社会保障・税に関する番号制度についての基本方針(6)、番号制度の効果を生み出す7つのステップ

社会保障・税に関する番号制度についての基本方針(5)、番号制度だけでは問題を解決できないけれどの続きです。まずは最近の動きから。

第1回 情報連携基盤技術ワーキングループ議事要旨(PDF)が公開されています。人数が多いだけに、議論と言うよりは自由発言ですね。とりまとめが大変そう。。。

個人情報保護WG(第2回)の配布資料も公開されています。「社会保障・税に関わる番号制度及び国民ID制度における個人情報保護方策の骨格案」(長い!)が暴走しないように要チェックです

さて、今回は「番号で何ができるのか」=番号制度の利用場面(ユースケース)を見ていきましょう。番号制度の利用場面を考えることは、とても大切です。番号制度の効果を生み出すための最初のステップだからです。

1.社会保障分野でできること

・保険者同士の情報連携により
・国民が「高額医療・高額介護合算制度」の利用時に
・添付書類を省略でき
・申請を1か所で済むようになる

・保険者と医療・介護サービス提供者間の情報連携が進めば
・自己負担の上限に達した場合にサービスを受ける国民が
・医療機関窓口や介護事業者への支払いを立て替え払いせずに
・以後の医療・介護サービスを受けることができるようになる

・年金手帳、医療保険証、介護保険証等を1枚のICカードに統合できる
・本人が自分の診療情報等を容易に入手・活用でき、医療・介護の連携が進む
・障害者に対して、利用可能な様々な施策の情報を提供できる

2.年金分野でできること

・年金分野で「番号」を利用することで
・基礎年金番号の二重付番がなくなる
・年金手帳の二重交付がなくなる
・基礎年金番号が付番漏れがなくなる
・年金手帳が交付漏れがなくなる

・国民の生涯を通じた年金制度を、より的確に運用できる
・確定申告で公的年金等の源泉徴収票の添付が不要になる
・税務の所得情報を活用した所得比例年金制度が実現できる

3.医療分野でできること

・医療保険者と保険医療機関・保険薬局等の情報連携により
・確定申告の医療費控除に必要な領収書等の添付や保存が不要になる

4.税務分野でできること

・税務当局が所得情報や扶養情報について番号を用いて名寄せ・突合することで
・所得の過少申告や扶養控除のチェックが効率的になる
・社会保障の不正受給や税の不正還付等を防止できる

・確定申告の際に有益な情報をマイ・ポータルで確認できる
・自宅のパソコン等から自己の申告情報、納付履歴等を入手・閲覧できる
・給与や年金の支払調書の電子的な提出先を一か所にできる
・納税地の異動届出書が不要になる

5.申請・申告等の負担が軽減できるもの

・以下の手続で、行政機関が発行する添付書類の提出を省略化できる

5-1 給付等の申請
・給付等の申請
・児童扶養手当
・母子家庭自立支援給付金
・特別児童扶養手当
・障害児福祉手当
・特別障害者手当
・労災保険の年金給付

5-2 自己負担割合・自己上限負担額の決定
・高額療養費、入院時食事療養費、入院時生活療養費の自己負担限度額
・高齢者に係る医療保険の自己負担割合
・養護老人ホームに係る入所者負担、扶養者負担
・障害者自立支援法に基づく障害者福祉サービス、補装具等に係る自己負担
・保育所、児童入所施設等の徴収金

5-3 国税・地方税の申告等
・住宅ローン控除
・住宅取得資金の贈与を受けた場合の贈与税の特例
・居住用資産を買換えた場合の課税の特例
・相続時精算課税の選択に係る届出
・事業用資産を買換えた場合の課税の特例

★作者コメント

番号制度を活用して効果を生み出すためには、

・関係機関の情報連携
・計算の自動化
・支払い(決済)の自動化
・処理結果の二次利用(例えば、確定申告など)

などが必要です。さらに言えば、前段階として「制度や業務の見直し・簡素化」が必要で、最終的には番号制度活用により不要となった組織の廃止・統合、人員の削減、予算の縮小などに繋げることで、はじめて成果となります。

整理すると、次のような順番になります。

1 利用場面の選択 ★社会ニーズ等を踏まえて
2 制度や業務の見直し・簡素化 ★複雑なまま連携させない
3 関係機関の情報連携 ★国民との連携を含む
4 各処理の自動化 ★計算、決裁、決済など
5 処理結果の二次利用 ★社会保障と税など分野間をつなげる
6 効果の測定 ★費用、時間、満足度など(国民、企業、行政)
7 成果の創出 ★組織の廃止・統合、人員の再配置・削減、予算の縮小など

番号制度の導入は、スタート地点です。実際の成果を出すためには、上記のような7つのステップを一つずつ地道にこなしていく必要があります。

番号制度の使命や目指すべき成果を

・国民や企業や行政が「楽になった、便利になった」と実感できること
・社会全体の効率性、持続可能性、変化への対応力が高まること

の二つぐらいに絞り込むと良いでしょう