社会保障・税番号大綱案を読み解く(15)、番号生成機関で個人識別情報を一元管理

社会保障・税番号大綱案を読み解く(14)、日本で「番号」が義務とされる理由の続きです。

今回は、「番号」を生成する機関(P.41)を見てみましょう。

●番号生成機関で個人識別情報を一元管理

大綱では、「番号」生成機関について、次のような説明があります。

・「番号」は住民票コードと一対一対応する新たな番号である
・「番号」の付番は住民票コードの住民票への記載事務と円滑に連携して行う必要がある
・「番号」の重複付番を防止し、付番事務を安定的かつ確実に実施するために
・「番号」の生成を一つの主体が行うことが必要となる
・番号生成機関は、住民基本台帳法に規定する指定情報処理機関を基礎とした地方共同法人とする
・番号生成機関は、市町村長に対し、住民票コードと一対一で対応する「番号」を指定し、市町村長に通知する

「番号」生成は、「付番(新たに「番号」を最新の基本4情報と関連づける仕組み)」の一部です。「付番」は、所管する総務省の下で、番号生成機関や市町村(長)により実施されます。ですから、個人の「番号」付番機関は、総務省ではなく「番号生成機関と市町村」であるとも言えます。

「番号」付番の流れ(出生の場合
(1) 市町村は、住民からの出生届を受けて、新たに住民票コードを記載(住民票を作成)
(2) 番号生成機関は、市町村に対して、住民票コードに対応した「番号」を指定・通知
(3) 市町村は、住民に対して、「番号」を書面等で通知
(4) 市町村は、住民票に「番号」を記載
(5) 市町村は、「番号」と本人確認情報(住民票コード+4情報+変更履歴)を都道府県知事と番号生成機関に通知

といった感じになりそうです。住民票コードは事前に各市町村へ割り当てられているので、住民票コードに対応した「番号」も事前に指定されているのかもしれません。その場合は(1)と(2)の順番は逆になります。

なお、「指定情報処理機関」とは、住基ネットを運営する地方自治情報センター(LASDEC)という総務省所管の財団法人です。地方自治情報センターでは、住民票コードの生成も行っています。

社会保障・税番号大綱案を読み解く(11)、番号制度で進む識別情報の一元化でも書いたように、番号制度は全く新しいものを作るのではなくて、住民基本台帳や住基ネットを拡張・改善・強化したものです。住民の個人情報は基本的には各市町村等で分散管理されますが、個人を識別するための情報(住民票コード、4情報、番号)については番号生成機関で一元管理されることになります。

しかし、こうした一元管理が国の機関によって行われると、国民の反発を招きかねず番号制度自体が反対される恐れもあります。地方共同法人(地方公共団体のガバナンスが強化された特別の法律に基づく法人)という珍しい組織形態を用いることで、付番を所管するのは総務省(国)としつつも、国による一元管理ではない(全国自治体が共同出資・経営する組織によって一元管理する)ことを示したかったのでしょう。

番号制度は、国をあげた日本政府全体の取組みなのですが、番号制度を実現するために必要な泥臭い現場の業務は、市町村や都道府県、住基ネットを実質的に運営する地方自治情報センターが行わざるを得ません。当然ながら、総務省の関与も避けられないでしょう。そうした実態を認識した上で、制度全体のガバナンスやチェックアンドバランスを最適なものとしていくことが大切です。

●番号生成機関と情報保有機関の関係

大綱では、番号生成機関と情報保有機関の関係について、次のように説明しています。

(1) 番号制度導入時において
・「番号」の告知を求めることのできる情報保有機関は
・当該情報保有機関が保有する利用者に係る基本4情報を
・住基ネットの基本4情報と突合した上で
・番号生成機関に対し
・当該基本4情報に係る「番号」の提供を求めることができる

(2) 番号制度導入後において
・「番号」の告知を求めることのできる情報保有機関が
・利用者から基本4情報及び「番号」の告知を受けた場合において
・当該情報保有機関の保有する利用者に係る基本4情報及び「番号」と異なるとき
・または当該情報保有機関が当該利用者の情報を有していないときは
・当該情報保有機関は、番号生成機関に対し
・当該利用者に係る基本4情報及び「番号」の提供を求め、これを確認することができる

(1)は番号制度の導入時における、基本4情報(氏名、住所、生年月日、性別)のマッチング・同期化についての説明です。番号制度で、「番号」と同じぐらいに重要な識別子となるのが「基本4情報」なのです。

基本4情報のうち不変なのは生年月日ぐらいで、住所や氏名、時には性別も変更される場合があります。番号制度に関係する様々な行政機関や民間事業者において、最新の基本4情報をほぼ確実に持っているのは、住民票を備える市町村や住基ネットを利用する一部の機関ぐらいでしょう。

ですから、情報保有機関は、まず始めに住基ネットの最新基本4情報と同期します。住基ネットの最新基本4情報が共通の識別子として使われるのですね。その最新基本4情報を利用して番号生成機関から「番号」をもらい、自身が保有する個人情報と「番号」を紐付けします。

(2)は「番号」利用時に問題が発生した場合の対応についての説明です。問題とは、
住民等から「基本4情報」と「番号」を告知されたけど
a) 機関が保有する「基本4情報」や「番号」と一致しない
b) 告知された「基本4情報」や「番号」に該当する人の情報を持っていない

この場合、番号生成機関へ問い合わせて、該当者の最新基本4情報と「番号」をもらうことができます。

「基本4情報」も「番号」も変更される場合があり、ある情報保有機関が常に最新の「基本4情報」と「番号」を持っているとは限りません。利用者の方も、番号の記入ミスや覚え間違い等があるでしょう。ですから、a) 機関が保有する「基本4情報」や「番号」と一致しない場合の対応は良いと思います。

他方、b) 告知された「基本4情報」や「番号」に該当する人の情報を持っていない場合については、本当に大丈夫なのかちょっと心配です。なぜかと言えば、大綱だけを見る限りでは、情報連携基盤を経由することなく、情報保有機関の判断で(あたかも告知があったかのように見せかけて)、自身と関係の無い国民・住民の「基本4情報」や「番号」まで集めることができるように思えるからです。

作者の勘違いだったら良いのですが。。