987年)までは実質的な軍事独裁政権で国内の情報操作やプロパガンダ活動が当たり前で、現在もその流れを確実に受け継いでいます。こうした百戦錬磨の韓国相手に、日本がどこまで情報戦で対抗できるか、かなり不安です。日本としては、韓国と同じような戦略・戦術を採るよりは、社会貢献を中心とした中長期の視点でアジアや欧米諸国の味方を増やしていくことが有効で、事実や日本の見解と異なる主張や行動に対しては、積極的かつ公式に情報発信や異議を唱えていくことが必要でしょう。
 
人気再燃、新日本プロレス 親会社交代で売り上げ倍増 :日本経済新聞
タイガーマスク世代として、ブシロードが親会社になった新日本プロレスには注目していましたが、着実に成果を上げていたのですね。プロレスは優良コンテンツでありながら、優れた経営者が不在で、当たり前のことさえできていなかった「濡れ雑巾」みたいなもの。音楽業界でもライブで収益を生み出す流れがありますが、まだまだ可能性が広がりそうです。
 
移民の国の初等教育に見るアジアンパワー
カナダでは、幼稚園または小学校1年生から、すべての授業を公用語の一つであるフランス語で行う「フレンチイマージョン」(French immersion)があると。日本も、子供たちに英語を身に付けて欲しければ、幼稚園ぐらいから英語だけで行う授業を組み込む必要がありますね。英語の授業で英語を教える(英語を勉強する)のではなく、国語・算数・理科・社会を英語で行う(英語を使う)ことが重要。使う必要のない英語は、いくら教えても身に付くわけがありません。そうした視点に立てば、文部科学省の英語教育改革実施計画は、ひどすぎます。。
関連>>「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」について
 
財務大臣になって財政改革を進めよう ゲームコーナー 日本の財政を考える
持続可能にするためには、増税すると共に、社会保障費と地方交付税交付金を減らして、教育への投資を増額したいところ。ゲームでは地方への財源委譲ができないので、「財政改革」ではなく「行財政改革」が必要ですね。
関連>>日本の財政を考える
 
 
 
ITセキュリティ分野における国際相互承認アレンジメントが改正されました
IT製品の分野毎に、加盟国共通のセキュリティ基準及び共通の認証手順・方法を策定することになりました。
 
「ICTシニアコミュニティ形成促進プロジェクト」の協力団体を決定 平成26年9月8日
公民館等の公共施設を実証フィールドとして、高齢者のICTリテラシーの向上に資する講習会を実施しますと。これって、本当に税金使ってまですることなのかなあ。デンマークのように、「オンライン行政サービス利用の義務化」などの政策とセットじゃないと、単なるバラマキで、昔の「IT講習」と同じと思うのですが。。
 
第7回 国家戦略特別区域諮問会議 平成26年9月9日
区域計画の認定(石破議員提出資料)、規制改革事項の追加(石破議員提出資料)、国家戦略特区に関する当面の重要課題(有識者議員提出資料)など。安倍総理からは、次のような発言も。
いわゆる「岩盤規制」について、改革の突破口を開いていかなければなりません。諮問会議として、この重点事項と改革スケジュールを、「工程表」にまとめていただきたいと思います。
 
第3回情報保全諮問会議 平成26年9月10日
パブリック・コメントの概要説明、各委員からの御意見及び意見交換、特定秘密保護法施行令案・運用基準案、内閣府本府組織令の一部を改正する政令案(独立公文書管理監の追加)、今後のスケジュールなど。特定秘密保護法の施行は今年の12月上旬を予定。
 
災害対策のオープンデータ活用に盲点、浸水予測情報の8割が再利用できず
集中豪雨や堤防の決壊などによる浸水が想定される区域について、国土交通省や各都道府県が河川ごとに作成したデータのうち、フォーマットが国交省のガイドラインに準拠しているのは全体の2割にとどまると。

“つぶやき電子政府情報(2014年9月22日):マイナンバー制度の情報提供ネットワークシステムの位置づけ” に1件のコメントがあります

  1. 真善美の探究
    【真理と自然観】

    《真理》

    結論から言って、真偽は人様々ではない。これは誰一人抗うことの出来ない真理によって保たれる。

    “ある時、何の脈絡もなく私は次のように友人に尋ねた。歪みなき真理は何処にあるのか、と。すると友人は、何の躊躇もなく私の背後を指差したのである。”

