震災被害から高齢者を守るためには:how to save elderly people from earthquake and tsunami

時事通信社の記事「犠牲者、60歳以上が65%=津波で逃げ遅れ、水死9割-東日本大震災の3県分析」によると、被害の大きかった岩手、宮城、福島3県の死者(年齢が判明した11,108人)の内訳は次のとおりです。

10歳未満:3.5%
10代:3.0%
20代:3.6%
30代:5.7%
40代:7.1%
50代:11.9%
60代:19.1%
70代:24.0%
80歳以上:22.1%

65 Pct of March Japan Disaster Victims Elderly: Police
Damage Situation and Police Countermeasures (pdf)

災害時において高齢者の被害が大きいことは、防災関係者の間では広く認知されているようです。

超高齢社会に優しい電子行政モデルの構築に向けての報告書冒頭には、「自然災害最大の被害者は高齢者- 防災に期待」というタイトルで次のような記述が見られます。

世界に誇れる高齢社会を樹立するためには、高齢者の生命、財産、人権が保障されるべき必要がある。平成20年度防災白書によれば、各災害での高齢者の割合は、

・新潟・福島豪雨(H16/81.3%)
・福井豪雨(H16/80.0%)
・新潟県中越地震(H16/66.2%)
・台風14 号(H17/69.0%)
・豪雪(H18/65.1%)
・新潟県中越沖地震(H19/78.6%)

となっており、平均約7割の犠牲者が高齢者であることがわかる。早稲田大学電子政府・自治体研究所が、世界的にも有数な電子自治体として知られる神奈川県横須賀市で2005 年に「横須賀市民減災対策検証調査」を実施した結果、高齢者や身体障がい者が自然災害などの被害にあった主な要因として、

1.情報伝達やコミュニケーションの不備
2.高齢化・過疎化地域での災害対策(ネットワーク構築など)の不備
3.コミュニケーション不足

であることが明示された。前述の過疎化地域では、高齢者が高齢者を救助しなければならないという弱者コミュニティの厳しい現実が残されている。また、前述の全国意識調査では、災害による高齢者被害を最小限にするための手段として、

1.「行政が高齢者の居場所などを事前に把握する」が60%
2.「コミュニケーション手段として携帯電話を行政・民間でフルに活用する」が48%
3.「高齢者の位置情報の提供をGPS などでできるようにする」が52%

という上位結果になった。このことから、災害時に最も被害を受けやすい高齢者の数を軽減するための事前・事後対策として、ICTツールを求めるニーズが極めて高いことが理解できる。さらに、災害時に高齢者を救助するためには、個人情報保護の問題よりも位置情報や居場所の特定を事前に把握すべきであるという結果も重要な示唆となった。

肉体的な衰えによる「早く移動できない」といった問題をカバーするためにも

・常日頃から高齢者自身が情報を入手できる
・行政や地域コミュニティが高齢者の状況を把握できていて、その情報を緊急時に活用できる
・本人や家族の意向により、民間サービスを活用した状況把握ができ、緊急時にも対応できる

としておくことが大切と思いました。将来的には、スマートフォンやタブレット端末等のICTを活用できる高齢者が増えてくると思いますが、現実的にはICTを直接的に利用しなくても、高齢者の支援ができるような体制作りを考えたいものです。

ICTと人を繋ぐ仲介者の必要性は、高齢者に限りません。今回の震災でも、「インターネット上にある有効な情報を、紙の情報として迅速かつ効率的に避難所等の掲示板に掲載し、実際に被災者の方々に知ってもらい活用してもらうには、どうしたら良いか」が問題となっていました。

高齢者の支援は、結果的には若者の負担を減らすことにもつながると思いますので、今回の震災から大いに学びたいですね