社会保障・税番号大綱案を読み解く(12)、「番号」と各種番号との関係

社会保障・税番号大綱案を読み解く(11)、番号制度で進む識別情報の一元化の続きです。

今回は、「番号を告知、利用する手続の範囲(P.27)」について整理してみましょう。

「番号」が利用される範囲は次の6分野+その他となっています。

(1) 年金分野:国民年金、厚生年金、企業年金、公務員共済、恩給など
(2) 医療分野:健康保険、高齢者医療、母子保健、児童福祉、障害者自立支援など
(3) 介護保険分野:介護保険給付、介護サービスなど
(4) 福祉分野:児童扶養手当、助産、精神障害福祉、心身障害者扶養、生活保護など
(5) 労働保険分野:雇用保険、職業紹介、労災など
(6) 税務分野:国税、地方税など
(7) その他:自治体が独自に定める社会保障や税の手続、震災等の緊急時対応など

今回の「番号」は「社会保障と税」の分野に限定された利用ですが、こうして並べてみても、かなり広い範囲の住民生活に関係の深い業務で利用されることがわかります。

ただし、既存の分野別番号は原則としてそのまま使われる予定なので、個人の医療データが「番号」で管理されるといったことはありません。

●「(共通)番号」で代用できる既存の分野別番号

番号制度では、「社会保障と税の共通番号」といった言葉は使わずに、「番号」(「かぎかっこつきばんごう」と言われることも)としています。ネガティブなイメージが多い「共通番号」の利用を避けたのかもしれません。

現在でも、住民・国民に対して多くの分野別番号(各種番号、既存番号)が振られていますが、これら既存の番号に代えて「番号」を使えるようになります。

「番号」で代用できる既存番号の例
・基礎年金番号
・各種共済の長期組合番号
・健康保険の被保険者証番号(記号)
・介護保険の被保険者証番号
・生活保護の受給者番号
・雇用保険の被保険者番号など

電子行政の視点からの検討(PDF:平成22年4月5日 内閣官房IT担当室)で既存の各種番号が整理されていますが、この図で言えば青色カード(社会保障サービス)の各種番号が、番号制度の「番号」で代用できるものと考えて良いでしょう。

個人に関係する各種番号(例)

もちろん、「番号」を利用する際には必ず「本人確認」が必要となるので、ただ「番号」だけを告げて利用することはできません。住基カードや運転免許証といった顔写真つきの身分証明書等を提示することで、はじめて「番号」を他の既存番号に代えて利用することができます。

将来的には、「番号」が記載された住基カードがあれば、社会保障関連の手続や窓口でたいていの用事は済ませることができるかもしれません。

●納税者番号としての「番号」

税分野については、税務署等の内部で利用される整理番号はありましたが、国民全員に付与されるような「納税者番号」はありませんでした。番号制度が導入されることで、「番号」が「納税者番号」として使われるようになります。

「納税者番号」が無いことについては、外国人の友人・知人から驚かれることが多いです。米国やシンガポールの人と話すと、「番号も無いのに、どうやって税金を集めるの」と聞かれるので、「氏名や住所や生年月日、あとは税務署員の勤勉性や根性とかで集めてる」と答えています。

主要国における税務面で利用されている番号制度の概要(財務省調べ)

共通番号に反対する人たちも、「納税者番号」による税の公平性・透明性や効率化については、一定の効果を認めているのではないでしょうか。各国の税制度を見ると、「納税者番号」+「税の公平性や納得感を高める工夫」によって経済成長を促進しつつ脱税等の不正行為を減らし、その結果として税収を増やすことに成功しているようです。

具体的には、ロシアや旧共産国におけるフラットタックス、韓国の現金領収書制度、カナダやオーストラリア等の相続税廃止などがあります。

番号制度の導入によって、日本でも「納税者番号」の利用が始まることになります。しかし、その効果については、税制改革の内容に大きな影響を受けることになるため、どの程度のコスト削減や税収増が実現できるかの予測は難しいですね。