    私の背後には『空』があった。空とは雲が浮かぶ空ではないし、単純にからっぽという意味でもない。私という意識、世界という感覚そのものの原因のことである。この時、我々は『空・から』という言葉によって、人様々な真偽を超えた歪みなき真実を把握したのである。我々の世界は質感。また質感の変化から、その裏側に真の形があることを理解した。そして、我々はこの世界の何処にも居ず、この世界・感覚・魂の納められた躰すなわちこの裏側の機構こそが我々の真の姿であると気付いたのである。

    《志向性》

    目的は、何らかの経験により得た感覚を何らかの手段をもって再び具現すること。感覚的目的地と経路、それを具現する手段を合わせた感覚の再具現という方向。志向性とは、或感覚を再び具現させる基盤としての目的経路の原因・因子が再び具現する能力と可能性を与える機構、手段によって、再具現可能性という方向性を得たものである。志向は複数あり、意識中にある凡ゆる感覚的対象に支配される。

    『意識中の対象の変化によって複数の志向性が観測されるということは、表象下に複数の因子が存在するということである。』

    『因子は経験により蓄積され、記憶の記録機構の確立された時点を起源として意識に影響を及ぼして来た。(志向性の作用)』

    我々の志向は再具現の機構としての躰に対応し、再具現可能性を持つことが可能な場合にのみこれを因子と呼ぶ。躰に対応しなくなった志向は機構の変化とともに廃れた因子である。志向が躰に対応している場合でも、因子の具現に対応した感覚的対象(条件)がない場合はこの志向は生じない。但し、意識を介さず機構に直接作用する物が存在する場合もある。

    《生命観》

    『感覚器官があり連続して意識があるだけでは生命であるとは言えない。』

    『再具現性を与える機構としての己と、具現の方向を決定する志向としての自。この双方の発展こそ生命の本質である。』

    生命は、過去の意識の有り様を何らかの形に変換し保存する記録機構を持ち、これにより生じた創造因を具現する手段としての肉体・機構を同時に持つ。

    生命は志向性・再具現可能性を持つ存在である。意識の有り様が記録され具現する繰り返しの中で新しいものに志向が代わり、この志向が再具現の機構としての肉体に作用して変化を生じる。この為廃れる志向が生じる。

    *己と自の発展
    己は具現機構としての躰。自は記録としてある因子・志向。

    己と自の発展とは、躰(機構)と志向の相互発展である。志向性が作用した然としてある意識(現象)から新しい志向が生み出され、この志向が再具現の機構である肉体と意識に連動して作用する。生命は然の理に屈する存在ではなく、その志向により然としてある意識と肉体を変革する存在である。

    『志向(作用)→肉体・機構』

    然の理・然性
    自己、志向性を除く諸法則。志向性を加えて自然法則になる。

    然の理・然性(第1法則)
    然性→志向性(第2法則)

    【世界創造の真実】

    世界が存在するという認識があるとき, 認識している主体として自分の存在を認識する。
    だから自我は客体認識の反射作用としてある。
    これは逆ではない。

    しかし人々はしばしばこれを逆に錯覚する。
    すなわち自分がまずあってそれが世界を認識しているのだと
    なおかつ自身が存在しているという認識についてそれを懐疑することはなく無条件に肯定する。

    これは神と人に共通する倒錯でもある。
    それゆえ彼らは永遠に惑う存在, 決して全知足りえぬ存在と呼ばれる。

    しかし実際には自分は世界の切り離し難い一部分としてある。
    だから本来これを別々のものとみなすことはありえない。
    いや, そもそも認識するべき主体としての自分と, 認識されるべき客体としての世界が区分されていないのに, 何者がいかなる世界を認識しうるだろう?

    言葉は名前をつけることで世界を便宜的に区分し, 分節することができる。
    あれは空, それは山, これは自分。

    しかして空というものはない。空と名付けられた特徴の類似した集合がある。
    山というものはない。山と名付けられた類似した特徴の集合がある。
    自分というものはない。
    自分と名付けられ, 名付けられたそれに自身が存在するという錯覚が生じるだけのことである。

    これらはすべて同じものが言葉によって切り離され分節されることで互いを別別のものとみなしうる認識の状態に置かれているだけのことである。

    例えて言えば, それは鏡に自らの姿を写した者が鏡に写った鏡像を世界という存在だと信じこむに等しい。
    それゆえ言葉は, 自我と世界の境界を仮初に立て分ける鏡に例えられる。

    そして鏡を通じて世界を認識している我々が, その世界が私たちの生命そのものの象であるという理解に至ることは難い。
    鏡を見つめる自身と鏡の中の象が別々のものではなく, 同じものなのだという認識に至ることはほとんど起きない。
    なぜなら私たちは鏡の存在に自覚なくただ目の前にある象を見つめる者だからである。

    そのように私たちは, 言葉の存在に無自覚なのである。
    言葉によって名付けられた何かに自身とは別の存在性を錯覚し続け, その錯覚に基づいて自我を盲信し続ける。

    だから言葉によって名前を付けられるものは全て存在しているはずだと考える。
    愛, 善, 白, 憎しみ, 悪, 黒。
    そんなものはどこにも存在していない。
    神, 霊, 悪魔, 人。
    そのような名称に対応する実在はない。

    それらはただ言葉としてだけあるもの, 言葉によって仮初に存在を錯覚しうるだけのもの。
    私たちの認識表象作用の上でのみ存在を語りうるものでしかない。

    私たちの認識は, 本来唯一不二の存在である世界に対しこうした言葉の上で無限の区別分割を行い, 逆に存在しないものに名称を与えることで存在しているとされるものとの境界を打ち壊し, よって完全に倒錯した世界観を創り上げる。

    これこそが神の世界創造の真実である。
    しかし真実は, 根源的無知に伴う妄想ゆえに生じている, 完全に誤てる認識であるに過ぎない。

    だから万物の創造者に対してはこう言ってやるだけで十分である。

    「お前が世界を創造したのなら, 何者がお前を創造した?」

    同様に同じ根源的無知を抱える人間, すなわち自分自身に向かってこのように問わねばならない。

    「お前が世界を認識出来るというなら, 何者がお前を認識しているのか?」

    神が誰によっても創られていないのなら, 世界もまた神に拠って創られたものではなく, 互いに創られたものでないなら, これは別のものではなく同じものであり, 各々の存在性は虚妄であるに違いない。

    あなたを認識している何者かの実在を証明できないなら, あなたが世界を認識しているという証明も出来ず, 互いに認識が正しいということを証明できないなら, 互いの区分は不毛であり虚妄であり, つまり別のものではなく同じものなのであり, であるならいかなる認識にも根源的真実はなく, ただ世界の一切が分かちがたく不二なのであろうという推論のみをなしうる。

    【真善美】

    真は空と質(不可分の質、側面・性質)、然の性(第1法則)と志向性(第2法則)の理解により齎される。真理と自然を理解することにより言葉を通じて様々なものの存在可能性を理解し、その様々な原因との関わりの中で積極的に新たな志向性を獲得してゆく生命の在り方。真の在り方であり、自己の発展と自分の理解。

    善は社会性である。直生命(個別性)、対生命(人間性)、従生命(組織性)により構成される。三命其々には欠点がある。直にはぶつかり合う対立、対には干渉のし難さから来る閉塞、従には自分の世を存続しようとする為の硬直化。これら三命が同時に認識上に有ることにより互いが欠点を補う。

    △→対・人間性→(尊重)→直・個別性→(牽引)→従・組織性→(進展)→△(前に戻る)

    千差万別。命あるゆえの傷みを理解し各々の在り方を尊重して独悪を克服し、尊重から来る自己の閉塞を理解して組織(なすべき方向)に従いこれを克服する。個は組織の頂点に驕り執着することなく、状況によっては退き適した人間に任せて硬直化を克服する。生命理想を貫徹する生命の在り方。

    美は活き活きとした生命の在り方。

    『認識するべき主体としての自分と, 認識されるべき客体としての世界が区分されていないのに, 何者がいかなる世界を認識しうるだろう? 』

    予知の悪魔(完全な認識をもった生命)を否定して認識の曖昧さを認め、これを物事が決定する一要素と捉えることで志向の自由の幅を広げる。認識に囚われ自分の願望を諦めることなく、認識と相互して願望を成し遂げようとする生命の在り方。

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